オマケなのに溺愛されてます

浅葱

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帰る場所

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「………カナタ殿はこの国の人間ではないようだが」

どこから来た魔法使いなのかと問われ、カナタはうっ、と言葉に詰まる。どこから来たのかは、逆にこっちが聞きたいくらいだった。


「実は、わからなくて」

迷った末に、奏多は正直に打ち明けることにする。ナジの話は相当混み入ったもので、自らの恥部を曝け出すものだった。その告白には誠実さを感じたし、この人にだったら今の奏多が陥っている状況を多少打ち明けてみてもいいかもしれないと、そう思えた。


「わからないとは…」
「その、魔法…のようなもので飛ばされてしまったんです。で、気付いたらこの山の中にいて」
「それは、襲われたということだろうか」
「襲…」

まあ、多分、そういうことだと思いますと奏多は続けた。あの時の梨々香の言動を思い出すに、まあ悪意がなかったとは口が裂けても言えないだろう。

「…大変なご苦労をされている時に、こちらの面倒事に巻き込み申し訳ないことをした」
「あっ、いえ!それはいいんです、そうじゃなくて、そういうことを言いたかったわけではなくてですねっ」

恐縮してしまったナジに対して、慌てて奏多は弁明する。違うのだ、そうじゃない、そうではなくて───


「も、もしよろしければ、私の帰る場所を、一緒に探してもらいたいんです…っ!!」



…言ってしまってから、なんか違うかもとは思った。言い方を微妙に間違えた気がする。なんか哲学的なことを言ってしまったような気さえする。

だがナジは奏多の様子のおかしい言動に動じることなく、ただ真摯に向き合ってくれた。うれしい、めちゃくちゃ頼りになる…!と奏多は心の中で感涙した。さすが人の親はちがう!(?)落ち着きがちがう!!




そこからは何やかんやと事情を話してナジは少ないヒントの中から、奏多のいた国の名前をなんとピンポイントで言い当てたのだった。
ナジが反応したのは、何を隠そうジークベルトの名前であった。


「その名は、誰でも知っている」

かの男のいる国であれば、それはスフェーンで相違ないだろうとナジは断言した。

「スフェーン?」
「ああ、この大陸の覇者の名だ」
「それは、ここからどのくらいの距離で…」
「国境を三つは越える必要がある。というより、かの国の出身であることが知れれば恐らく生きては帰れぬだろう」

俺以外の人間に素性を明かすのは勧めない、とナジは静かにそう言った。ミノンにさえ言うべきではないと、そう続ける。


その瞬間、奏多は思い出した。クロードが言った、この国は侵略国家だという、その一言を。
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