オマケなのに溺愛されてます

浅葱

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聖女の失態

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その場でいちばん速く動いたのは、やはりジークベルトだった。

ジークベルトは素早く梨々香の元へと向かうと身につけていた手袋を外し、それを問答無用で梨々香の口の中へと突っ込んだ。そして自らのベルトで梨々香の両腕を後ろ手に縛りあげる。その手際の良さは、流石としか言いようがなかった。


「き、貴様っ!聖女様になんたる無礼なっ!」
「見ろ、魔物が消えたぞ」
「……………っ、」
「これが動かぬ証拠だ。この女の口を塞げば魔物が消失した。呼び出していたのは、この聖女様だ」
「そ、それは…」

違う、とは言わなかった。言えなかった。何故ならアーチボルトも見ていたからである。梨々香の口から、呪詛の言葉が紡がれていたことを。

「この地の魔物は既に一掃している。巣穴諸共破壊したんだよ。よってこの国で魔物が出没するのはダンジョンの中か、呪法で呼び出すかの2択しかない」

そうですよね、殿下?とジークベルトは話の矛先をジルベールへと向ける。彼は、見るからに青い顔をしていた。

「呪法の不正使用は国法96条により極刑、もしくは300年の禁錮刑が執行される。無論、例外は認められない」

連れて行け、とジークベルトは冷酷に言い渡す。それでもなお食い下がろうとする近衛騎士たちを、他の隊士たちが阻むように盾となって押し返す。

その間も、ジルベールは身動きひとつ出来ずにいた。後方に控えていたヴァリエールも同様である。ただ生気のない顔で、連行されていく梨々香の後ろ姿をぼんやりと見送るだけであった。











「怪我はないか」
「クロード……」

いつの間にか人型になったクロードが背後に立っていた。相変わらずの全裸……(に、カイロスが上着をかけてくれている)だが、その顔には労りが満ちている。顔の表情と格好が合ってなさすぎるんだよなぁ…と思いつつも、奏多はちいさく頷いてみせた。

「大丈夫です、…………さっき叫んだのって、クロードですか?」
「ああ、そうだ。声の大きさには自信があるからな」
「……(そういう問題なのかな…)」
「これで、一時的に聖女を拘束する理由が出来た。この間に聖女によるチャームを少しでも解除出来ればまた状況も変わるだろう」
「チャーム…」

魅了、ということだろうか?と奏多はクロードを見上げる。そう言えば、聖女が目の前に現れたというのにメルディもカイロスもあまり梨々香に興味を示した様子がなかった。
他の隊士たちや、クロードにしてもそうである。何故彼らには梨々香の魅了が効かないのだろうか?魔導具の効果にしても、反応が極端な気がするのだけれど…
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