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緊急退避
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それは亡霊の様な姿だった。
人型をとってはいるけれど、実態のない半透明な髑髏が大口をあけて突如奏多に向かって突進してくる。心臓が、止まるかと思った。
いったい何処から現れたのだろう?執務室の扉はしまったままなのに、なんて考える間も無く髑髏が奏多の肩に噛みつく。それは、ほんの数秒の内の出来事だった。
「カナタさん──!!」
半拍遅れてカイロスが帯刀していた大剣を振り下ろす。しかし実態が掴めないせいか剣は空を斬り、骸骨は尚も奏多に狙いを定めた状態のまま大口をあけている。その姿は、今にもまた襲いかかってきそうな緊迫感があった。
「緊急避難します、カイロスも退避を!」
「メルディ、パターンAだ」
「了解!カナタ、しっかり僕の手を握っていて!」
「は、はいっ」
言われた通りにメルディの手を握る。すると足元からぶわっと風が巻き起こり、あたたかな光に包まれた。
(あ、なんか──身体が溶けていくみたい…?)
自分を形づくる輪郭が朧げになっていく感覚。何処となく初めてこの世界に召喚された時のことを彷彿とさせるその感触に、思わずぎゅっときつく目を瞑る。
すると、次の瞬間には別の場所に立っていた。突然の澄み渡る青空の下、奏多はカイロスとメルディと手を繋いだ状態でその場に立ちすくんでいた。
「カナタさん!大丈夫ですか!?」
「怪我は!?」
「あ、えっと…」
2人の逼迫した声に奏多はハッと我にかえる。そうして噛みつかれたはずの右肩に手をあてて、そうして、首を横に振る。
「だ、大丈夫みたい…痛くもないし、傷もないみたい…?」
そう答えると、カイロスもメルディも心底安堵したといった表情で天を仰いだ。「ジークベルト団長に殺されるところだった…」という呟きは、とりあえず聞かなかったことにしておこう…
「あ、指輪が…」
「粉々ですね」
カイロスとメルディが奏多の中指に嵌められた指輪の石が砕けていることに気付き、そしてまた互いに顔を見合わせて溜息を吐いている。これがすぐに壊れてしまったということは、先程の髑髏はかなりヤバいモノだったのではないだろうか…?
「あ、あれ…」
今更ながらに、足が震え出した。びっくりすることが多過ぎて、頭がついていかない。けれど、遅れてじわじわと恐怖が蘇ってくる。
なに、あれ、なんなの、あれ、
「こ、怖かった…」
そう言って、思わずその場にへたり込む。
情けないけれど、少しだけその場で泣いてしまった。漏らすかと、思ったよ…
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いったい何処から現れたのだろう?執務室の扉はしまったままなのに、なんて考える間も無く髑髏が奏多の肩に噛みつく。それは、ほんの数秒の内の出来事だった。
「カナタさん──!!」
半拍遅れてカイロスが帯刀していた大剣を振り下ろす。しかし実態が掴めないせいか剣は空を斬り、骸骨は尚も奏多に狙いを定めた状態のまま大口をあけている。その姿は、今にもまた襲いかかってきそうな緊迫感があった。
「緊急避難します、カイロスも退避を!」
「メルディ、パターンAだ」
「了解!カナタ、しっかり僕の手を握っていて!」
「は、はいっ」
言われた通りにメルディの手を握る。すると足元からぶわっと風が巻き起こり、あたたかな光に包まれた。
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自分を形づくる輪郭が朧げになっていく感覚。何処となく初めてこの世界に召喚された時のことを彷彿とさせるその感触に、思わずぎゅっときつく目を瞑る。
すると、次の瞬間には別の場所に立っていた。突然の澄み渡る青空の下、奏多はカイロスとメルディと手を繋いだ状態でその場に立ちすくんでいた。
「カナタさん!大丈夫ですか!?」
「怪我は!?」
「あ、えっと…」
2人の逼迫した声に奏多はハッと我にかえる。そうして噛みつかれたはずの右肩に手をあてて、そうして、首を横に振る。
「だ、大丈夫みたい…痛くもないし、傷もないみたい…?」
そう答えると、カイロスもメルディも心底安堵したといった表情で天を仰いだ。「ジークベルト団長に殺されるところだった…」という呟きは、とりあえず聞かなかったことにしておこう…
「あ、指輪が…」
「粉々ですね」
カイロスとメルディが奏多の中指に嵌められた指輪の石が砕けていることに気付き、そしてまた互いに顔を見合わせて溜息を吐いている。これがすぐに壊れてしまったということは、先程の髑髏はかなりヤバいモノだったのではないだろうか…?
「あ、あれ…」
今更ながらに、足が震え出した。びっくりすることが多過ぎて、頭がついていかない。けれど、遅れてじわじわと恐怖が蘇ってくる。
なに、あれ、なんなの、あれ、
「こ、怖かった…」
そう言って、思わずその場にへたり込む。
情けないけれど、少しだけその場で泣いてしまった。漏らすかと、思ったよ…
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