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27.セルジオの想い
しおりを挟むセルジオとエマが部屋から出ると、ハディウスやアザリア夫人に応接室に来るよう言われた。
「早速だが…」
ソファに座るや否や、ハディウスが口を開く。
「セルジオ、エマ、結婚する気はないか?もちろん、二人の気持ちが優先なのだが。」
エマは、ぽかんと口を開けて、ハディウスを見つめた。
まさか部屋での話を聞かれたのかと内心ビクビクしている。
一方で、セルジオもエマと同じことを考えていた。
「ハディウス…?何故?」
「チェルニエと離縁すれば、セルジオは晴れて独身だ。気立ての良い女性と再婚するのが良いと思ってな。エマ、セルジオは真面目だし、なかなか良い男だぞ?ただ、しっかり者の連れ合いが居てくれると、もっといいなと思ってるんだ。」
「そんな…私と侯爵様では…身分が違います。侯爵様には、私より素敵な方を…」
アザリア夫人は、自信なさげなエマに笑顔を向けて言った。
「身分の話なら問題ないわ。グレイスお祖母様がエマと養子縁組してくださってもいいそうよ。パーティでミルゼに寄り添っていたエマを見て、立ち居振る舞いがいいと褒めていらしたわ。」
エマは、自分の知らないところで話が進んでいる気がして、不思議だった。
何故、この方達は使用人の自分にそこまで言ってくれるのだろう。
「大奥様…どうして…?」
「あの時、エマに解毒の役目をさせてしまって、申し訳ない気持ちがあったのは本心だけど…言い出したのはラディアスで、ミルゼも同意しているわ。エマの人柄がセルジオを幸せにしてくれるんじゃないかと。」
「そんな…私には勿体ないお話です…」
困惑するエマとは反対に、セルジオは自分にチャンスが舞い込んだと、少し明るい表情になる。
「実は先程、エマ殿に生涯の伴侶になって欲しいと告げたんだ。あっさり断られたのだが、それでも、せめて振り向かせる努力をする機会をくれないかと。エマ殿、年の差はあるが、もし身分の問題がクリアになったら、考えてくれるだろうか?それに、ミルゼが賛成してくれるなら、尚更考えて欲しい。」
エマは激しく動揺した。
今のままミルゼに仕えているだけで、公爵家の使用人のままで、自分は充分幸せだ。
これ以上を望むなんて、贅沢なのではないか。
「か、考える時間を…ください…」
「もちろんだ。俺はこれから裁判を控えている。フィレンツェ侯爵家だけでなく、ミルゼの尊厳も取り戻す裁判となるだろう。チェルニエは、完膚なきまでに叩き潰すつもりだ。それが終わって、自分の人生を歩み出す時、エマ殿が傍に居てくれたら…俺がエマ殿を幸せにすると共に、エマ殿に俺を幸せにして欲しいと願っている…エマ殿と夫婦になるだけでなく、ミルゼと家族になりたいんだ。我儘だということも承知しているが、考えてみてくれないか?」
「………分かりました。」
ハディウスとアザリア夫人が見守る中、セルジオは精一杯の想いを伝え、エマはその想いを受け取った。
それがこの先どうなるかは、まだエマは決めかねていたが、セルジオの真っ直ぐな想いと家族という言葉は、エマの心に確かに響いた。
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