オマケなのに溺愛されてます

浅葱

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大事なのは結果だけ

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牢の中で目が覚めた。

「夢…?」

だとしたら、嫌な夢だった、と梨々香は溜息を吐く。酷く馬鹿にされたような記憶だけが鮮明に脳裏にこびりついていた。

けれどすぐに夢ではなかったことに気づく。手の中には幾つかの魔導具が握られていた。先程の夢の中で勝手に棚から持ち出してきた物たちである。

「夢じゃ、なかったんだ」

だったらもっと聞きたいことがあったのに、と梨々香は思う。今までにもらっていたアイテムの数々は既に没収されてしまっていた。呪具?だなんだと責め立てられて、呪法がどうのとかよくわからないことを沢山聞かれてうんざりしていたのだ。梨々香にとっては何のことだかさっぱりわからないし、わからないことで怒られるのも罰を受けるのも納得がいかない。

ただそのことを説明しようにも、店主に纏わるありとあらゆる話題を梨々香は封じられてしまっていた。何をどう足掻いても、口が言葉を紡げないのだ。梨々香の意志とは反するように唇が動かない。これでは言い訳も出来ないし無実の証明なんてもっての外である。この事象についての文句を、是非あの店主に言ってやらなければ気が済まなかったのに


「もうっ!もっと強く引っ叩いてやるんだった!」

梨々香はブツブツと文句を垂れながら手の中におさまるアイテムをひとつひとつ確認していく。生憎説明書なんてものはついていないので、これらがどんな効果がある物なのかはわからない。

「でもま、なんとなく身につけておけばOKっしょ」

そんな軽いノリで、梨々香は手にしたブレスレットを足首の方へとつける。腕ではすぐに気付かれてしまうだろうから、苦肉の策のつもりであった。

その他は化粧品に見えた。これらは近衛の連中にリクエストした化粧水やヘアスプレーの中に混ぜておけば問題ないだろう。みんな誰がどれだけ貢いでいるかなんて把握していないだろうし、と梨々香は安直に考える。

(………もう少しでお昼だし、どれか試してみようかな)

幾つかの瓶を開け、いちばん匂いの強いものをとりあえず髪につけてみる。
瓶を開けた時は香った匂いも、髪につけるとあまり香らなくなってしまった。あれ?と思いつつ二度三度と重ねづけしていくうちに、鼻が麻痺して匂いがわからなくなってしまう。しょうがないので塗る手を止めて、梨々香は瓶の蓋を閉めた。

その瞬間、廊下を歩く、特徴的な靴音が聞こえてきた。この歩き方は恐らく…いや絶対、ジークベルトである。梨々香にはすぐにわかった、何故ならついさっきも一度、彼は梨々香の元に顔を出したばかりであったから。


(さっきはジルベールが追い返しちゃったけど、今は誰もいないし、ふたりっきりだ…!)

今度こそ、アイテムの力が発揮されるかもしれないと梨々香は胸を躍らせる。
梨々香にとって、過程なんてどうでもよかった。どうやって好きになってもらったかなんてどうでもいい。好きになってもらうことだけが重要だった。それだけで、良かった。

それが例え、アイテムの力を借りた好意だったとしても
そんなことは梨々香にとって、取るに足らない些細な問題に過ぎないのだった。
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