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雪に輝く君
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「スノボとかしたら楽しそうだけど……雪ちょっと少ないし角度がエグいか」
せっかく登ってきた雪山だけど、降ってまた登ってをあと数回繰り返さなければいけない。
スノーボードと呼ばれる板に乗って雪の上を滑って降りれば速いんじゃないかと奏は言ったが、今は雪が少ない季節で所々岩が剥き出しになっている。
「今度雪が多い時に来たらソリでもやろう。ルカちゃんと雪の魔法に掛かりたいな」
手の上にさっきから奏が雪を丸めていた物を乗せられる。大きな雪玉の上に小さな雪玉が乗せられていて……木の実と枝で作った顔がついてる。
「雪だるまだよ?小さい頃とか作って遊ばなかった?雪合戦とかさ」
「雪合戦?」
「雪の玉を投げあって戦う遊び」
「雪玉を……それならやってた。ちょうどいいとこに手ごろな魔物もいたな」
雪だるまとやらを雪の上に降ろしてから、雪を掬って雪玉を握ると雪の中から顔だけ出したスノースライム目掛けて投げつけると巣穴から吹き飛ばされて動かなくなった。
「よし、今日はブル肉ステーキのスライムソースだな」
「『よし』じゃないよ。遊びだって言ったでしょ。砕けてキラキラ輝く雪とルカちゃん……それが見たいのに何で殺傷能力を求めるの……」
「食べないのか?けっこう美味いぞ、スライムソース」
トロみのあるソースが苦手という人もいるから無理強いはしないけど、食べた事が無いのなら食べてみてもらいたい。
スライムの身体から核を取り出すと途端に形を保てなくなってドロッと崩れる身体を容器にしまう。
「ルカちゃんが作ってくれる物ならなんでも食べるよ。ただ、食い気よりちょっとは色気も欲しいなって思った……だけ……」
側に来た奏に顎を指で持ち上げられた……だけなのに、真っ直ぐに視線がぶつかる事なんて今まで何度だってあったのに……何故か眩しい。
「ルカちゃん?本当に大丈夫なの?ボーッとしてておかしいよ」
「奏こそ、おかしい。キラキラして見える……そんなじゃなかった」
「正直なルカちゃん好きだけどね。グサグサ刺さないで……俺けっこう繊細だよ?」
困った様な顔すら輝いて見えるのはやっぱり俺よりコイツがどうした?だと思う。
「ああ……キラキラって事はあれかも?俺、勇者じゃん?勇者らしい事をすれば経験値入るから……ミルボルのダンジョン壊してユルセスの街を救ったって判断なのかも。聖剣もかなり使ったし、勇者レベルが上がったのかもなぁ」
あ、やっぱりコイツがおかしいのか。
勇者レベルって……魔王も怖いけど勇者も怖い。目が合うだけでドキドキさせられるなんて反則だ。
「ルカちゃんには『魔王』のスキル見せることの方が多かったから効かないと思ってたけど、『勇者』の方が比重が大きくなったと思うと嬉しいな。俺の忍耐が報われてきた気がする!!」
「そうか……暫く顔を見せないでくれ」
こんな顔を合わせる度に、ずっとドキドキさせられるなんて心がもたない。多少魔王でいてくれた方が話しやすい。
「そんな悲しい事言わないでよ。俺はずっとルカちゃんだけを見てるのに」
両腕を掴まれ、無理やり顔を向かい合わされる。近い、いや、いつももっと近くにいるんだけどドキドキドキドキ……心臓が痛いぐらい暴れてる。見られている視線から逃げたくなる。
「ルカちゃん大好きだよ」
ふっと微笑まれて、血を吐くかと思った。顔、熱い。頭に血が昇ってきたのかクラクラする。
「あ……ぅ……」
『離せ』と言いたいのにワナワナと震えるだけの口からは言葉を発せられない。手を振り解きたいのに力が入らない。絶対わかってて、自分の『勇者』という職業?のもたらす影響をわかっていて遊んでる。わかっていてそんな甘い声で……甘い言葉で……思考を痺れさせる。
「ルカちゃんは?俺のこと本当に好き?」
「……うん」
奏の視線から逃げるように視線を外すけど、心臓が治まることはない。
むしろ見えないけど感じる視線に心はもっと騒ぎ出していて掴まれている腕から奏の熱を感じていて……。
スッと奏の腕が離れていき、安心してるのに寂しい気持ちが生まれてくる。触らないでほしいと触れていてほしいが常にぐるぐる回っていて、頭を撫でてくれる手に子供扱いするなという反発よりも、嬉しさに自分から頭を掌に押し付けてしまう。
「大丈夫だよ。『勇者』のスキルがレベルアップしたから今は『魅了』状態に近くなってるかもだけど……3日もすれば慣れるっていうか元々の状態には戻ると思う」
「これが『魅了』か……かかってみると怖いスキルだな。奏のことがいつもより好きでたまらないし、顔を見てるだけでドキドキして笑顔向けられたら血を吐いて死にそう」
「俺の方がキュン死しそう……そっかぁ、ルカちゃんが本気で恋するとこんな感じなんだね。スキルの力じゃなくて日常で恋してもらえるように頑張るね」
「頑張らなくていい……毎日毎日こんな押し倒したくなるほど好きとかしんど過ぎ」
「押し倒して!!いくらでも!!」
そう言って雪の上に大の字になった奏。
離れてくれてよかった。奏のことは見ないようにして山を降りる準備を整えた。
「襲ってくれていいのに……むしろルカちゃんから襲われたいよぅ」
「はいはい、日が暮れる前に急ぐぞ」
三日か……ダンジョン着くまでには治っていてくれ!!
