オマケなのに溺愛されてます

浅葱

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守りたい、ユニークスキル

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「で、結局のところ、やっぱり聖女様は殺せなかったっすか?」

まあ聞かなくてもこの状態を見ればわかりますけど、と続けるフリックに、けれどジークベルトは意外にも難しい顔をしたまま黙り込む。

「違うんすか?」
「違わない。…だが、手応えが無かったわけでもない」
「???」
「確かに攻撃は通らなかった。だがフルパワーで殴った折、微かに違和感が生じたのも事実だ」
「…負け惜しみとかでなく?」
「オイ、喧嘩売ってるのか」
「あーいやいや、すまんせん、つい!!」

だって聖女をフルパワーで殴るなんて普通に常軌を逸してるじゃないっすか!とフリックは怯えながらも正論で返す。それは確かにそう、とも思うジークベルトであったが、それでも確かめないわけにもいかなかった。

「自分の目で見て確認しなければ納得出来ないこともあるだろう」
「いやでも…既に首絞めて返り討ちにあってましたよね?」
「あの時は手加減していた。だから今回は全力を出したんだ」
「いやいや…スキルがなきゃ普通に死んでましたよね?それ…」
「伝承なんてあてにならないからな」
「いやいやいや」


俺がいなかったら死んでましたよ!とフリックは魔力回復薬を飲みながら反論する。カナタさんがいないんすから、パパッと全回復なんて出来ないんすからね!とフリックは回復スキルを酷使しながらブツブツと文句をこぼす。

「わかっている」
「もー……今回の件はローハン師団長に報告しますからね!少しは自重して下さいよ」
「折れてる骨がくっつき次第移動するぞ。行き先はパイライトだ」
「えっ、パイライト?」

何故その国なんです?とフリックは純粋な疑問を抱く。何せかの国はかなり遠く、国境を3つは越える必要があったからだ。
しかも、占領国ではないときてる。


「近隣国には既に捜索依頼を出している。隠密部隊総動員で見つかっていないんだ、となれば必然敵国にいると考えるのが妥当だろう」
「はぁ、だからパイライト、ですか…」

これは、命がいくつあっても足りないっすねえとフリックは嘆息する。我が国は聖女の威光を笠に着て侵略と略奪を繰り返しているが故に、他国からは蛇蝎の如く嫌われていた。
そこに単身乗り込んでいこうなどと…想像しただけで身の毛がよだつ。最悪である。

「嫌でも来てもらうぞ。俺は回復系スキルはあまり持っていない。お前はカナタに万が一のことがあった時の保険だ」
「……わかってますよぅ、俺のユニークスキル目当てってことは」
「心配しなくてもお前のことは俺が守る」
「……(俺というより、ユニークスキルを守りたいだけだなこの人…)」


まあもうしょうがない、仕方ない。覚悟を決めたフリックであった。
命が惜しくてジークベルトの部下などやってられるか!
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