12 / 21
異世界生活
10.55 サイドストーリー ヴォルフの想い
しおりを挟む
初めてあいつと出会った時、俺はジョズ爺さんの遣いで街の外に出ていたんだ。
奴隷をそとに一人で出すんなんて何考えてんだってお思ったりもしねぇではねぇが、多分あの人なりの俺に対する気遣いだったんだろうな。
まぁそのおかげでアイツと出会えたんだから、感謝しなくちゃいけねぇ。
あいつとの出会いは、街道沿いの森の中だった。
街への道を進んでいたら、ゴブリンに襲われている奴がいたんで咄嗟に助けちまったんだ。
なんであの時助けに入ったのかはよく分からねぇ。
まぁジョズ爺さんの教育の賜物かもしれねぇな。
でもまぁすぐに離れるつもりだった。
だって誰だって黒狼族と一緒には居たくはねぇだろうからな。
でも俺は思わずあいつに声を掛けちまった。
だってあいつ何故か森ん中で靴以外全部脱いでんだぜ?
意味わかんねぇんだろ。
思わずなんでそんな恰好してんのかって聞いちまったよ。
そしたらあいつ、言われてやっと服脱いでることに気づいたみたいで
「あ! え、えっと、その慌ててて、ちょっとテンパっちゃってさ……」
って普通に答えたんだ。
いや、答えた内容は焦ってたみたいだが、俺を見る目が普通だった。
あん時は俺も何故か焦っちまった。
こんな風に俺のことを普通に見る奴なんて、ガキん時に村にいた時以来だったからよ。
なんか昔のことを思い出しちまって、今の自分が壊されそうで……
俺は平然を装うので一杯一杯だった。
まぁ結局、全然装えてなかったみたいなんだけどな。
でも今思えば、あん時すでに俺の中の仮面みたいなやつは、壊れていってたんだと思う。
それがあいつのスキルのせいなのか、それともあいつが俺と対等に接してくれたおかげなのかは分からねぇ。
けど俺は、あいつと一緒にいることの心地よさを、あの時すでに感じていてしまったんだ。
俺はあいつを旅に誘った。
短い時間かもしれねぇが、もう少しこの心地よさを味わっていたいって、すがっちまったんだ。
だから俺の提案を受けてくれて嬉しそうにしていたあいつを見た時は、なんだか無性に胸が痛んだ。
あいつは俺の善意だと思っていたかもしれねぇが、全然そんなことはねぇ。
完全に俺のエゴに巻き込んだだけだったんだ。
俺はそんな自分の罪悪感を少しでも払しょくしようと、あいつに色々教えたし、敵も倒してやったし、甲斐甲斐しく世話なんて焼いてやったりもしてた。
でもそんなのは所詮は全部俺のエゴ。そう、初めは思ってた。
あいつさ、俺が世話してやったり構ってやったりすると、すげぇ嬉しそうに返してくるんだ。
もしあいつに尻尾が付いてたら、絶対ブンブン振り回してるんじゃねぇかってくらい。
それ見てたら、余計に嬉しくなって、罪悪感も大きなって。
自分でも段々わけわかんなくなっちまった。
気づけばあいつを意識していて、あいつを目で追っかけて。
川で体を洗う時にあいつの裸をみて興奮しちまった時は、なんか知んねぇけどあとでスゲー自己嫌悪。
まぁその時にはすでにあいつに惹かれてたんだろうな。
あいつの喜ぶ顔がもっと見たい。
あいつの時々向ける熱い視線をもっと見たい。
あいつの綺麗に締まった体が見たい。
あいつの体温を感じてみたい。
あいつの、あいつの……
だけどそんな自分の気持ちに、俺は全力で気づかねぇ振りをした。
だって俺は奴隷だ。
