オマケなのに溺愛されてます

浅葱

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聖女の殺し方

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「一旦聖女のことは置いておきましょう。今はカナタを探すことだけに集中する。それでいいですね?」
「…………聖女を締め上げれば居場所がわかったりしないだろうか」
「それはどうでしょう?聖女がどの程度理解して呪法を使っているかが未知数ですから。それに不用意に何度も接触して魅了にかかりでもしたら元も子もないでしょうし」
「聖女の魅了にはかからない」
「またそういう根拠の無い自信を…」

俺が好きになるのはカナタだけだ、とジークベルトは断言する。まあこちらとしても、そうであって欲しいのは山々ですがとローハンは内心で溜息を吐いた。もうこうなったジークベルトには何を言っても無駄である。ローハンは通信機越しに先程決裁したばかりの書面を掲げてこう告げた。

「必要な手続きは済ませましたから、居場所だけ定期的に報告してもらえれば自由に行動してもらって構いません」
「恩に着る」
「勿論必要であれば部下を数名連れて行くことも──」

ブツッと、そこで乱暴に通信は途切れた。まったく堪え性のない男である。まあ事態が事態であるから、仕方のないことかもしれないが…


「しかしジークがいないとなると、いつまで聖女を拘束しておけるか…」

王城から聖女を引き離せたのは、不幸中の幸いだった。王城内では物理的に警護が厳重で聖女を監視観察するのも一苦労だった。ヴァリエールの協力がなければ詰んでいたところである。

正直なところ、聖女を殺す方法はないことはないのだ。原始的な方法だが、ジークベルトのしたように食事を与えなければよいのである。聖女を害することは出来ないが、餓死させることは可能なのだ。

(けれど、聖女には常に取り巻きがいる。それ故に必ず寝返る者があらわれる)

結局のところ、聖女を弑したという記録は残っていない。この国に召喚された聖女たちは誰も皆天寿を全うしたとされている。複数の夫と愛人に囲まれ、多くの子供をこの世に残して。

そうやって、この国は躍進を遂げたのである。飛躍的に進歩発展をしたと言えば聞こえは良いが、その実態は度重なる侵略と虐殺の歴史だ。この国の発展の裏には常に踏み躙られた数多の民族国家が存在している。そして自分たちもその一端を担っている。まったく、怖気の走る話だった。
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