19 / 43
ギデオンの体はすごいんです
しおりを挟む
先ほどの騒動が嘘のようだった。
心中いろいろ思っている男子二人をほっておいて、今までの人生の中で、一番最高に幸せそうな顔でエルがご飯を食べ続ける。
「おい、そんな急いで、食べると喉詰まって、死ぬぞ!」
とマティアスが、パンに、がぶついているエルに注意する。
「え? あ! そういう手もあるな。まあ、いいや、今朝は気分がいいんだ。食欲が増進した!」
驚く勢いでご飯を平らげるエルに執事のリトが声をかける。
「エル様、このままだと、午後がペナルティの授業になりますよ」
最近、体がなまって仕方がないというエルの不満を聞いて、令嬢として及第点、これも大変低い基準なのだが、これがリトによってクリアされたとみなされたら、ご褒美として、午後の三刻くらいからは、剣の使い方の授業に当てられた。もちろん、先生はマティアスだった。
正しい騎士が使う長剣での正式な戦いは、全く素人なエルにとっては、目新しいことが満載だが、新しい事が習えて楽しかったし、何より体が動かせる事は気持ちがよいらしく、唯一のエルの息抜きになっていた。
「だ、だめだ。恐ろしい事を言わないでくれ。リト。わかった。きちんとちぎって食べる。でも、リト、今朝は本当に素晴らしかった」
「なにがそんなに素晴らしかったのですか?」
リトがそのつぶらな瞳をキラキラさせているエルを見つめる。
もちろん、リトもこの少女は素行や仕草、喋り方など、つまり、見た目以外は全部不合格だが、性格の素直さや外見の美しさは公爵令嬢そのもの、だったので、だんだんと彼女の教育に彼ものめり込んでいるようだった。
ギデオンに言われて、テーブルマナーを主に教えていた。
エルが何を答えるのかが予想できたマティアスは、
「エル、よせ! 言うな!」と言い、
「エメラルド、口をつつしみなさい!」
と、ギデオンは彼女を窘めながら、お茶を飲む。
まあそんな事で臆病になる元海賊などどこにもいない。
「あのね、リト、昨晩の寝台でのギデオンの体はすごかった! 痺れそうなぐらい感動した!」
あまりにも衝撃的な言葉で、ギデオンは口に含みかけていたお茶を噴き出した。
マティアスでさえ、どうしようかと思い、
「お、お前! 絶対公爵令嬢、無理だよ!!!」
と唸っている。
今まで感情の起伏を出さないリトでさえ、その頬が赤くなる。でも、ゴホゴホと咳き込んでいる主人の代わりにやさしくリトが話しかけた。
「そうですか? ギデオン様は昔は体が弱かったんですか、だいぶ苦労されて、このように強靭になられたんですよ。ですから、エメラルド様が、ギデオン様を強い方を思って感動していただくのは、リトも嬉しいですよ」
とにっこりと話しかけた。
「そうだろ。私もそう思う。ギデオンは立派だ。だから、祝福をあげた。ギデオンは特別だな」
さっきの朝のキスを思い出し、マティアスが声を出す。
「あ、さっきのやつだな。お前、あんなキスなんて………普通の令嬢はしないぞ。なんだその祝福とは?」
「……妬いているのか? マティアス。お前はまだ無理だ。私の祝福はやらん!」
「なんだそれ!! お前の乳くせえ、キスなんているかよ!」
「ふんだ! なんとでも言え! これはオレが最高に気分がよくなって、感動した時にしかできないんだ!」
「エメラルド。マティアスの言っていることには一理ある。ああやって肌を寄せ合うのは特別な関係しかできない。ましてや接吻はとても意味がある。だから、安易に……」
バンッとテーブルを激しくエルが叩いた。
目は涙目だ。
「ぎ、ギデオンはわかってない!!」
「「!!!!」」
「あ、あれは特別なんだ!! 本当に特別な時にしか出来ないんだ。私がしたくても……」
あっと言って口を塞ぎ、なにかしゃべり過ぎたかのような素振りのエルは、『ごちそうさま』と言って、部屋から飛び出した。
「エル!」
マティアスが呼び止めようとしたが、エルはそのままどこかに行ってしまう。
「ギデオン様? 追わなくていいんですか?」
はっと我にかえったギデオンが、マティアスを見る。
「ああ、悪い、マティアス。様子を見てくれないか?」
「……はい、わかりました。ギデオン様」
二人が部屋から出ていくのを、ギデオンは見つめていた。
ただ、彼の片手が、エルがキスをした胸の上に置かれていた。
心中いろいろ思っている男子二人をほっておいて、今までの人生の中で、一番最高に幸せそうな顔でエルがご飯を食べ続ける。
「おい、そんな急いで、食べると喉詰まって、死ぬぞ!」
とマティアスが、パンに、がぶついているエルに注意する。
