オマケなのに溺愛されてます

浅葱

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足元には気をつけて

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事前に身体強化と体力増強スキルを習得しておいて良かったと、心から思う。
背後から追ってくる気配を感じながらもそれほど距離を詰められていないのは、多分にこの2つのスキルのおかげだろう。

時折振り返りながら細かく魔法で攻撃してはいるものの、魔力の残量が気になってたいした足止めにはなっていない様子である。それでも背後はどうしても気になってしまう。追われている感覚は本能的な恐怖を煽られるし、なによりあのオカルティックなお面が単純に怖い!なにあのお面!!仮面!?どっちでもいいけどあんなの視界の暴力だ!!


(走ってるだけじゃっ、……時期に追いつかれるっ)

どうにかしてジークベルトのいる所に合流出来ないだろうかと、奏多は懸命に考える。
けれど走りながらではろくな案は出てこない。闇雲に走り出したせいで方向感覚も定まらない。けれど、止まるわけにもいかなかった。

(せめて、どこか身を隠せる場所とかっ)

視線を忙しなく動かしてみても、そんな都合の良い場所なんて簡単に見つかるはずもない。ならば結局は、追手を振り切るしかないのだ。

(仕方ない、魔力量は気にせず一発強めの氷魔法をっ)

ブチかまして足止めしようと、覚悟を決めたその時だった。


「えっ、あっ!?」

ずるり、と足元が滑った。えっ?と視線を落とすとなんとその先は崖であった。うそでしょ?と思ったのも一瞬で、そのまま崖から転落するのも一瞬だった。
ガツン!と頭を何かに打ちつけた衝撃を最後に、奏多の意識はぷっつりと途切れる。


遠くで、獣の咆哮を聞いた気がした。



















獣の息遣いがした。

ハッハッと息のかかる感触、生温かい舌の感触、肌触りの良いフサフサの毛並みの感触…

あれ?私犬なんて飼ってたっけ??などと寝ぼけた頭で目を覚ますと、そこは崖下だった。
そこで奏多は瞬時に思い出す。自分が足を滑らせ、崖から落下したことを。

「あっ、あたま…」

咄嗟にぶつけたはずの場所を手で押さえる。するとぬるりとした血の感触がした。ひえっ、と思わず悲鳴をあげたものの、何故かそこまで痛みは感じなかった。
よくよく確認してみると傷口のあたりの血は既に固まっているようで、触ってみた感触では傷もひらいてる様子はない。

なんでだろう?と奏多は首を傾げる。この血の量でこんなにすぐに傷口が塞がることなどあるだろうか??
自分の倒れていた場所を確認しても、かなりの血痕が残っている。それに、意識を失う前に感じたあの衝撃…

(あんなに痛かったのに、もう治ってるなんてありえない)

奏多は頭上を見上げる。あそこから落ちたなら、かなりの高さから転げ落ちたことになる。
なのに、怪我をした様子もない。ぶつけたはずの頭の痛みさえない。これはさすがに、おかしいのではないだろうか…?
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