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理解出来ないもどかしさ
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目が覚めて、俺が動き出したら一度は目を覚ますのに今朝は眠りについたままだ……ご飯が出来てから起こせばいいかと朝食の準備に取り掛かった。
「奏もまだ寝てるし……パン焼くとこから作るか」
ヨーグルトを加えて捏ねたパン生地の発酵を待つ間に、チーズを削っておく。メリッサさんから多めに交換してもらったから贅沢に使える。
パン生地を薄く伸ばした真ん中にチーズをたっぷり乗せてパン生地で包んだら、平たくまた伸ばし後はフライパンで焼くだけ。
別のフライパンでソーセージも焼きつつ、果物をカットしてジュースの用意も出来たところで奏に声を掛けた。
「朝食準備出来た」
「うん……すぐ起きる。おはよ……」
まだ眠いのか目をこすりながら体を起こしてテントから出てきてテーブルについて、いただきますといつものお祈りをすませると切り分けていたパンへ手を伸ばした。
「うわっチーズがとろっとろで溢れてる。美味そう……ん~美味しいね」
「毎年知り合いに譲ってもらってるチーズだ。その人のチーズが俺の知る中では最高」
「だねぇ、ミルキーで濃厚だよ。ソーセージもパリッと焼けてて美味しい」
機嫌が悪いのかと思ったがそういうわけでもなさそうだな。
ーーーーーー
「階層が深くなるごとに瘴気が濃くなってきてる気がするな。魔物も毒系ばかりだ」
情報では聞いていたが自らの足で踏み込むのは初めて、目で見てわかるぐらいにモヤがかかっていて空気が重く感じる。このダンジョンで遠距離武器を貰えたのは助かった。毒液を飛ばす魔物が多いので近づかずに倒せるのは汚れなくて楽だ。
「スリングショット便利。この階層まで来ると弓矢じゃ致命傷にはならないからな……奏?」
反応がないのを不思議に思い、振り返るとどこかぼんやりしている。
「大丈夫か?もう少し速度落としてゆっくり進んだほうがいいか?」
「や、ごめん大丈夫。考え事してただけ、他の人もいちゃうしさ……先にボス撃破される前に急いで魔人やっちゃおう」
言葉を発する前に抱き上げられて走り出された。
元々何を考えているのかよく分からなかったけど、今日はさらに分からない。
「何を考えてた?どこか怪しいとこでもあったか?」
「うんん、今度はルカちゃんのマントとか新調したいなって考えてた。猫耳とか兎耳とか付いてたら可愛いなって考えてて……」
「それ付いてたら、魔物の足音とかもっと拾えるようになる?」
「そういう機能付いてたら着てくれるんだ……誰が着るかって怒られるかと思った」
どんなに鍛えても猫獣人や犬獣人たちの聴力には敵わない、彼らはそれに加えて嗅覚も鋭いから索敵という点に置いて敵う事はなかった。
そして急ごうと言った奏の前にダンジョンのボスなど敵でもなく。
数時間後には50階層のボス、ヒュドラの亜種だとは思うが、あっさりと奏に倒されてしまった。
出会い頭に3つの頭から猛毒ガスと石化ガス、呪詛ガスを吐き出されさすがに煙たくて咳き込んでいるうちにボスの首は全て切り落とされて焼け焦げていた。Sランクの冒険者が敵前逃亡をするぐらいの相手なんだけどな……いまさら奏の強さにツッコミもないか。
「50階層が最下層の情報で間違ってなかったみたいだな」
部屋の奥にポッカリと口を開けた魔人部屋への通路。
「みたいだね。魔人もサクッと行っちゃお」
剣を持ったまま魔人部屋へ向かう奏の後を追いかけると、部屋の中ではカマキリの様な大きな鎌の形の腕を持った魔人と奏がすでに対峙していた。
魔人へ向けて剣を構え切りかかっていった奏の体がぐらりとブレて左腕から血が飛び散った。
「え?」
奏があんな怪我を負わされたのを初めて見たかもしれない……そんなにヤバい魔人なのか?でも俺でもその太刀筋を追えるレベルなんだけど……。援護をすべきかと俺も剣を取り出しが、杞憂は杞憂に終わり、魔人の首が地を転がっていった。
「大丈夫か?ハイポーションならこの前のがまだ残ってるが……」
近づくとヘタリと地面に座り込んでしまった奏の腕を掴むと……熱い。
「お前、熱?病気か?」
頬に触れてみると異様な熱さ。
「ちょっとしくっちゃった……これぐらいの怪我はヒールで大丈夫」
左腕の怪我はヒールの魔法で塞がっていくけれど、奏の体の熱は変わらずだ。
熱?風邪?病気……奏が体調を崩すなど考えたことがなかったので頭が混乱する。どうしたらいいのか、普通のポーションは病気や毒には効かない。キュアポーションがあれば回復できるが、俺には必要ないので手持ちにない。
今からダンジョンを抜けて買いに行くか?冒険者を探して分けてもらいに行くか?
