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社畜の極み
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ジークベルトとローハンの間でどんな話し合いが行われたのかは知る由もない奏多だったが、結論から言うと後数日は拠点を移さず討伐を続けるとのことだった。
その間、当然ながら奏多はジークベルトのそばにいて、ついでに護衛として引き続きメルディとカイロスの2人もその場に残ることが決定した。
「忙しいのに、本当にごめんね」
「気にしなくていいよ、どうせ残してきた仕事は誰かが代わりにやるだろうし」
「そうですよ、必要な修正は既に終えていますから、後は人手さえあればどうとでもなります」
「(そういうものかぁ…)」
まあ組織としてはそうでなければいけないのだろうが、長いことブラック企業で働いていた奏多からするとなんだかソワソワしてしまう。自分の仕事を誰かが代わりにやってくれるという状況に慣れていないのだ(社蓄極まれり)
「そんなことより、ここの士気めちゃくちゃ低いけど、これで大丈夫なのかな?」
メルディはそう言うと、辺りを見回す。見渡す限りの負傷者の山である。正直、衛生的にも如何なものかと思ってしまう。奏多は掃除をしたくて堪らなくなっていたのだが、なんとジークベルトに止められてしまっていた。
「目立つな、動くな、離れるな」
ジークベルトが奏多に課した三箇条がこれである。ええ…と思った奏多だったが、奏多が勝手な行動を取るとジークベルトがくっついて来てしまうので討伐が進まなくなってしまうのだ。これでは本末転倒である。仕方なく奏多はジークベルトの後ろを安全な距離感を保ちつつ、ついていくことしか出来ずにいた。
「この辺りは激戦地だと聞いていたが、聞きしに勝る惨状だな」
「ジークベルト団長が直々に派遣されるだけのことはあるねえ」
「………………(手持ち無沙汰)」
メルディもカイロスも奏多の隣をがっちりガードしている。なんだか居た堪れない。自分に出来ることをやりたいのに、やろうとすれば迷惑がかかってしまう。勝手な行動を取れば2人がジークベルトに怒られるだろうし、ジークベルトに許可を取ったところで当のジークベルトがついて来てしまう。そうすると周りに多大なる影響を及ぼしてしまう。これでは何も出来そうにない。
(………いや、そもそも何もするなってことなのかなぁ)
つい、何かしなければと焦ってしまうのは、自分の身に染みついた社蓄根性からくるものなのだろうか…
なんてことを考えながらジークベルトの後を黙々とついて行く。すると、獣道の奥から見覚えのある一匹の獣が姿を現した。
思わず「あっ」と声を発する。すると次の瞬間、背後から耳を劈く砲声が聞こえてきた。
その間、当然ながら奏多はジークベルトのそばにいて、ついでに護衛として引き続きメルディとカイロスの2人もその場に残ることが決定した。
「忙しいのに、本当にごめんね」
「気にしなくていいよ、どうせ残してきた仕事は誰かが代わりにやるだろうし」
「そうですよ、必要な修正は既に終えていますから、後は人手さえあればどうとでもなります」
「(そういうものかぁ…)」
まあ組織としてはそうでなければいけないのだろうが、長いことブラック企業で働いていた奏多からするとなんだかソワソワしてしまう。自分の仕事を誰かが代わりにやってくれるという状況に慣れていないのだ(社蓄極まれり)
「そんなことより、ここの士気めちゃくちゃ低いけど、これで大丈夫なのかな?」
メルディはそう言うと、辺りを見回す。見渡す限りの負傷者の山である。正直、衛生的にも如何なものかと思ってしまう。奏多は掃除をしたくて堪らなくなっていたのだが、なんとジークベルトに止められてしまっていた。
「目立つな、動くな、離れるな」
ジークベルトが奏多に課した三箇条がこれである。ええ…と思った奏多だったが、奏多が勝手な行動を取るとジークベルトがくっついて来てしまうので討伐が進まなくなってしまうのだ。これでは本末転倒である。仕方なく奏多はジークベルトの後ろを安全な距離感を保ちつつ、ついていくことしか出来ずにいた。
「この辺りは激戦地だと聞いていたが、聞きしに勝る惨状だな」
「ジークベルト団長が直々に派遣されるだけのことはあるねえ」
「………………(手持ち無沙汰)」
メルディもカイロスも奏多の隣をがっちりガードしている。なんだか居た堪れない。自分に出来ることをやりたいのに、やろうとすれば迷惑がかかってしまう。勝手な行動を取れば2人がジークベルトに怒られるだろうし、ジークベルトに許可を取ったところで当のジークベルトがついて来てしまう。そうすると周りに多大なる影響を及ぼしてしまう。これでは何も出来そうにない。
(………いや、そもそも何もするなってことなのかなぁ)
つい、何かしなければと焦ってしまうのは、自分の身に染みついた社蓄根性からくるものなのだろうか…
なんてことを考えながらジークベルトの後を黙々とついて行く。すると、獣道の奥から見覚えのある一匹の獣が姿を現した。
思わず「あっ」と声を発する。すると次の瞬間、背後から耳を劈く砲声が聞こえてきた。
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