そして何より呪われた黒狼族だ。
期待しちゃいけねぇ。
何も望んじゃいけねぇ。
諦めていないと、自分が苦しくつらくなるだけなんだ。
そんな矛盾を抱えながら、俺たちはあっという間にドゥヤムの街へとたどり着いた。
なんつーか、あの時程街に入りたくねぇなんて考えたのは生まれて初めてだった。
ここに入れば、俺はこいつと別れなくちゃいけねぇからな。
最後まで、イイヤツぶって頑張ってあいつに良く思われようなんて訳わかんねぇことしちまったよ。
でもまぁそんな思いも、街の奴らの視線をぶつけられて一気に冷めちまったけどな。
あぁ、やっぱり俺は何も望んじゃいけねぇんだっていう現実を突きつけられた気分だった。
でも街に入ってあいつが道にフラフラと出ていったとき、馬車に撥ねられそうになったんだ。
俺は咄嗟にあいつの肩を掴んで引き寄せた。
そんでアイツを抱きしめた時、俺の中で何かが爆発しちまったんだ。
あぁ、俺はこいつが好きなんだ。
たまらなく惹かれている。
こいつと一緒にいられたら、どれだけ幸せなんだろうって。
焦った。
そりゃもう盛大に。
だから俺は頑張ってあいつと距離を置いた。
出来るだけ優しくしないようにした。
それで結局最後の最後で呪い子のことがバレちまって、あいつにも迷惑かけちまった。
……まぁこれも良いきっかけか。
そう思うことにして、俺はあいつに別れを告げた。
最後ぐらいあいつの記憶には笑顔を残して置きてぇと思って頑張って笑ってみたんだが、どうだったんだろうな。
逃げ出す様にしてギルドに駆け込み、俺は訓練場へと向かった。
自分の中でグチャグチャになった感情をどう処理していいのか分からねぇで、ただただ的に打ち込み続けた。
そんな時、ジョズさんから声が掛った。
なんでも後で話があるから、準備が出来次第来いってことだった。
正直今の状態では勘弁して欲しかったが、ジョズさんの命令だ。
聞かねぇ訳にはいかねぇ。
俺は着替えてすぐに応接室に向かった。
すると部屋の中ですでに誰かと話しているジョズさんの声。
俺はふと気になり、ドアに耳を押し当てた。
自分の鼓動が高鳴ってくるのが分かった。
……なんでーー
あいつはなんでこんな所まで来て、俺の話をしているんだ。
俺にはもう関わらないでくれって言ったじゃねぇか!
そんなことを頭で考えながらも、俺はあいつが俺を追いかけてきてくれた事実に無性に嬉しくなっちまっていた。
でもそんな気持ちも、あいつの言葉で引き戻される。
「彼を俺に売ってください」
一瞬意味が分からなかった。
売る?
つまりあいつは奴隷として俺を買いてぇのか。
そうか、あいつも所詮は他の奴らと同じ……
段々と俺の中にくろいものが広がっていく。
けれど、あいつの言葉でまた引き戻された。
「あなたがそうして彼を守ってきたように、私も彼の飼い主となって、一生傍に立ち、そして彼を守り続けて見せます」
……は?
どういうことだよ。
守る?
飼い主なら飼い主らしくしてりゃいいじゃねぇか。
……違う、分かってる。
ジョズ爺さんに、そうやって俺が今守られてきていたことを。
必死に考えないようにしていた事実。
考えてしまえば、もっと先を期待してしまうから。
だけど、あいつの口からそれをきいて、あいつもそうありたいと言ってくれて。
俺は胸が張り裂けそうになった。
その場で叫び出したかった。
くそっ、くそっくそっ!!
