異世界ぼっち暮らし(神様と一緒!!)

藤雪たすく

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努力の価値は

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『衝撃的でした……たこモブさんもああいうのやるんですね。リーリンのエピソードが吹き飛びました』

配信が終わり、いつもの様にたこモブさんとDMをしながら感想を伝える……が、なんと触れて良いかがわからない。

『そう?あれぐらいは中学生だってやってるでしょ。R指定ついているわけでもないし』

そうだけど……そうだけど。

【愛の女神 アイリス】のストーリーは四人の女神のストーリーを解放してプレイ出来る、桃色ルートと呼ばれるストーリーで……まあ、随所に下ネタとエロが……。

強くてNEWGAMEなのか、初めから好感度は高いし戦闘よりも恋愛?を楽しむストーリー。事あるごとにヤッてんだよな……あからさまな描写は無いものの明らかにヤッてる。

暗転でアンアン言ってりゃ、そういうの通ってきてない俺でもわかる。

『新しいたこモブさんが見られた気はします』

『そこまで免疫ないとは思わなくて……不快だった?』

『不快とかは無いですけど、恥ずかしくて……誰もいない環境で良かったです。それでもイヤホン欲しくなりました』

歳が歳だし知識ゼロというわけではないが……たこモブさんの声であんなのやこんなのを読み上げられると恥ずかしくて直視出来ない場面も多々あった……イヤホンが欲しい。静かな部屋にたこモブさんの声が響くのが恥ずかしいと思ったのは初めて……。

誰もいないのに誰かに見られているんじゃないかとソワソワして落ち着かなかった。
今度慎也さんと会えたらイヤホンをお願いしてみようか。

『そういえば、家を改築したんだね。部屋が増えてる』

『そうなんです!!他の人の事だからどこまで話して良いかわからなかったんですけど、実は……』

新しくなった我が家の写真と家に関しての新たな機能を自慢したんだった。

降ル神の拠点に関するシステムで部屋を飾る機能があったのだが、それが我が家にも機能した。
魔物のドロップした皮やら牙やらの素材と交換出来るポイントで家具が貰えるという素晴らしい機能、おかげで慎也さん用の部屋もバッチリ。模様替えは……人力だけど……。

その事に触れられたついでに慎也さんの事も伝えてみた。あれだけのたこモブさんファンの存在、きっと喜ぶだろう。

『……それでですね、その方情報が凄いんですよ!!かなり初期……絶対古参の方ですよ。今回の配信チャットにも居たのかもしれない……ハンドルネーム聞いておくべきでした』

配信を観ながら失敗したなぁと反省した部分。次に会えたら必ず聞いておこう。

『いい友達ができたんだね』

『はい!!次に会えるのが楽しみで楽しみでしかたないです』

ひとしきり会話を交わして『おやすみなさい』で締めくくった。

うん、幸せだ。異世界の写真とか……そんな事でもなければたこモブさんとこうして会話を交わして貰える事なんてなかったと思う。
異世界の写真送れなくなったら……もう話相手になって貰えないかもしれない……だから……だから俺は地球に帰れなくていいんだ。
俺は……幸せなんだから……。

ーーーーーー

ウサ狸や風船魚ではもうレベルが上がりにくくなって来て、豚狼に狙いを定める事にした。

慎也さんが来た時に、少しでも安全にしておかなきゃだもんな……早く大鹿に勝てるぐらいにはならないと。

拠点から足を伸ばした湖にはたくさんの魔物が集まるのであまり近づかないようにしていたが、豚狼の生息地域もその辺り……豚狼を追って少し近づきすぎてしまったらしい……。

巨大な体躯、溢れ出す危険なオーラ……忘れるはずも無い象猪の姿があった。

「逃げなきゃ……」

今の俺ではまだまだあいつと戦える力はない、後退りで静かに離れようとしたが……
パキッ!!
お約束の様に木の枝を踏み高い音が響く。

マズいマズいマズいマズいマズいマズい!!

