【一章完結】宝箱に転生してしまった!!・・・愛犬が。ーーえ?俺は転移して来たただの一般人です。

カイナルミ

文字の大きさ
29 / 31
第2章 魔王と聖女

29 ホラー映画は客観的なら楽しめるけど実際遭ったら楽しめない。

しおりを挟む





 ー



 ーー



 ーーガタンッッ!!ゴンッッ!!!ガンッガラガラ・・・




「ひっ!ーーひぃっっっっ!!だれがっ!!だれがっっっ!!!」


 冒険者の中年の男が転げる様に路地を逃げ回る。
男は追って来る者が追いかけにくい様に、障害物を作るために路地にある物を片っ端から倒し路地裏は嵐が去った後の様である。
うるさい音を立て続けているが日中であるにもかかわらず、奥まった路地に人の気配は全くなく誰も気付く様子はない。



ーーーガラガラ・・・ガラガラ・・・


 何か金属を引きずる音が男をゆっくり追っていく。
逃げても逃げても音は気付けばすぐ後ろに聞こえて来る。



ーーーガラガラ・・・ガラガラ・・・



「そ、そんなっっっ!?ーー頼むっっ!許してくれっっっ!!ちょっと魔が差しただけなんだよっ!!金、金はあるだけやる!!だから許してくれっっ!!!」


「・・・」


 行き止まりに追い込まれてしまい、もう逃げ疲れて立てなくなっていた男は大量の汗を流しながら袋に入ったお金を追いかけていた者に差し出す。



「ーーくそっっ!!ーーーあのガキが悪りぃんだよ!!あのガキが俺を誘って来やがったんだ!!あんな女みてぇな顔で熱っぽい目で見やがって・・・!!ああいうガキは俺みたいな奴らに奉仕するのが使命だろ!!」



追いかけて来た者は虚な目でじっと男を見下している。男は止まって初めて引きずっていた音の正体を知った。追いかけていた者が『柄の長い大きな鎌』を引きずっていた物が音の正体であった。遂に男は恐怖に負けて逆ギレし始めた。



「ーーー言い訳はそれだけ?」


 追いかけて来た者はおどろおどろしい雰囲気とは違い、発した声は艶っぽい女性の声だ。しかし感情の乗っていない声色は艶っぽい声すら不気味であった。


「それだけっておまーーーー」






「ねぇ?   私だけを見て    」






♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎







 取り敢えず宿の受付にもし入れ違いでユリアナが帰って来た時の為に、4人で買い物に出かける事を伝えた。これでもしユリアナが一人で戻って来ても行き先が分かっているから安心するだろう。


「じゃあ、まずは歯ブラシとか日用品買いに行くか?」

「シロもみんなが買った物持ってくれるか?」

ーーーぱこんぱこん♪

 たくさん買っても問題なさそうだ。
シロのお陰で安心して買い物が出来る。

「シロが持つって言っているので、買い物したら任せてやってください」

「ま、俺はぶっちゃけそれを期待してたんだけどな?」


 アクスは人好きする笑顔でシロに期待していた事をバラす。
このパーティーにさえいなければアクスはさぞかしモテていた事だろう。
女にも男にもモテるってカリスマ性高すぎだろ!
ーーーまぁ、このパーティーに所属している間はそのカリスマ性、絵に描いた餅って感じなんだけど・・・。このパーティー知らない地域に入ったらモテ期到来するんじゃね?じゃあ王都に行ったらアクスモテモテじゃん!!
俺ら見捨ててヒャッハー!!な感じになったら嫌だな・・・。


『無慈悲なる運命さだめ』は元領主の息子主導である『暗黒竜に使えし四天王』の所為で悪い噂を領全体に流されていた。
それが尾ひれを付け隣町のヴァイ町でも、パーティー名名乗ると不快な顔を向けてくる者たちがいるとの事。インス町では既にマリア達の汚名は完全に晴れているが、この町にはまだ全員に伝わっていないのでパーティー名は名乗らない方が良いとカックスギルド長が冒険者ギルドで雑談している時に教えてくれた。