俺は今、あいつに期待しちまっている。
自分の頭がブレーキを掛けようとするが、もう止まりそうにねぇ。
そしてジョズさんがアイツの想いを受け入れた時、その思いは一気に加速した。
俺は嬉しくなって部屋の中に飛び込もうとしたよ。
けど、あいつの言葉に躊躇しちまった。
――命を賭ける契約。
意味が分からねぇ。
なんで俺なんかの為に、お前が命を賭ける必要があるんだよ。
お前は俺のことをまだ何も知らねぇじゃねぇか。
俺と違って、俺なんかにすがんなくても、お前には無限の可能性があるじゃねぇか。
なんでわざわざ俺なんかの為に――
結局その時は、理由はわかなかった。
スキルの話もしてたけど、アレは多分直接的な理由じゃねぇ気がする。
けど俺は、話が俺の期待通りにどんどんと進んでいくことに舞い上がっちまっていて、それ以上深く考えるのをやめた。
そしてあいつに言われたあの言葉。
――諦める必要なんてないよ。これからは、なんだって諦める必要なんてないんだ。
俺が今まで一番欲して、でも決して期待してこなかった魔法の言葉。
俺はそれを聞いた瞬間、今まで俺をからめとって離さなかった言葉から、一気に解き放たれた様な感覚を覚えた。
それからはもうわけわかんなかったよ。
自分の中のグチャグチャになった感情をどうしたらいいのか分かんなくなっちまって、あいつに思いっきり泣きついちまった。
あとでジョズ爺さんたちもいることを思い出して、赤っ恥かくことになったけどな。
思いっきり泣いたおかげか、俺の心はさっきまでが嘘みてぇに軽くなっていた。
そして俺はもう一度あいつに向き合うことにした。
こいつはなんで、俺を選んだんだろう。
そしてなぜ、自分の命までも賭けようとしているんだろう。
ハッキリとしたことは分からねぇが、なんて言うかもっとあいつの人としての根っこ? みたいなところと関係してんじゃねぇかと俺は感じた。
そしてそれをあいつ自身も気づいてねぇんじゃねぇかって。
あいつの笑顔は、なんつうかのか、汚れてねぇんだ。
俺は散々人のきたねぇ所ばかり見せられてきたからか、その辺の人の闇っつうか、裏の部分にはかなり敏感になっていると思う。
そんな俺の感覚に、あいつのそれは反応しねぇんだよ。不自然なくらいに。
かといって、自分でそれを隠しているようにも見えねぇ。
多分あいつの心ん中に、何か鍵をして閉じ込めている感情があるんじゃねぇかな。
ま、全部俺の推測なんだがな。
でもまぁ俺は、俺自身には、そんなの関係ねぇ。
だってそうだろ? 俺を救ってくれたのは、間違いなくアイツなんだ。
だからあいつにどんな過去があって、あいつの中に何が眠っていようと、俺には関係ねぇ。
俺はただあいつに寄り添い、そしてこの身全てを使ってあいつを守ってやるだけなんだ。
この顔に刻まれた刺青に誓って、俺はあいつに全てを捧げる。
だからサック、今度はお前が俺を頼ってくれよ。
お前が俺を救ってくれたように、俺もお前の力になりてぇんだ。
いつかお前のと心から繋がれる日を、俺はずっと待っているからな。
奴隷をそとに一人で出すんなんて何考えてんだってお思ったりもしねぇではねぇが、多分あの人なりの俺に対する気遣いだったんだろうな。
まぁそのおかげでアイツと出会えたんだから、感謝しなくちゃいけねぇ。
あいつとの出会いは、街道沿いの森の中だった。
街への道を進んでいたら、ゴブリンに襲われている奴がいたんで咄嗟に助けちまったんだ。
なんであの時助けに入ったのかはよく分からねぇ。
まぁジョズ爺さんの教育の賜物かもしれねぇな。
でもまぁすぐに離れるつもりだった。
だって誰だって黒狼族と一緒には居たくはねぇだろうからな。
でも俺は思わずあいつに声を掛けちまった。
だってあいつ何故か森ん中で靴以外全部脱いでんだぜ?
意味わかんねぇんだろ。
思わずなんでそんな恰好してんのかって聞いちまったよ。
そしたらあいつ、言われてやっと服脱いでることに気づいたみたいで
「あ! え、えっと、その慌ててて、ちょっとテンパっちゃってさ……」
って普通に答えたんだ。
いや、答えた内容は焦ってたみたいだが、俺を見る目が普通だった。
あん時は俺も何故か焦っちまった。
こんな風に俺のことを普通に見る奴なんて、ガキん時に村にいた時以来だったからよ。
なんか昔のことを思い出しちまって、今の自分が壊されそうで……
俺は平然を装うので一杯一杯だった。
