オマケなのに溺愛されてます

浅葱

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言霊

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ジークベルトは国境の程近くの森林に拠点を構えており、そこで魔獣の討伐を行なっているとのことだった。

「ま…」

魔獣?なにそれ、近づいて平気なの??
と思ったのが顔に出ていたのだろう、カイロスに「大丈夫です」と先に言われてしまった。

「自分がお守りしますから」
「そうだよ!万が一の為の魔導具も借りてきたから、よっぽどのことがない限り危険はないよ!」
「…よっぽどのこと」

なんかフラグみたい…と内心で思ってしまった奏多であった。だってそもそもローハンがジークベルトを(わざわざ)名指しで行かせた場所である。そんな所が危険じゃないはずがない…!



……と思っていたら、案の定、数時間もしない内に魔物に囲まれてしまった。とは言っても奏多たちを取り囲んでいるのは下級の魔物たちで、この程度なら魔法を使わずとも物理攻撃で倒せるのだとメルディは言う。

「メルディは戦闘には参加しないの?」
「ああ、うん。この程度ならカイロスひとりで倒せるし」
「…魔力を温存ってこと?」
「そうそう、この先物理じゃ倒せない敵が出てくるかもしれないでしょう?」
「そりゃ、そうかもしれないけど…」

でも、今カイロスひとりに戦わせて後ろでじっと待っているだけなのは、なんだか心苦しい。
適材適所と言われればそれまでだけど、少しくらい手伝ってもいいのになと思ってしまう。

(だって、そもそも数が多いし…!)

一対一で戦っているわけではないので、どうしてもダメージは食らってしまう。奏多とメルディは魔導具の力で結界の中にいて攻撃はされない為、カイロスが集中砲火を浴びてしまっているのだ。

「こんなの、見てられないよ…」
「どうして?だってあれがカイロスの役割なのに」
「役割?」
「彼は騎士だもの。魔法使いの盾となって戦うのは、カイロスにとって当然の義務なんだよ?僕たちが気に病む必要なんて無いさ」
「………………」

なにそれ、と思わず憮然としてしまった。魔力を温存しておくのは確かに大事なことかもしれないが、だからと言ってカイロスがひとり奮闘しているあの様を見て、まるで他人事のように振る舞うのは釈然としない。守ってもらって当然とは、奏多にはとても思えなかった。


(せめて、援護出来ないかな)

そう言えば、と奏多は思い出す。自分のふたつ目のユニークスキルの存在を。

(あれって、元になるスキルがなくても、言霊で新しいスキルを生成出来たりするのかな…?)

試すだけ、試してみようか


奏多はダメもとで意識を集中させる。視線をカイロスへと縫いつけ、魔力の流れを言の葉に乗せる。

(───防御力、向上)

サイレントで、唇と舌だけを動かす。
すると、自分の中から魔力がごっそりと減っていくのがわかった。力がふっと抜けていく感触。恐らくこの感覚は───成功である。


と、同時にカイロスと視線がかち合った。その目は、驚愕に満ちていた。
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