オマケなのに溺愛されてます

浅葱

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聖女の侵食

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さて、困ったことになってきた。


カナタが何者かに襲われ王宮を出てからというもの、みるみる聖女による侵食がはじまった。それまで実のところあまり乗り気には見えなかった聖女がある日を境に唐突に、王子たちへ興味関心を示しはじめたのである。

ジルベールは当然ながら聖女の態度に歓喜した。毎日毎日せっせと貢物を持って部屋へと通い、公務もほったらかしで夜遅くまで入り浸っている。
ジークベルトに執着している様子を見せていた聖女だが、最近はその素振りもない。というより、今は身近にいる男たちに的を絞ったといった印象である。

(あの様子では、いつ身体の関係に発展するかわからないな)

もしくは、もうそこまで進んでいるのかもしれない、ともローハンは思う。だが聖女の妊娠には周期がある。ただ闇雲に性行為をすればいいというものでもないのだ。



聖女が聖女らしく振る舞うと、やはり王宮内の雰囲気はがらりと変わる。
聖女の目に留まりたい貴族は山程いる。今までは王子の手前おとなしくしていた連中も、ここぞとばかりに動き出していた。

こうなってくると、カナタが不在であることは不幸中の幸いだったと言えなくもない。
カナタは既に聖女の不興を買っている手前、立場が弱い。ジークベルトがいないのをいいことに、彼女に嫌がらせを働く不届きな輩が出ないとも限らなかった。


ローハンとしては、カナタには是非ともそばにいて欲しかった。何せ彼女は優秀であるし、仕事が早い。人当たりも良く常識的で模範的だ。ジークベルトにあれだけ迫られても浮き足立つこともなく(なんならちょっと迷惑そうまである)地に足が着いている。勿論ローハン自身に色目をつかうこともない。これほど仕事を一緒にする上で理想的な人材はそういない。出来れば末長く付き合っていきたい人物なのである。


なので、正直聖女に睨まれてしまったのは面倒だなと感じていた。
聖女が召喚されてしまった以上、この先の展開はある程度見えているし許容せざるを得ないことも多々あるのは理解している。
だがカナタのことは、なんとしても守らなければとローハンは考えていた。これほどまでに稀有な人材を、聖女のくだらない嫉妬で失ってなるものか。

(彼女がここを離れている間に、別の住居を用意した方がいいかもしれないな…)

その為には上の許可が要る。今のジルベールは完全に色ボケ状態だろうから、上手いこと言いくるめることが出来るかもしれない。


そんなことを考えていた矢先であった。ローハンのもとに、ヴァリエール・ロストが訪ねてきたのは
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