まぁ結局、全然装えてなかったみたいなんだけどな。
でも今思えば、あん時すでに俺の中の仮面みたいなやつは、壊れていってたんだと思う。
それがあいつのスキルのせいなのか、それともあいつが俺と対等に接してくれたおかげなのかは分からねぇ。
けど俺は、あいつと一緒にいることの心地よさを、あの時すでに感じていてしまったんだ。
俺はあいつを旅に誘った。
短い時間かもしれねぇが、もう少しこの心地よさを味わっていたいって、すがっちまったんだ。
だから俺の提案を受けてくれて嬉しそうにしていたあいつを見た時は、なんだか無性に胸が痛んだ。
あいつは俺の善意だと思っていたかもしれねぇが、全然そんなことはねぇ。
完全に俺のエゴに巻き込んだだけだったんだ。
俺はそんな自分の罪悪感を少しでも払しょくしようと、あいつに色々教えたし、敵も倒してやったし、甲斐甲斐しく世話なんて焼いてやったりもしてた。
でもそんなのは所詮は全部俺のエゴ。そう、初めは思ってた。
あいつさ、俺が世話してやったり構ってやったりすると、すげぇ嬉しそうに返してくるんだ。
もしあいつに尻尾が付いてたら、絶対ブンブン振り回してるんじゃねぇかってくらい。
それ見てたら、余計に嬉しくなって、罪悪感も大きなって。
自分でも段々わけわかんなくなっちまった。
気づけばあいつを意識していて、あいつを目で追っかけて。
川で体を洗う時にあいつの裸をみて興奮しちまった時は、なんか知んねぇけどあとでスゲー自己嫌悪。
まぁその時にはすでにあいつに惹かれてたんだろうな。
あいつの喜ぶ顔がもっと見たい。
あいつの時々向ける熱い視線をもっと見たい。
あいつの綺麗に締まった体が見たい。
あいつの体温を感じてみたい。
あいつの、あいつの……
だけどそんな自分の気持ちに、俺は全力で気づかねぇ振りをした。
だって俺は奴隷だ。
そして何より呪われた黒狼族だ。
期待しちゃいけねぇ。
何も望んじゃいけねぇ。
諦めていないと、自分が苦しくつらくなるだけなんだ。
そんな矛盾を抱えながら、俺たちはあっという間にドゥヤムの街へとたどり着いた。
なんつーか、あの時程街に入りたくねぇなんて考えたのは生まれて初めてだった。
ここに入れば、俺はこいつと別れなくちゃいけねぇからな。
最後まで、イイヤツぶって頑張ってあいつに良く思われようなんて訳わかんねぇことしちまったよ。
でもまぁそんな思いも、街の奴らの視線をぶつけられて一気に冷めちまったけどな。
あぁ、やっぱり俺は何も望んじゃいけねぇんだっていう現実を突きつけられた気分だった。
でも街に入ってあいつが道にフラフラと出ていったとき、馬車に撥ねられそうになったんだ。
俺は咄嗟にあいつの肩を掴んで引き寄せた。
そんでアイツを抱きしめた時、俺の中で何かが爆発しちまったんだ。
あぁ、俺はこいつが好きなんだ。
たまらなく惹かれている。
こいつと一緒にいられたら、どれだけ幸せなんだろうって。
焦った。
そりゃもう盛大に。
だから俺は頑張ってあいつと距離を置いた。
出来るだけ優しくしないようにした。
それで結局最後の最後で呪い子のことがバレちまって、あいつにも迷惑かけちまった。
……まぁこれも良いきっかけか。
そう思うことにして、俺はあいつに別れを告げた。
最後ぐらいあいつの記憶には笑顔を残して置きてぇと思って頑張って笑ってみたんだが、どうだったんだろうな。
逃げ出す様にしてギルドに駆け込み、俺は訓練場へと向かった。
自分の中でグチャグチャになった感情をどう処理していいのか分からねぇで、ただただ的に打ち込み続けた。
そんな時、ジョズさんから声が掛った。
なんでも後で話があるから、準備が出来次第来いってことだった。
正直今の状態では勘弁して欲しかったが、ジョズさんの命令だ。
聞かねぇ訳にはいかねぇ。
俺は着替えてすぐに応接室に向かった。
すると部屋の中ですでに誰かと話しているジョズさんの声。
俺はふと気になり、ドアに耳を押し当てた。
自分の鼓動が高鳴ってくるのが分かった。
……なんでーー
あいつはなんでこんな所まで来て、俺の話をしているんだ。
俺にはもう関わらないでくれって言ったじゃねぇか!
そんなことを頭で考えながらも、俺はあいつが俺を追いかけてきてくれた事実に無性に嬉しくなっちまっていた。
でもそんな気持ちも、あいつの言葉で引き戻される。
「彼を俺に売ってください」
一瞬意味が分からなかった。
売る?