座り込んだまま、浅くはぁはぁと呼吸を繰り返す奏の姿に不安を掻き立てられる。
「俺、病気にかかった事なくて、気が付かなくてごめん……どうしたらいい?」
「毒耐性あるから大丈夫と思ったんだけど、やっぱ成分?系統が違うのか耐性つけてる最中みたい。体がだるいなとは思ってたんだけど、さっきのボスのが効いたみたい……ちょっと休めば耐性つくと思う。魔人はもう倒したし、ちょっと休ませてね」
ちょっと休めばというけれど、息も苦しそうだ……どうしたらいいんだろう?何をしたらいい?
瘴気の充満している外へ出るよりもこの魔人部屋にいる方が楽だろうと、とりあえず布団を敷いて奏を寝かせる。
クロードが寝込んでいた時、母さんは何をしていた?
氷水で濡らしたタオルを額に乗せて冷やして、栄養取らなきゃって果物食べさせて粥を作っていたと思う。
氷魔法の弾を壁に打ち込んでできた氷を削った氷水でタオルを濡らして眠る奏の額に乗せてみる、どうだろうか。
「冷たくて気持ちいい……ルカちゃんの手も冷たくなってる……」
合ってたのかな?氷水に突っ込んでいた手が冷えているのが気持ちいいみたいで頬を擦り寄せてきた。
「飯作るから寝てろ……」
しっかり寝るように伝えて、アイテムバッグの中身を確認してみる。確か少しだけどルリスの実も持っていたはず……バッグからルリスの実を取り出すとしっかり洗ってたっぷりの水と共に鍋に入れて釜へかけて煮込んでいる間に奏の様子を見に行くが、まだ顔が赤く呼吸も荒い……どれだけ苦しいのだろうか、経験がないので分からないし、自分にできることもわからず見ているしかできないし不安だけが募るので、鍋へと戻る。
ルリスの実がトロトロに煮込まれ柔らかくなったところへ塩で簡単に味付けをして皿へよそって奏の枕元へ座った。
「飯……食えそうか?」
「食べる」
体を起こした奏の前にスプーンに乗せ息を吹き掛け冷ました粥を差し出す。
「熱いから気をつけて……クリスタルアルミラージュみたいに氷結ブレスが使えたら粥もお前の体も冷ましてやることもできるんだけどな」
「そういうことを素で真面目に言ってるのがルカちゃんだよね」
差し出した粥を口で受け止めて咀嚼した奏の動きがピタリと止まった。
石化?今頃になって石化ブレスが来たのか?
「奏もまだ寝てるし……パン焼くとこから作るか」
ヨーグルトを加えて捏ねたパン生地の発酵を待つ間に、チーズを削っておく。メリッサさんから多めに交換してもらったから贅沢に使える。
パン生地を薄く伸ばした真ん中にチーズをたっぷり乗せてパン生地で包んだら、平たくまた伸ばし後はフライパンで焼くだけ。
別のフライパンでソーセージも焼きつつ、果物をカットしてジュースの用意も出来たところで奏に声を掛けた。
「朝食準備出来た」
「うん……すぐ起きる。おはよ……」
まだ眠いのか目をこすりながら体を起こしてテントから出てきてテーブルについて、いただきますといつものお祈りをすませると切り分けていたパンへ手を伸ばした。
「うわっチーズがとろっとろで溢れてる。美味そう……ん~美味しいね」
「毎年知り合いに譲ってもらってるチーズだ。その人のチーズが俺の知る中では最高」
「だねぇ、ミルキーで濃厚だよ。ソーセージもパリッと焼けてて美味しい」
機嫌が悪いのかと思ったがそういうわけでもなさそうだな。
ーーーーーー
「階層が深くなるごとに瘴気が濃くなってきてる気がするな。魔物も毒系ばかりだ」
情報では聞いていたが自らの足で踏み込むのは初めて、目で見てわかるぐらいにモヤがかかっていて空気が重く感じる。このダンジョンで遠距離武器を貰えたのは助かった。毒液を飛ばす魔物が多いので近づかずに倒せるのは汚れなくて楽だ。
「スリングショット便利。この階層まで来ると弓矢じゃ致命傷にはならないからな……奏?」
反応がないのを不思議に思い、振り返るとどこかぼんやりしている。
「大丈夫か?もう少し速度落としてゆっくり進んだほうがいいか?」
「や、ごめん大丈夫。考え事してただけ、他の人もいちゃうしさ……先にボス撃破される前に急いで魔人やっちゃおう」
言葉を発する前に抱き上げられて走り出された。
元々何を考えているのかよく分からなかったけど、今日はさらに分からない。
「何を考えてた?どこか怪しいとこでもあったか?」
「うんん、今度はルカちゃんのマントとか新調したいなって考えてた。猫耳とか兎耳とか付いてたら可愛いなって考えてて……」
「それ付いてたら、魔物の足音とかもっと拾えるようになる?」