頭は真っ白になり、がむしゃらに走り逃げる。走って走って走って走って……象猪が追ってくる気配は無かったけれど、ひたすら走った。

象猪から逃げる事に必死になるあまり……周囲への警戒を怠ってせいか……横の繁みから飛び出してくる魔物に気がつくことは出来ずモロにその魔物とぶつかってしまう。

「こんな時にっ!!」

俺もそれなりに経験値を積んだからか、ライバルである大鹿の突進をガードは出来た、出来たが……衝撃までは受け止める事が出来ずに身体は投げ出され飛ばされた場所は……崖。

「嫌だ!!嫌だぁぁぁっ!!」

何かに掴まろうとする手は何も掴めない。
抵抗など虚しく落下していく身体。

死にたくない、死にたくない、死にたくない!!
慎也さんと話したいこといっぱいあるんだ。
もっともっともっと……たこモブさんと一緒に……生きたい……。

死にたくないと思いながら死を覚悟していたが……衝撃はいつまで経っても訪れない。落下の感覚はとうに消えている……。

「大丈夫?紅葉……」 

下から声がする……下?
慌てて身体を起こすと俺の身体の下には慎也さんが……下敷きにして俺は助かった?それにしても衝撃が何もなさすぎる……が、

「俺……俺……生きてる」

象猪と対面した時、大鹿の突進を目の前にした時……その時はまだ逃げる手段、回避手段があるのではないかと心の何処かで考えていたのかもしれない。
崖から落とされて、本当に本当の最期を覚悟して死に際に直面した恐怖からじわりと涙が滲みま出してきた。

「生きてるよ……紅葉に怪我がなくて良かった」

慎也さんの身体の上に乗っかったままだった俺の身体を抱きしめ、落ち着かせる様に頭を何度も撫でてくれる大きな手……。

慎也さんにこうして何度助けて貰っただろうか……どれだけ感謝しても足りない。

「慎也さんこそ身体は?巻き込んでごめんなさい」

ぺたぺたと慎也さんの身体を触って身体の具合を確認するが、何処を触っても特に痛がる様子はない。
……あの高さから落ちてきた俺を受け止め下敷きになったんだよな?

あらためて崖の上を見上げて、よく生きていたなと思う。

「こういう時の為に鍛えたから、大丈夫」

鍛えた?ちょっとやそっと鍛えてなんとかなるレベルだろうか?

「家に帰ろう?俺の部屋を用意してくれてるんだよね?超楽しみ」

本当に何のダメージもないように立ち上がって笑う慎也さん……謎だ。異世界で毎日魔物相手にレベル上げをしている俺より強いとは?慎也さんはどんなチートなスキルを貰ったんだろう?

「帰るにしても、この崖を登るのは中々大変そうですね……右か左か……どっちへ周ったら迂回出来るかな……」

「あの木……ちょうど良さそう……」

あの木?
指差された先には崖の上に生えている木が見えるが、ちょうど良さそうとは?

慎也さんの指先が光ったかと思うと、木の枝がスルスルと伸びてきて……伸びてきて、俺と慎也さんの身体に巻き付くと俺達を持ち上げ崖の上へと……。

「上手くいったね」

ストンと着地をして何事も無かった様にただの木に戻る木と事もなげに、にこやかに笑う慎也さん。

「上手くいったねじゃないですよ!!なんですか!?これ!!俺より全然異世界に馴染んでるじゃないですか!!」

「いや、やれるかなぁ?と思ったらなんか出来ちゃったっていうか?」

「出来ちゃったじゃないですよ……俺の助けなんていらないじゃないですか」

むぅ……コツコツ魔物達相手にレベル上げしてきたのが虚しくなる。

「で、でもほら!!俺は農業とか調理とか出来ないし!!それは全然紅葉に敵わないから」

拗ねた態度をとってしまったからか慌てた様にフォローをしてくれるが、慎也さんならそのへんもなんとかしてしまいそうだ。

へそを曲げていても仕方ないし、力作の慎也さんの個室は見てもらいたいので二人で拠点へと向かった。
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