つまりあいつは奴隷として俺を買いてぇのか。
そうか、あいつも所詮は他の奴らと同じ……
段々と俺の中にくろいものが広がっていく。
けれど、あいつの言葉でまた引き戻された。
「あなたがそうして彼を守ってきたように、私も彼の飼い主となって、一生傍に立ち、そして彼を守り続けて見せます」
……は?
どういうことだよ。
守る?
飼い主なら飼い主らしくしてりゃいいじゃねぇか。
……違う、分かってる。
ジョズ爺さんに、そうやって俺が今守られてきていたことを。
必死に考えないようにしていた事実。
考えてしまえば、もっと先を期待してしまうから。
だけど、あいつの口からそれをきいて、あいつもそうありたいと言ってくれて。
俺は胸が張り裂けそうになった。
その場で叫び出したかった。
くそっ、くそっくそっ!!
俺は今、あいつに期待しちまっている。
自分の頭がブレーキを掛けようとするが、もう止まりそうにねぇ。
そしてジョズさんがアイツの想いを受け入れた時、その思いは一気に加速した。
俺は嬉しくなって部屋の中に飛び込もうとしたよ。
けど、あいつの言葉に躊躇しちまった。
――命を賭ける契約。
意味が分からねぇ。
なんで俺なんかの為に、お前が命を賭ける必要があるんだよ。
お前は俺のことをまだ何も知らねぇじゃねぇか。
俺と違って、俺なんかにすがんなくても、お前には無限の可能性があるじゃねぇか。
なんでわざわざ俺なんかの為に――
結局その時は、理由はわかなかった。
スキルの話もしてたけど、アレは多分直接的な理由じゃねぇ気がする。
けど俺は、話が俺の期待通りにどんどんと進んでいくことに舞い上がっちまっていて、それ以上深く考えるのをやめた。
そしてあいつに言われたあの言葉。
――諦める必要なんてないよ。これからは、なんだって諦める必要なんてないんだ。
俺が今まで一番欲して、でも決して期待してこなかった魔法の言葉。
俺はそれを聞いた瞬間、今まで俺をからめとって離さなかった言葉から、一気に解き放たれた様な感覚を覚えた。
それからはもうわけわかんなかったよ。
自分の中のグチャグチャになった感情をどうしたらいいのか分かんなくなっちまって、あいつに思いっきり泣きついちまった。
あとでジョズ爺さんたちもいることを思い出して、赤っ恥かくことになったけどな。
思いっきり泣いたおかげか、俺の心はさっきまでが嘘みてぇに軽くなっていた。
そして俺はもう一度あいつに向き合うことにした。
こいつはなんで、俺を選んだんだろう。
そしてなぜ、自分の命までも賭けようとしているんだろう。
ハッキリとしたことは分からねぇが、なんて言うかもっとあいつの人としての根っこ? みたいなところと関係してんじゃねぇかと俺は感じた。
そしてそれをあいつ自身も気づいてねぇんじゃねぇかって。
あいつの笑顔は、なんつうかのか、汚れてねぇんだ。
俺は散々人のきたねぇ所ばかり見せられてきたからか、その辺の人の闇っつうか、裏の部分にはかなり敏感になっていると思う。
そんな俺の感覚に、あいつのそれは反応しねぇんだよ。不自然なくらいに。
かといって、自分でそれを隠しているようにも見えねぇ。
多分あいつの心ん中に、何か鍵をして閉じ込めている感情があるんじゃねぇかな。
ま、全部俺の推測なんだがな。
でもまぁ俺は、俺自身には、そんなの関係ねぇ。
だってそうだろ? 俺を救ってくれたのは、間違いなくアイツなんだ。
だからあいつにどんな過去があって、あいつの中に何が眠っていようと、俺には関係ねぇ。
俺はただあいつに寄り添い、そしてこの身全てを使ってあいつを守ってやるだけなんだ。
この顔に刻まれた刺青に誓って、俺はあいつに全てを捧げる。
だからサック、今度はお前が俺を頼ってくれよ。
お前が俺を救ってくれたように、俺もお前の力になりてぇんだ。
いつかお前のと心から繋がれる日を、俺はずっと待っているからな。
0
あなたにおすすめの小説
【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件
表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。
病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。
この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。
しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。
ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。
強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。
これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。
甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。
本編完結しました。
続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)
九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。
半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。
そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。
これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。
注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。
*ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
竜の生贄になった僕だけど、甘やかされて幸せすぎっ!【完結】
ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる