オマケなのに溺愛されてます

浅葱

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非現実的な恐怖

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野営地と聞いていたからてっきりキャンプ場の様なものを想像していたが、着いた先はもっと大がかりな巨大施設であった。

(イメージとしては、お洒落なグランピング…?奥の方はコテージっぽくもある…のかな?)

とにかく思っていた以上の規模と充実した設備である。不謹慎だがちょっとわくわくしてしまう自分がいた。


「今はどの師団も使っていませんから、遠慮なく使用させてもらいましょう」
「勝手に使って怒られたりは…」
「しないしない、ここは大規模な遠征用の施設だけどさっきみたいな緊急避難先としての用途も兼ねてるんだ」
「緊急避難先…」

そう言えば、さっきの魔法はなんだったのだろう?もしかしなくとも瞬間移動的な…?

「僕みたいな比較的戦闘向きじゃない魔法使いは、皆緊急避難用の魔法をいくつか習得してるものなんだよね」

奏多の思考を読んだかの様に、メルディが説明しながら中を案内してくれる。

「さっき使ったのは転移魔法。僕のスキルじゃ3人が限界だったから助かったよ」
「そう、なんだ…」
「カナタさんはこちらのベッドを使って下さい。本来なら女性とは別のテントを使うべきですが、敵襲に備えて同じ施設を使うことを許容して頂けますか?」
「えっ、あ、それは勿論」

こちらこそ、よろしくお願いします…と頭を下げると、カイロスは少しだけ変な顔をした。ん?それってどんな表情?とは思ったものの、続けてメルディが話しかけてきたのでなんとなくうやむやになってしまった。

「本当にいいの?何だったら僕、テントの前で野宿するよ!」
「いいよ、気にしないよ。それに同じ施設って言ってもかなり広いし」
「でもベッドは横並びです」
「うん、まあ…それはそうなんですけど」

確かに寝顔を見られるのは恥ずかしい。けれどそんなことを言ってる場合でもないだろう。

「平気です。むしろ、ご迷惑をおかけして申し訳ない気持ちでいっぱいなので……こちらこそ、よろしくお願いします!」

と、再び2人に向かって頭を下げると、またしても変な空気になってしまった。なんで?と思いつつも、彼らからはそれ以上何も言われなかったのでその日は早々に身支度を整え眠ることにした。


食事は備蓄を少々拝借して、軽く汗を流す。
着替えもあったので大助かりだ。

(あまり、深く考えずに、眠ってしまおう)


けれど、目を閉じると先程見た骸骨の顔が浮かんできてしまう。あの真っ暗な穴のような目を思い出す度に、知らず身体が震え出す。

(思い出すな、寝ろ、眠ってしまえ…)


命を狙われているかもなんて、考えるな

奏多はそう自分に言い聞かせる様に、何度も頭の中で同じ言葉を繰り返した。
眠りにつく、その瞬間まで。

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