オマケなのに溺愛されてます

浅葱

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どうやら本気みたいです

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なんでこんなことになったんだろう


「えっと………」
「…………………」
「と、とりあえず、ですね…」
「…………………」
「ちょっと、離れてくれませんかね…?」


言えた。ようやく言えた!自分偉い!と奏多は思う。
ジークベルトに通されたのは、落ち着いた内装の広々とした部屋だった。部屋の中央にあるソファの上に下ろされた奏多は一瞬安堵したものの、すぐに身をこわばらせる。
何故って、ジークベルトが自分の隣に並ぶように腰掛けてきたからである。
そして、その距離が、非常に近い。

(ひざっ、膝が当たってるっ)

そしてなんだかふんわり良い香りもするわけで、奏多は非常に落ち着かなくなってしまったのだ。

初対面の大男に容姿を(過剰に)褒められ、お姫様抱っこでここまで運ばれ、身体が密着するほどの至近距離で穴が開くほどジッと見つめられている。
こんな状況、ムリに決まってる。自慢じゃないが女子校育ちで職場も女ばかりだったのだ。奏多は男に対する免疫がなさすぎた。



「…………見れば見るほど可愛い顔だな」
「(……んなわけあるかー!)」

心の中で、ジークベルトの呟きに全力でツッコミを入れる。だが当のジークベルトの顔は至って真剣、これっぽっちのおふざけも無さそうな真顔なのである。疑うこっちがおかしいの?なんて錯覚してしまう程、彼の態度や表情には偽りがなかった。

(この人、本当に趣味が悪いんだ……)

私程度の顔なんて、そこらに掃いて捨てるほどいるだろうに、と奏多は心底真面目にそう思う。

そして、つい、そう思いながらも見つめ返してしまった。




サラサラの黒髪、意志の強そうな切長の瞳。熊みたいに屈強な体躯をしているのに、顔の印象は狼を連想させる。一見無骨な印象なのに、顔のパーツはどれも整っていて高い鼻も薄い唇もどことなくセクシーだ。王子様みたいな美貌では決してないけれど、精悍さが際立ってむしろ凛々しいような…

あれ、この人ってもしかして、とってもイケメンなんじゃ……?



なんてことを考えた、その瞬間だった。
バチっと目が合ったその刹那、ジークベルトの顔がパッと赤く染まったのだ。



「……………おい、そんなにじろじろ見るな」


恥ずかしいだろ、と彼は言った。今の今まで奏多のことをジロジロ無遠慮に見ていた人間の言うこととはとても思えない。


いったいどの口が言ってんの?と思いながらもじとっと尚も見つめ続けていると、彼は片手で顔を覆って奏多の視線から逃げるように顔を背けてしまった。


「えぇ…」

マジか、とその様子を見て奏多は呆然とする。
耳まで真っ赤にして照れている様子のジークベルトを見て、ようやく、奏多は理解した。

この人、やっぱり変わった趣味なのね、と。
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