オマケなのに溺愛されてます

浅葱

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祝福のまじない

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「祝福……ですか?」

初耳だと言わんばかりに目を丸くするヴァリエールに、ローハンはゆっくりと頷いてみせる。

「貴方に対する魅了の効きが弱いのは、そのせいでしょうね。正気に返るのが早く、理性を取り戻しやすい」
「あの、どういうことでしょうか…」
「幸運値が上がる呪いが施されています。精神系の攻撃というのは、兎角運に左右されやすい側面がありますから」

対面している時はともかく、実際の距離が生じれば自身を取り戻せるということですよ、とローハンは続ける。

「自分を、取り戻す…」
「本当は、聖女の夫の内のひとりになることに強い忌避感を抱いているのではないですか?」
「………………」
「だからこそ、私の所へ来たのでしょう」

悪い様にはしませんよ、協力してくれるのならねとローハンが笑うと、ヴァリエールは僅かに逡巡する様子を見せた。

もうひと押しかな、とローハンは思う。
彼にも事情があることはよくわかっているが、こちらにも同じように都合がある。
有能な協力者は、多いに越したことはないのだ。


「………ですが、聖女との子をもうけることは、家門にとっても有益なことで……」
「でもそれは、貴方の我慢と苦痛の上に成り立っている砂上の城だ」
「我慢と、苦痛…ですか」
「ええ、そうです。貴方ももう理解しているでしょう、強制的に引き出された劣情は刹那的にしか意味をなさない」

持続しないのなら尚更、その先に待つのは空虚な婚姻生活です。そんな環境で育った子供が健やかに成長するはずがないでしょう?とローハンはかぶりを振る。


「それは………」
「大方聖女の夫になれば家督を継がせるなどと言われたのでしょうが、結局はその子が侯爵になるまでの繋ぎとして扱われるだけですよ」

それでもまだ、次期侯爵の座に固執しますか?との問いに、ヴァリエールは今度こそ、観念したように首を横に振った。

「いえ、………いいえ、自分が浅はかでした。やはり自分は、聖女の数ある夫のひとりにはなりません。なりたく、ありません」
「貴方は元々、聖女召喚には否定的な立場をとっていましたよね。学友の中には他国からの留学生も多数いたと記憶していますが」
「はい、よくご存知で」
「彼らの有り様は、貴方の目にいったいどう映ったのか」

詳しく聞いてもよろしいでしょうか?という問いかけに、ヴァリエールは深く頷く。
それは、この国の抱える差別と偏見に基く、根深い軋轢の話であった。
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