「え? あ! そういう手もあるな。まあ、いいや、今朝は気分がいいんだ。食欲が増進した!」
驚く勢いでご飯を平らげるエルに執事のリトが声をかける。
「エル様、このままだと、午後がペナルティの授業になりますよ」
最近、体がなまって仕方がないというエルの不満を聞いて、令嬢として及第点、これも大変低い基準なのだが、これがリトによってクリアされたとみなされたら、ご褒美として、午後の三刻くらいからは、剣の使い方の授業に当てられた。もちろん、先生はマティアスだった。
正しい騎士が使う長剣での正式な戦いは、全く素人なエルにとっては、目新しいことが満載だが、新しい事が習えて楽しかったし、何より体が動かせる事は気持ちがよいらしく、唯一のエルの息抜きになっていた。
「だ、だめだ。恐ろしい事を言わないでくれ。リト。わかった。きちんとちぎって食べる。でも、リト、今朝は本当に素晴らしかった」
「なにがそんなに素晴らしかったのですか?」
リトがそのつぶらな瞳をキラキラさせているエルを見つめる。
もちろん、リトもこの少女は素行や仕草、喋り方など、つまり、見た目以外は全部不合格だが、性格の素直さや外見の美しさは公爵令嬢そのもの、だったので、だんだんと彼女の教育に彼ものめり込んでいるようだった。
ギデオンに言われて、テーブルマナーを主に教えていた。
エルが何を答えるのかが予想できたマティアスは、
「エル、よせ! 言うな!」と言い、
「エメラルド、口をつつしみなさい!」
と、ギデオンは彼女を窘めながら、お茶を飲む。
まあそんな事で臆病になる元海賊などどこにもいない。
「あのね、リト、昨晩の寝台でのギデオンの体はすごかった! 痺れそうなぐらい感動した!」
あまりにも衝撃的な言葉で、ギデオンは口に含みかけていたお茶を噴き出した。
マティアスでさえ、どうしようかと思い、
「お、お前! 絶対公爵令嬢、無理だよ!!!」
と唸っている。
今まで感情の起伏を出さないリトでさえ、その頬が赤くなる。でも、ゴホゴホと咳き込んでいる主人の代わりにやさしくリトが話しかけた。
「そうですか? ギデオン様は昔は体が弱かったんですか、だいぶ苦労されて、このように強靭になられたんですよ。ですから、エメラルド様が、ギデオン様を強い方を思って感動していただくのは、リトも嬉しいですよ」
とにっこりと話しかけた。
「そうだろ。私もそう思う。ギデオンは立派だ。だから、祝福をあげた。ギデオンは特別だな」
さっきの朝のキスを思い出し、マティアスが声を出す。
「あ、さっきのやつだな。お前、あんなキスなんて………普通の令嬢はしないぞ。なんだその祝福とは?」
「……妬いているのか? マティアス。お前はまだ無理だ。私の祝福はやらん!」
「なんだそれ!! お前の乳くせえ、キスなんているかよ!」
「ふんだ! なんとでも言え! これはオレが最高に気分がよくなって、感動した時にしかできないんだ!」
「エメラルド。マティアスの言っていることには一理ある。ああやって肌を寄せ合うのは特別な関係しかできない。ましてや接吻はとても意味がある。だから、安易に……」
バンッとテーブルを激しくエルが叩いた。
目は涙目だ。
「ぎ、ギデオンはわかってない!!」
「「!!!!」」
「あ、あれは特別なんだ!! 本当に特別な時にしか出来ないんだ。私がしたくても……」
あっと言って口を塞ぎ、なにかしゃべり過ぎたかのような素振りのエルは、『ごちそうさま』と言って、部屋から飛び出した。
「エル!」
マティアスが呼び止めようとしたが、エルはそのままどこかに行ってしまう。
「ギデオン様? 追わなくていいんですか?」
はっと我にかえったギデオンが、マティアスを見る。
「ああ、悪い、マティアス。様子を見てくれないか?」
「……はい、わかりました。ギデオン様」
二人が部屋から出ていくのを、ギデオンは見つめていた。
ただ、彼の片手が、エルがキスをした胸の上に置かれていた。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
淫紋付きランジェリーパーティーへようこそ~麗人辺境伯、婿殿の逆襲の罠にハメられる
柿崎まつる
恋愛
ローテ辺境伯領から最重要機密を盗んだ男が潜んだ先は、ある紳士社交倶楽部の夜会会場。女辺境伯とその夫は夜会に潜入するが、なんとそこはランジェリーパーティーだった!
※辺境伯は女です ムーンライトノベルズに掲載済みです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる