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第1章 幼なじみの転生は気付けない(24) SIDE マリー
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SIDE マリー
困ったことになったよ!
私はテーブルに置かれた金貨を横目で見ながら、自室の中をウロウロ歩き回っていた。
侍女経由で「今月分」として渡されたのだ。
金貨と一緒に渡された羊皮紙の切れ端には、「男3、女2」と書かれていた。
羊皮紙は見てすぐ塵になって消えたので、そういう魔法がかけられていたのだろう。
侍女に盗み見られたということはなさそうだ。
問題は書かれていた内容だ。
人さらいの人数だよねえこれ!
え? なに? もしかして私も関わってたってこと?
みかじめ料を要求してたとかそういうことだとは思うけど……まさか、「黒幕は私!」なんてことはないよね!?
いずれにせよ、こんなのが勇者さんにバレたら、味方になってもらうどころじゃない!
マリーの好感度アップ計画が初手からつまずいてるう!
頭を抱えていると、扉がノックされた。
「マリー様、勇者様がいらっしゃいました」
扉の向こうから侍女の声がする。
「ひえっ」
変な声出た!
ひとまずこの金貨を隠さなきゃ……ええと、とりあえず引き出しに放り込んで……!
「どうぞ」
私があわてて髪を整えそう言うと、静かに開いたドアから勇者さんと、魔女っぽい美少女が入ってきた。
「そちらの方は?」
「パーティを組むことになったメグです」
勇者さんが軽く紹介すると、メグさんはかわいらしい笑顔とともに会釈した。
う、うわきものおおおおおおおおお!
いつの間にこんな美少女とお知り合いになったかなあ!?
私がピンチだっていうのに!
わかってるけどね……そんなこと勇者さんには関係ないってね……。
「メグには魔法戦闘と旅についての指南をお願いするつもりです」
旅かあ……。
ある程度功績を上げたら、勇者さんは魔王を倒すために旅立ってしまうのだ。
…………困る!
それすっごい困る!
こっちの世界の人は信用できない。
というか、マリーがこれだけやらかしてる中、仕え続けてくれる人を信用できるわけがない。
私の好感度が上がるまでは、なんとしても近くにいてもらわなければ。
「人さらいの件、どうでした?」
「無事解決しましたよ。犯人グループも何人か捕らえています」
「そうですか、なによりです」
ああああああ! 勇者さんの目が完全に「あんた犯人だろ?」って言ってるうううう!
解決したってことは誘拐犯と接触したってことで……。つまり、私にお金を流してたことも自白させたよねえ!
というか、犯人捕まっちゃったんなら、私のことしゃべられちゃうかもしれないよねえ!
…………あの金貨、握らせておこうかな。
本人達はどうせ死刑だろうから、尋問官とかそういう人に握らせておくべき?
はっ!? これじゃあ発想が『マリー』と一緒だよ。
「マリー様? どうしましたか?」
「いえ、なんでもありません。事件の解決に感謝します。さすが勇者さんですね」
「マリー様の情報のおかげですでどもどこでそんな情報を?」
うわああああ!
これって探りをいれられてるよねえ。
どうすればどうすればどうすれば……そうだ!
「とある筋からの情報で犯人グループの一人とおぼしき人を見つけたのです。そこで私は彼に取引きをもちかけました。見過ごしてやるからお金をよこせと」
「手を組んだと?」
「表向きは」
「…………なるほど。仲間のフリをすることで、犯行グループの全貌をつかもうとしたんですね」
これだけで真意を理解してくれた。
この勇者さん頭もけっこうよさそうだ。
まあ、嘘なんだけども!
でもナイスじゃない私?
この噂が流れれば、街での好感度も少しは上がるってもんでしょ!
「そういうことです。末端の一人だけを捕まえてもしかたありませんから」
「どうやら噂よりもずっと賢い人のようですね」
これで少しは信用度がアップしたかな?
「ん? それは?」
勇者さんが見たのは、引き出しの前に落ちた金貨だった。
さきほど慌てて隠したものである。
「私の部屋に金貨があるのが不思議?」
「い、いえ……」
やっちゃったあああ!!
か、かんじわるーい!!
つい慌てて変な言い方をしちゃったよ!