せっかく登ってきた雪山だけど、降ってまた登ってをあと数回繰り返さなければいけない。
スノーボードと呼ばれる板に乗って雪の上を滑って降りれば速いんじゃないかと奏は言ったが、今は雪が少ない季節で所々岩が剥き出しになっている。
「今度雪が多い時に来たらソリでもやろう。ルカちゃんと雪の魔法に掛かりたいな」
手の上にさっきから奏が雪を丸めていた物を乗せられる。大きな雪玉の上に小さな雪玉が乗せられていて……木の実と枝で作った顔がついてる。
「雪だるまだよ?小さい頃とか作って遊ばなかった?雪合戦とかさ」
「雪合戦?」
「雪の玉を投げあって戦う遊び」
「雪玉を……それならやってた。ちょうどいいとこに手ごろな魔物もいたな」
雪だるまとやらを雪の上に降ろしてから、雪を掬って雪玉を握ると雪の中から顔だけ出したスノースライム目掛けて投げつけると巣穴から吹き飛ばされて動かなくなった。
「よし、今日はブル肉ステーキのスライムソースだな」
「『よし』じゃないよ。遊びだって言ったでしょ。砕けてキラキラ輝く雪とルカちゃん……それが見たいのに何で殺傷能力を求めるの……」
「食べないのか?けっこう美味いぞ、スライムソース」
トロみのあるソースが苦手という人もいるから無理強いはしないけど、食べた事が無いのなら食べてみてもらいたい。
スライムの身体から核を取り出すと途端に形を保てなくなってドロッと崩れる身体を容器にしまう。
「ルカちゃんが作ってくれる物ならなんでも食べるよ。ただ、食い気よりちょっとは色気も欲しいなって思った……だけ……」
側に来た奏に顎を指で持ち上げられた……だけなのに、真っ直ぐに視線がぶつかる事なんて今まで何度だってあったのに……何故か眩しい。
「ルカちゃん?本当に大丈夫なの?ボーッとしてておかしいよ」
「奏こそ、おかしい。キラキラして見える……そんなじゃなかった」
「正直なルカちゃん好きだけどね。グサグサ刺さないで……俺けっこう繊細だよ?」
困った様な顔すら輝いて見えるのはやっぱり俺よりコイツがどうした?だと思う。
「ああ……キラキラって事はあれかも?俺、勇者じゃん?勇者らしい事をすれば経験値入るから……ミルボルのダンジョン壊してユルセスの街を救ったって判断なのかも。聖剣もかなり使ったし、勇者レベルが上がったのかもなぁ」
あ、やっぱりコイツがおかしいのか。
勇者レベルって……魔王も怖いけど勇者も怖い。目が合うだけでドキドキさせられるなんて反則だ。
「ルカちゃんには『魔王』のスキル見せることの方が多かったから効かないと思ってたけど、『勇者』の方が比重が大きくなったと思うと嬉しいな。俺の忍耐が報われてきた気がする!!」
「そうか……暫く顔を見せないでくれ」
こんな顔を合わせる度に、ずっとドキドキさせられるなんて心がもたない。多少魔王でいてくれた方が話しやすい。
「そんな悲しい事言わないでよ。俺はずっとルカちゃんだけを見てるのに」
両腕を掴まれ、無理やり顔を向かい合わされる。近い、いや、いつももっと近くにいるんだけどドキドキドキドキ……心臓が痛いぐらい暴れてる。見られている視線から逃げたくなる。
「ルカちゃん大好きだよ」
ふっと微笑まれて、血を吐くかと思った。顔、熱い。頭に血が昇ってきたのかクラクラする。
「あ……ぅ……」
『離せ』と言いたいのにワナワナと震えるだけの口からは言葉を発せられない。手を振り解きたいのに力が入らない。絶対わかってて、自分の『勇者』という職業?のもたらす影響をわかっていて遊んでる。わかっていてそんな甘い声で……甘い言葉で……思考を痺れさせる。
「ルカちゃんは?俺のこと本当に好き?」
「……うん」
奏の視線から逃げるように視線を外すけど、心臓が治まることはない。
むしろ見えないけど感じる視線に心はもっと騒ぎ出していて掴まれている腕から奏の熱を感じていて……。
スッと奏の腕が離れていき、安心してるのに寂しい気持ちが生まれてくる。触らないでほしいと触れていてほしいが常にぐるぐる回っていて、頭を撫でてくれる手に子供扱いするなという反発よりも、嬉しさに自分から頭を掌に押し付けてしまう。
「大丈夫だよ。『勇者』のスキルがレベルアップしたから今は『魅了』状態に近くなってるかもだけど……3日もすれば慣れるっていうか元々の状態には戻ると思う」
「これが『魅了』か……かかってみると怖いスキルだな。奏のことがいつもより好きでたまらないし、顔を見てるだけでドキドキして笑顔向けられたら血を吐いて死にそう」
「俺の方がキュン死しそう……そっかぁ、ルカちゃんが本気で恋するとこんな感じなんだね。スキルの力じゃなくて日常で恋してもらえるように頑張るね」
「頑張らなくていい……毎日毎日こんな押し倒したくなるほど好きとかしんど過ぎ」
「押し倒して!!いくらでも!!」
そう言って雪の上に大の字になった奏。
離れてくれてよかった。奏のことは見ないようにして山を降りる準備を整えた。
「襲ってくれていいのに……むしろルカちゃんから襲われたいよぅ」
「はいはい、日が暮れる前に急ぐぞ」
三日か……ダンジョン着くまでには治っていてくれ!!
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