【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい

文字の大きさ
31 / 36

31.大家族

しおりを挟む

「ミルゼ!でかした!!」

寝室のドアがガバッと開き、ハディウスが叫びながら部屋に入ると、続けて、アザリア夫人やグレイスお祖母様、セルジオまで入って来た。
皆、ミルゼの懐妊を心から喜んでいる。
部屋の外からは、使用人達の歓喜の声も聞こえてくる。

「ミルゼ、体は大事にしないとね!あー、私も遂におばあちゃんだわっ!ハディはおじいちゃんよ!楽しみ過ぎて走り出しそう!!」

「母上、落ち着いてくださいよ。」

「あら?ラディアスは知らせる為に走って来たじゃない!この公爵邸を!!」

皆が笑顔で祝ってくれる光景に、ミルゼは胸が熱くなった。
ラディアスと仮初の結婚をした筈が、皆に優しくしてもらい、子どもまで持てる幸せ。
父とも心を通わせられるようになり、優しいエマは家族になるだろう。
ミルゼは、この幸せを噛み締めた。

「ラディアス、部屋を子ども部屋に改造するぞ!俺とセルジオが業者を手配するから、ミルゼと部屋のイメージを相談しろ!」

「全く…ハディはせっかちねぇ。でも、お願いね?」

そんな様子を見て、セルジオはミルゼが公爵家でどれほど大切にされているかを知り、改めて有り難いと感じた。
そして、これからはその輪の中に自分も入ろうと決意した。

「ミルゼ、俺に出来ることがあれば何でも言いなさい。今まで父親らしいことが出来なかった分、これからは何でもするからな。」

「お父様…ありがとうございます。こうして気に掛けてくださることが何よりも嬉しいです。」

「そうか。でも、何かないか?」

寂しそうなセルジオを見て、ミルゼは少し考えて、にっこり笑った。

「エマを私の家族にしてください。」

セルジオは動揺し、エマを見た。

「でも、エマ殿は…」

「エマはお父様を好きみたいよ?」

「へっ!?」

エマは、また部屋の隅で背を向けている。
今度は照れているのかと、ラディアスは察した。

「エマ、こっちに来て?お父様をもらってくださるかしら?」

おずおずと歩み寄りながら、エマは顔を真っ赤にしていた。

「エマ殿、いいのか?俺で…」

「はい…よろしくお願い…します…」

セルジオはミルゼの懐妊だけでなく、エマの承諾ももらい、夢心地だった。
今すぐにでもエマを攫って、何処かに閉じ籠りたいが、皆の手前、我慢した。

「おやおや、これは養子縁組の手続きや結婚の準備を急がないとね!手続き関係はこっちでやるから、エマはミルゼの傍に居てあげてね?」

グレイスお祖母様は、エマにウィンクした。
アザリア夫人も頷き、恐らく手続きは早く終わるだろう。
シグネスティ公爵家の行動の早さは、既に立証済みだ。

「私のような者に…ありがとうございます。ありがとうございます。」

エマはその場で泣き崩れ、セルジオはしっかりとエマを抱き締めた。

「こんな頼れる大家族に産まれてくる子は、きっと幸せだな。お腹の中で充分に育って、無事に産まれて来るんだぞ?皆が君を待ってるからな。」

ラディアスはミルゼに笑い掛け、お腹の子にも伝わるように囁いた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

パーキングエリアに置いていかれたマシュマロボディの彼女は、運ちゃんに拾われた話

狭山雪菜
恋愛
詩央里は彼氏と1泊2日の旅行に行くハズがくだらないケンカをしたために、パーキングエリアに置き去りにされてしまった。 パーキングエリアのフードコートで、どうするか悩んでいたら、運送会社の浩二に途中の出口に下ろすと言われ、連れて行ってもらう事にした。 しかし、2人で話していく内に趣味や彼に惹かれていって… この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

結婚したくない王女は一夜限りの相手を求めて彷徨ったら熊男に国を挙げて捜索された

狭山雪菜
恋愛
フウモ王国の第三王女のミネルヴァは、側室だった母の教えの政略結婚なら拒絶をとの言葉に大人しく生きていた 成人を迎える20歳の時、国王から隣国の王子との縁談が決まったと言われ人物像に反発し、結婚を無くすために策を練った ある日、お忍びで町で買い物をしていると、熊男に体当たりされその行く先々に彼が現れた 酒場で話していると、お互い惹かれ合っている事に気が付き……… この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

結婚式に結婚相手の不貞が発覚した花嫁は、義父になるはずだった公爵当主と結ばれる

狭山雪菜
恋愛
アリス・マーフィーは、社交界デビューの時にベネット公爵家から結婚の打診を受けた。 しかし、結婚相手は女にだらしないと有名な次期当主で……… こちらの作品は、「小説家になろう」にも掲載してます。

図書館の秘密事〜公爵様が好きになったのは、国王陛下の側妃候補の令嬢〜

狭山雪菜
恋愛
ディーナ・グリゼルダ・アチェールは、ヴィラン公国の宰相として働くアチェール公爵の次女として生まれた。 姉は王子の婚約者候補となっていたが生まれつき身体が弱く、姉が王族へ嫁ぐのに不安となっていた公爵家は、次女であるディーナが姉の代わりが務まるように、王子の第二婚約者候補として成人を迎えた。 いつからか新たな婚約者が出ないディーナに、もしかしたら王子の側妃になるんじゃないかと噂が立った。 王妃教育の他にも家庭教師をつけられ、勉強が好きになったディーナは、毎日のように図書館へと運んでいた。その時に出会ったトロッツィ公爵当主のルキアーノと出会って、いつからか彼の事を好きとなっていた… こちらの作品は「小説家になろう」にも、掲載されています。

独身皇帝は秘書を独占して溺愛したい

狭山雪菜
恋愛
ナンシー・ヤンは、ヤン侯爵家の令嬢で、行き遅れとして皇帝の専属秘書官として働いていた。 ある時、秘書長に独身の皇帝の花嫁候補を作るようにと言われ、直接令嬢と話すために舞踏会へと出ると、何故か皇帝の怒りを買ってしまい…? この作品は、「小説家になろう」にも掲載しております。

週1くるパン屋の常連さんは伝説の騎士様だった〜最近ではほぼ毎日ご来店、ありがとうございます〜

狭山雪菜
恋愛
パン屋に勤めるマチルダは平民だった。ある日、国民的人気の騎士団員に、夜遅いからと送られたのだが… この作品は、「小説家になろう」にも掲載しています。

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

毎週金曜日、午後9時にホテルで

狭山雪菜
恋愛
柳瀬史恵は、輸入雑貨の通販会社の経理事務をしている28歳の女だ。 同期入社の内藤秋人は営業部のエースで、よく経費について喧嘩をしていた。そんな二人は犬猿の仲として社内でも有名だったけど、毎週金曜日になると二人の間には…? 不定期更新です。 こちらの作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

処理中です...