しっかり言い訳できたんだから、普通にしてればいいのに。
そうだ、こういう時はちゃんとお礼をしなきゃね。
「今回は助かりました勇者さん。領主様より改めて褒美があると思いますので、沙汰をお待ち下さいね」
「やりましたね勇者様! 旅には資金も必要ですから!」
メグさんがぴょこんととびはねる。
いいなあかわいくて。
私も転生するならああいう娘がよかったな。
それはそれとして、勇者さんに旅立たれるのは困ってしまう。
「早く勇者証明書を発行してもらえるといいですね」
メグさんはふとそんなことを言った。
「勇者証明書ってなんだ?」
勇者さんがメグさんに聞いてくれて助かった。
転生者であることをバレたくない私は、こちらの世界で常識になっていることをうかつに質問できない。
「勇者様は偉い人達の投資対象ですからね。下手に行方をくらましたりできないよう、国境を越えるには勇者証明書が必要になるんです」
「パスポートみたいなものか」
「そのパスポートというのが何かはよくわかりませんが、勇者様専用の通行手形みたいなものです。行く先々で、領地の境を越えるために発行してもらう形ですね」
移動先の領地ごとに申請というのはかなり面倒だな。
「とってしまえば便利なものなのか?」
「んー……便利と言えば便利ですね。敵国どうしの国境をこえやすいですし。ただし勇者様は、普通の承認と違ってどの国や街でも証明書がないと境を超えられません。召喚された際に人相書きが出回っちゃってますからね」
「うわぁ……投資対象ってマジなんだな……」
「大丈夫です! 一緒に魔王を倒して、贅沢三昧しちゃいましょう!」
「いや別にそれは望んでないんだが……」
それだ!
そんな仕組みがあるなら、勇者さんはもう少しこの街にいてくれるだろう。
せめてその間だけでも、私の評判を上げるのに協力してもらおう。
たいしたお返しはできないけど、お金や旅の準備くらいは協力できる。
「勇者様、これからもがんばってくださいね。証明書の件、父にもかけあっておきますから!」
「え……は、はい」
あれ? 一緒にがんばろうって言ったつもりなのに、なんだかうかない顔をしている気がするなあ?
まあいいか!
これでしっかり協力体勢も作れたし、がんばっていこー!
もうヤケクソだよ!
困ったことになったよ!
私はテーブルに置かれた金貨を横目で見ながら、自室の中をウロウロ歩き回っていた。
侍女経由で「今月分」として渡されたのだ。
金貨と一緒に渡された羊皮紙の切れ端には、「男3、女2」と書かれていた。
羊皮紙は見てすぐ塵になって消えたので、そういう魔法がかけられていたのだろう。
侍女に盗み見られたということはなさそうだ。
問題は書かれていた内容だ。
人さらいの人数だよねえこれ!
え? なに? もしかして私も関わってたってこと?
みかじめ料を要求してたとかそういうことだとは思うけど……まさか、「黒幕は私!」なんてことはないよね!?
いずれにせよ、こんなのが勇者さんにバレたら、味方になってもらうどころじゃない!
マリーの好感度アップ計画が初手からつまずいてるう!
頭を抱えていると、扉がノックされた。
「マリー様、勇者様がいらっしゃいました」
扉の向こうから侍女の声がする。
「ひえっ」
変な声出た!
ひとまずこの金貨を隠さなきゃ……ええと、とりあえず引き出しに放り込んで……!
「どうぞ」
私があわてて髪を整えそう言うと、静かに開いたドアから勇者さんと、魔女っぽい美少女が入ってきた。
「そちらの方は?」
「パーティを組むことになったメグです」
勇者さんが軽く紹介すると、メグさんはかわいらしい笑顔とともに会釈した。
う、うわきものおおおおおおおおお!
いつの間にこんな美少女とお知り合いになったかなあ!?
私がピンチだっていうのに!
わかってるけどね……そんなこと勇者さんには関係ないってね……。
「メグには魔法戦闘と旅についての指南をお願いするつもりです」
旅かあ……。
ある程度功績を上げたら、勇者さんは魔王を倒すために旅立ってしまうのだ。
…………困る!
それすっごい困る!