「そういう機能付いてたら着てくれるんだ……誰が着るかって怒られるかと思った」
どんなに鍛えても猫獣人や犬獣人たちの聴力には敵わない、彼らはそれに加えて嗅覚も鋭いから索敵という点に置いて敵う事はなかった。
そして急ごうと言った奏の前にダンジョンのボスなど敵でもなく。
数時間後には50階層のボス、ヒュドラの亜種だとは思うが、あっさりと奏に倒されてしまった。
出会い頭に3つの頭から猛毒ガスと石化ガス、呪詛ガスを吐き出されさすがに煙たくて咳き込んでいるうちにボスの首は全て切り落とされて焼け焦げていた。Sランクの冒険者が敵前逃亡をするぐらいの相手なんだけどな……いまさら奏の強さにツッコミもないか。
「50階層が最下層の情報で間違ってなかったみたいだな」
部屋の奥にポッカリと口を開けた魔人部屋への通路。
「みたいだね。魔人もサクッと行っちゃお」
剣を持ったまま魔人部屋へ向かう奏の後を追いかけると、部屋の中ではカマキリの様な大きな鎌の形の腕を持った魔人と奏がすでに対峙していた。
魔人へ向けて剣を構え切りかかっていった奏の体がぐらりとブレて左腕から血が飛び散った。
「え?」
奏があんな怪我を負わされたのを初めて見たかもしれない……そんなにヤバい魔人なのか?でも俺でもその太刀筋を追えるレベルなんだけど……。援護をすべきかと俺も剣を取り出しが、杞憂は杞憂に終わり、魔人の首が地を転がっていった。
「大丈夫か?ハイポーションならこの前のがまだ残ってるが……」
近づくとヘタリと地面に座り込んでしまった奏の腕を掴むと……熱い。
「お前、熱?病気か?」
頬に触れてみると異様な熱さ。
「ちょっとしくっちゃった……これぐらいの怪我はヒールで大丈夫」
左腕の怪我はヒールの魔法で塞がっていくけれど、奏の体の熱は変わらずだ。
熱?風邪?病気……奏が体調を崩すなど考えたことがなかったので頭が混乱する。どうしたらいいのか、普通のポーションは病気や毒には効かない。キュアポーションがあれば回復できるが、俺には必要ないので手持ちにない。
今からダンジョンを抜けて買いに行くか?冒険者を探して分けてもらいに行くか?
座り込んだまま、浅くはぁはぁと呼吸を繰り返す奏の姿に不安を掻き立てられる。
「俺、病気にかかった事なくて、気が付かなくてごめん……どうしたらいい?」
「毒耐性あるから大丈夫と思ったんだけど、やっぱ成分?系統が違うのか耐性つけてる最中みたい。体がだるいなとは思ってたんだけど、さっきのボスのが効いたみたい……ちょっと休めば耐性つくと思う。魔人はもう倒したし、ちょっと休ませてね」
ちょっと休めばというけれど、息も苦しそうだ……どうしたらいいんだろう?何をしたらいい?
瘴気の充満している外へ出るよりもこの魔人部屋にいる方が楽だろうと、とりあえず布団を敷いて奏を寝かせる。
クロードが寝込んでいた時、母さんは何をしていた?
氷水で濡らしたタオルを額に乗せて冷やして、栄養取らなきゃって果物食べさせて粥を作っていたと思う。
氷魔法の弾を壁に打ち込んでできた氷を削った氷水でタオルを濡らして眠る奏の額に乗せてみる、どうだろうか。
「冷たくて気持ちいい……ルカちゃんの手も冷たくなってる……」
合ってたのかな?氷水に突っ込んでいた手が冷えているのが気持ちいいみたいで頬を擦り寄せてきた。
「飯作るから寝てろ……」
しっかり寝るように伝えて、アイテムバッグの中身を確認してみる。確か少しだけどルリスの実も持っていたはず……バッグからルリスの実を取り出すとしっかり洗ってたっぷりの水と共に鍋に入れて釜へかけて煮込んでいる間に奏の様子を見に行くが、まだ顔が赤く呼吸も荒い……どれだけ苦しいのだろうか、経験がないので分からないし、自分にできることもわからず見ているしかできないし不安だけが募るので、鍋へと戻る。
ルリスの実がトロトロに煮込まれ柔らかくなったところへ塩で簡単に味付けをして皿へよそって奏の枕元へ座った。
「飯……食えそうか?」
「食べる」
体を起こした奏の前にスプーンに乗せ息を吹き掛け冷ました粥を差し出す。
「熱いから気をつけて……クリスタルアルミラージュみたいに氷結ブレスが使えたら粥もお前の体も冷ましてやることもできるんだけどな」
「そういうことを素で真面目に言ってるのがルカちゃんだよね」
差し出した粥を口で受け止めて咀嚼した奏の動きがピタリと止まった。
石化?今頃になって石化ブレスが来たのか?
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