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31.大家族
しおりを挟む「ミルゼ!でかした!!」
寝室のドアがガバッと開き、ハディウスが叫びながら部屋に入ると、続けて、アザリア夫人やグレイスお祖母様、セルジオまで入って来た。
皆、ミルゼの懐妊を心から喜んでいる。
部屋の外からは、使用人達の歓喜の声も聞こえてくる。
「ミルゼ、体は大事にしないとね!あー、私も遂におばあちゃんだわっ!ハディはおじいちゃんよ!楽しみ過ぎて走り出しそう!!」
「母上、落ち着いてくださいよ。」
「あら?ラディアスは知らせる為に走って来たじゃない!この公爵邸を!!」
皆が笑顔で祝ってくれる光景に、ミルゼは胸が熱くなった。
ラディアスと仮初の結婚をした筈が、皆に優しくしてもらい、子どもまで持てる幸せ。
父とも心を通わせられるようになり、優しいエマは家族になるだろう。
ミルゼは、この幸せを噛み締めた。
「ラディアス、部屋を子ども部屋に改造するぞ!俺とセルジオが業者を手配するから、ミルゼと部屋のイメージを相談しろ!」
「全く…ハディはせっかちねぇ。でも、お願いね?」
そんな様子を見て、セルジオはミルゼが公爵家でどれほど大切にされているかを知り、改めて有り難いと感じた。
そして、これからはその輪の中に自分も入ろうと決意した。
「ミルゼ、俺に出来ることがあれば何でも言いなさい。今まで父親らしいことが出来なかった分、これからは何でもするからな。」
「お父様…ありがとうございます。こうして気に掛けてくださることが何よりも嬉しいです。」
「そうか。でも、何かないか?」
寂しそうなセルジオを見て、ミルゼは少し考えて、にっこり笑った。
「エマを私の家族にしてください。」
セルジオは動揺し、エマを見た。
「でも、エマ殿は…」
「エマはお父様を好きみたいよ?」
「へっ!?」
エマは、また部屋の隅で背を向けている。
今度は照れているのかと、ラディアスは察した。
「エマ、こっちに来て?お父様をもらってくださるかしら?」
おずおずと歩み寄りながら、エマは顔を真っ赤にしていた。
「エマ殿、いいのか?俺で…」
「はい…よろしくお願い…します…」
セルジオはミルゼの懐妊だけでなく、エマの承諾ももらい、夢心地だった。
今すぐにでもエマを攫って、何処かに閉じ籠りたいが、皆の手前、我慢した。
「おやおや、これは養子縁組の手続きや結婚の準備を急がないとね!手続き関係はこっちでやるから、エマはミルゼの傍に居てあげてね?」
グレイスお祖母様は、エマにウィンクした。
アザリア夫人も頷き、恐らく手続きは早く終わるだろう。
シグネスティ公爵家の行動の早さは、既に立証済みだ。
「私のような者に…ありがとうございます。ありがとうございます。」
エマはその場で泣き崩れ、セルジオはしっかりとエマを抱き締めた。
「こんな頼れる大家族に産まれてくる子は、きっと幸せだな。お腹の中で充分に育って、無事に産まれて来るんだぞ?皆が君を待ってるからな。」
ラディアスはミルゼに笑い掛け、お腹の子にも伝わるように囁いた。
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