こっちの世界の人は信用できない。
というか、マリーがこれだけやらかしてる中、仕え続けてくれる人を信用できるわけがない。
私の好感度が上がるまでは、なんとしても近くにいてもらわなければ。
「人さらいの件、どうでした?」
「無事解決しましたよ。犯人グループも何人か捕らえています」
「そうですか、なによりです」
ああああああ! 勇者さんの目が完全に「あんた犯人だろ?」って言ってるうううう!
解決したってことは誘拐犯と接触したってことで……。つまり、私にお金を流してたことも自白させたよねえ!
というか、犯人捕まっちゃったんなら、私のことしゃべられちゃうかもしれないよねえ!
…………あの金貨、握らせておこうかな。
本人達はどうせ死刑だろうから、尋問官とかそういう人に握らせておくべき?
はっ!? これじゃあ発想が『マリー』と一緒だよ。
「マリー様? どうしましたか?」
「いえ、なんでもありません。事件の解決に感謝します。さすが勇者さんですね」
「マリー様の情報のおかげですでどもどこでそんな情報を?」
うわああああ!
これって探りをいれられてるよねえ。
どうすればどうすればどうすれば……そうだ!
「とある筋からの情報で犯人グループの一人とおぼしき人を見つけたのです。そこで私は彼に取引きをもちかけました。見過ごしてやるからお金をよこせと」
「手を組んだと?」
「表向きは」
「…………なるほど。仲間のフリをすることで、犯行グループの全貌をつかもうとしたんですね」
これだけで真意を理解してくれた。
この勇者さん頭もけっこうよさそうだ。
まあ、嘘なんだけども!
でもナイスじゃない私?
この噂が流れれば、街での好感度も少しは上がるってもんでしょ!
「そういうことです。末端の一人だけを捕まえてもしかたありませんから」
「どうやら噂よりもずっと賢い人のようですね」
これで少しは信用度がアップしたかな?
「ん? それは?」
勇者さんが見たのは、引き出しの前に落ちた金貨だった。
さきほど慌てて隠したものである。
「私の部屋に金貨があるのが不思議?」
「い、いえ……」
やっちゃったあああ!!
か、かんじわるーい!!
つい慌てて変な言い方をしちゃったよ!
しっかり言い訳できたんだから、普通にしてればいいのに。
そうだ、こういう時はちゃんとお礼をしなきゃね。
「今回は助かりました勇者さん。領主様より改めて褒美があると思いますので、沙汰をお待ち下さいね」
「やりましたね勇者様! 旅には資金も必要ですから!」
メグさんがぴょこんととびはねる。
いいなあかわいくて。
私も転生するならああいう娘がよかったな。
それはそれとして、勇者さんに旅立たれるのは困ってしまう。
「早く勇者証明書を発行してもらえるといいですね」
メグさんはふとそんなことを言った。
「勇者証明書ってなんだ?」
勇者さんがメグさんに聞いてくれて助かった。
転生者であることをバレたくない私は、こちらの世界で常識になっていることをうかつに質問できない。
「勇者様は偉い人達の投資対象ですからね。下手に行方をくらましたりできないよう、国境を越えるには勇者証明書が必要になるんです」
「パスポートみたいなものか」
「そのパスポートというのが何かはよくわかりませんが、勇者様専用の通行手形みたいなものです。行く先々で、領地の境を越えるために発行してもらう形ですね」
移動先の領地ごとに申請というのはかなり面倒だな。
「とってしまえば便利なものなのか?」
「んー……便利と言えば便利ですね。敵国どうしの国境をこえやすいですし。ただし勇者様は、普通の承認と違ってどの国や街でも証明書がないと境を超えられません。召喚された際に人相書きが出回っちゃってますからね」
「うわぁ……投資対象ってマジなんだな……」
「大丈夫です! 一緒に魔王を倒して、贅沢三昧しちゃいましょう!」
「いや別にそれは望んでないんだが……」
それだ!
そんな仕組みがあるなら、勇者さんはもう少しこの街にいてくれるだろう。
せめてその間だけでも、私の評判を上げるのに協力してもらおう。
たいしたお返しはできないけど、お金や旅の準備くらいは協力できる。
「勇者様、これからもがんばってくださいね。証明書の件、父にもかけあっておきますから!」
「え……は、はい」
あれ? 一緒にがんばろうって言ったつもりなのに、なんだかうかない顔をしている気がするなあ?
まあいいか!
これでしっかり協力体勢も作れたし、がんばっていこー!
もうヤケクソだよ!
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