「わーいっ!シロちゃんのお陰で楽ちんだぁーありがとうっ」

 マリアはセイが抱えているシロの蓋の上部を撫でにこにこと嬉しそうに笑っている。
撫でられてシロも嬉しそうである。


 そういやシロが木から鉄に変わっても重たく無いんだよな。
元のシロ位の重さはあるんだけど変わってないんだよ。
シロは見た目が変わってもシロって事なのかもしれない。
まぁいいや、そのうち考えよう。今は買い出しと1番のトラブルメーカーユリアナだ。
取り敢えず奴がヤバいのは悪魔疑惑が拭えてないからなんだよ!!
はぁ・・・俺こんなヤバいパーティー抜ける事出来るのか?
向こうの世界に戻らない限り抜けられない未来しか見えないんだよな。



「ここの町に来てもインス町と変わらないから用事無い限り来ないよねぇ。なんか久しぶりに来たねぇ?」
「そういやそうだなー。用事ねーもんな」
「ここまで来なきゃいけない依頼も受けなかったしね」
「まぁ、確かに見た限り名所も無さそう感漂ってるもんな」


 ヴァイ町はインス町と比べても活気に大差はない。

「ーーーっておい待て、マリア。どこに行く」

 セイはマリアの腕を掴んで引き戻す。


マリアが何故か目を離すと勝手にどこかへ行こうとするので、セイは町並みや会話を楽しむ余裕はない。まるで小さい子供があっという間に親の目を離した隙にどこかに行ってしまうのと同じだ。油断できないのでシロが常に俺の腕の中にいても見張ってくれている。
みんなが目を逸らした間にどこかに行こうとするとすぐにシロがガタガタ身体を揺らし、ばこんばこんっっ!!といつもより大きい音を出してみんなに伝えてくれるのだ。流石俺の愛犬!!優秀で可愛いシロは子供の面倒すら見ることの出来るこの完璧さよ・・・。
どうだ、世界よ。俺のシロは気高く優しいーーん?んん??




 視界の隅に一瞬ユリアナと思わしき姿を捉えた。
セイ以外のメンバーは気付かなかった様で、喋りながら進んでいく。


「どうしたんだセイ?忘れもんか?」


 アクスが足を止め戻って来ないセイ不思議に思い振り返りセイに尋ねる。
セイはユリアナらしき人物を見た事を言うべきか言わないべきか考えた。


「ーーーいや、なんでもない!行こうぜ!!」


 ユリアナらしき人物が何か引きずっている風に見えた気がしたセイは何も見なかった事にした!!自分に不利益がない限りは基本長い物には巻かれろ、事なかれ主義なセイは人気の無い所に行ってまで確認する様な事はしない。安全第一と書かれたヘルメットを自身の心に被せた。


「(ホラー映画は観るのは良くても実際自分の身に起きたら、腰抜かして動けなくなって殺されるオチしか待って無さそうだからな!!俺は何も見てない!!)」



 路地に向かった場合のホラー場面を想像して身震いしたセイは、シロをぎゅっと強く抱きしめて再びメンバーとお店に向かった。





♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎




 今まで冒険者の男を追いかけていた女は、動か無いモノを路地を引きずりながら一角に行くと引きずっていた物を投げ捨てた。



「.........さようなら.........」




 冒険者の中年の男を追いかけていた女は、引きずって来たモノに勢いよく鎌を振り下ろした。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。

棚から現ナマ
ファンタジー
スーはペットとして飼われているレベル2のスライムだ。この世界のスライムはレベル2までしか存在しない。それなのにスーは偶然にもワイバーンを食べてレベルアップをしてしまう。スーはこの世界で唯一のレベル2を超えた存在となり、スライムではあり得ない能力を身に付けてしまう。体力や攻撃力は勿論、知能も高くなった。だから自我やプライドも出てきたのだが、自分がペットだということを嫌がるどころか誇りとしている。なんならご主人様LOVEが加速してしまった。そんなスーを飼っているティナは、ひょんなことから王立魔法学園に入学することになってしまう。『違いますっ。私は学園に入学するために来たんじゃありません。下働きとして働くために来たんです!』『はぁ? 俺が従魔だってぇ、馬鹿にするなっ! 俺はご主人様に愛されているペットなんだっ。そこいらの野良と一緒にするんじゃねぇ!』最高レベルのテイマーだと勘違いされてしまうティナと、自分の持てる全ての能力をもって、大好きなご主人様のために頑張る最強スライムスーの物語。他サイトにも投稿しています。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

処理中です...