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ギデオンの不安
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物音はたしかに聞こえなかった。
しかも、深夜のこの王宮のゲスト用の棟には、誰も行き交いが許されない。
深い眠りに付いていたのに、なにか誰かの声を聞いた。
瞼をさっと開けると、暗闇の部屋には誰もいないのがわかる。
「エメラルド?」
なぜかここにいないのに、その名前が口から出る。
なにかが不安にさせる。
いつもは自分には血潮さえ通っているのかと思うくらいの冷静な自分の体質が、あり得ない反応をしていた。
心臓がバクバクと騒がしく音を鳴らし、身体中が何故か熱くなる。
焦燥感が自分を襲った。
すぐに寝台から飛び降り、自分の刀を持ち、繋がっているエルの部屋のドアを開けた。
ふわりとカーテンが揺れていた。
バサバサと風を受けて、カーテンの布が擦れる音しかしない。
寝台には誰もいない。
もちろん、浴室にも。
「!!!」
寝台のシーツの温かさを自分の手で急いで確かめる。
まだ温もりがあった。
それほど遠くないはずだ。
少し自分の呼吸が落ち着く。
窓の外をみると、ゆうにそこからは五階以上ある高さだ。
ここからは普通の人間なら降りられない。
周りを確かめながら、すぐに部屋のドアを開けて、周りをみる。
誰もいない。
ポケットから笛を出した。
それを吹く。
音は出ない。
特定の波長しかでないようにしてあるこの笛は、受信者がそれを受信具を耳に当てていない限り、聞こえない。
足跡が聞こえた。
マティアスが軽装で頭をボサボサのままで慌てて来た。
奴の部屋は従者扱いのため、この棟の一番端にやられてしまったのだ。
まあ、それを考えてこの笛を持参した。
それは正しかったように思えた。
とくにこの深夜の非常事態を考えてると……。
「ギデオン様っ、ど、どうしましたか?」
「エメラルドが、いなくなった……」
「……え? もしかして連れ去られた?」
「そう思うか?」
「あ、それはないな。飴につられてどっかにいったか、もしくは……自分の意思でどこかにいった?」
「彼女の双剣も消えている」
「や、、やばいですよ。殺しですか? もしかして殺し屋に戻っただなんてシャレになりませんよ」
「いや、違う理由かもしれん…」
「どちらにしろ、止めないと!」
マティアスに同意して頷いた。
そういうマティアスはギデオンが考えている間に、「俺は外の中庭から見てきます」と言って消えた。
ギデオンは胸に手を当てた。
何かそこには存在している。
あの祝福をエルから受けてから、時々、そこが否が応でも熱くなる。いま、そこが、まるでいるべき主人の不在を訴えるような不安をもたらす。
エメラルド、どこにいる?
でも、彼女は自分を呼んでいなかった。
それがなぜかギデオンに刹那的だが、胸に痛みを与える。
「エメラルド……君は……一体、何て厄介なものを、俺に……くそっ」
ギデオンの低い唸り声が響いた。
そして、急いで外套をはおり、王宮の外に出た。
彼女なら、五階から降りても無傷かもしれない……。
確証のない考えが自分に語りかけていた。
しかも、深夜のこの王宮のゲスト用の棟には、誰も行き交いが許されない。
深い眠りに付いていたのに、なにか誰かの声を聞いた。
瞼をさっと開けると、暗闇の部屋には誰もいないのがわかる。
「エメラルド?」
なぜかここにいないのに、その名前が口から出る。
なにかが不安にさせる。
いつもは自分には血潮さえ通っているのかと思うくらいの冷静な自分の体質が、あり得ない反応をしていた。
心臓がバクバクと騒がしく音を鳴らし、身体中が何故か熱くなる。
焦燥感が自分を襲った。
すぐに寝台から飛び降り、自分の刀を持ち、繋がっているエルの部屋のドアを開けた。
ふわりとカーテンが揺れていた。
バサバサと風を受けて、カーテンの布が擦れる音しかしない。
寝台には誰もいない。
もちろん、浴室にも。
「!!!」
寝台のシーツの温かさを自分の手で急いで確かめる。
まだ温もりがあった。
それほど遠くないはずだ。
少し自分の呼吸が落ち着く。
窓の外をみると、ゆうにそこからは五階以上ある高さだ。
ここからは普通の人間なら降りられない。
周りを確かめながら、すぐに部屋のドアを開けて、周りをみる。
誰もいない。
ポケットから笛を出した。
それを吹く。
音は出ない。
特定の波長しかでないようにしてあるこの笛は、受信者がそれを受信具を耳に当てていない限り、聞こえない。
足跡が聞こえた。
マティアスが軽装で頭をボサボサのままで慌てて来た。
奴の部屋は従者扱いのため、この棟の一番端にやられてしまったのだ。
まあ、それを考えてこの笛を持参した。
それは正しかったように思えた。
とくにこの深夜の非常事態を考えてると……。
「ギデオン様っ、ど、どうしましたか?」
「エメラルドが、いなくなった……」
「……え? もしかして連れ去られた?」
「そう思うか?」
「あ、それはないな。飴につられてどっかにいったか、もしくは……自分の意思でどこかにいった?」
「彼女の双剣も消えている」
「や、、やばいですよ。殺しですか? もしかして殺し屋に戻っただなんてシャレになりませんよ」
「いや、違う理由かもしれん…」
「どちらにしろ、止めないと!」
マティアスに同意して頷いた。
そういうマティアスはギデオンが考えている間に、「俺は外の中庭から見てきます」と言って消えた。
ギデオンは胸に手を当てた。
何かそこには存在している。
あの祝福をエルから受けてから、時々、そこが否が応でも熱くなる。いま、そこが、まるでいるべき主人の不在を訴えるような不安をもたらす。
エメラルド、どこにいる?
でも、彼女は自分を呼んでいなかった。
それがなぜかギデオンに刹那的だが、胸に痛みを与える。
「エメラルド……君は……一体、何て厄介なものを、俺に……くそっ」
ギデオンの低い唸り声が響いた。
そして、急いで外套をはおり、王宮の外に出た。
彼女なら、五階から降りても無傷かもしれない……。
確証のない考えが自分に語りかけていた。
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