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君の笑顔は無敵の笑顔
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魔法の方はどうだったか聞いてみたけれど、にっこり微笑まれただけだった。
「魔物の数は戻りつつある……けど、
人の気配は無いな……」
猫耳フードを研ぎ澄ませてダンジョン内の音を探るが、人の発する声は一つも無かった。ボスを攻略し魔人を呼び出した者も、その時にダンジョンに居合わせてしまった者も生き残っている者は居なさそうだった。
もう少し早く辿り着けていれば……とも思うが、冒険者にとって死は常に隣り合わせ。こればっかりは自己責任の世界なので冥福を祈るしかない。
「魔人の死体は収納したよ。報知鳥飛ばしたなら、もう帰ろっか」
早々に帰り支度をしている奏だが、一階層しか進んでないので帰るのはかなり楽だ。
ダンジョンに入って何時間も経ってはいない。
先程見たばかりの風景に戻ってくる。
「俺……本当に魔人を倒したんだよな?」
凄い事なのに……凄い事だからこそ実感が湧かない。数十年前に何人もの冒険者や軍隊が総出で掛かって討伐した魔人を俺が一人で……。
「そうだよ。鮮やかだったよね~」
奏の理論で言うと、個人の職業に沿った行動がレベルを上げやすいとの事だった。
『解体』は『狩人』にも『料理人』にも共通する作業だ。奏の手持ちの高レベルの魔物を解体して調理する事で俺のレベルは奏に聞いていた時よりかなり上がっていたのかもしれない。
マジックバッグの整理だとか解体しないと売りにも出せないと言ってちょこちょこ解体を頼まれていたけれど、高レベルの魔物の解体で『狩人』を、高レベルの魔物の素材を調理して『料理人』を、その料理を食べてステータスを増強……。
「食道楽って……俺のレベルを上げる為?」
「ん?いや?そこは単純にルカちゃんの手料理を食べ尽くしたいって願望だけ……結果的にルカちゃん最強になりつつあるけどね」
最強はさすがに無いだろ。奏だって同じ物を食べてるし、ダンジョン破壊や魔人討伐でレベル上がっていってるだろうから、奏最強は覆らないだろう。
「でも……本当に俺が魔人を倒したんだよな?」
「ルカちゃんってば……そんなに嬉しかった?」
「だって今まで全然歯がたたなかったのに……こんなあっさりと……信じられない」
もちろん俺だけの力じゃなくて装備の性能も相まってだろうけれど……その装備を持ってしても敵わなかった相手に勝てたのだ。
「もう奏の足手まといにはならない……か?」
隣を見上げた瞬間に視界が遮られる。
力強い腕に抱き締められて……やっぱり魔人よりこいつが危険だ。骨が軋む。
「もぉっ!!そんな可愛いことばっか言って!!ルカちゃんが俺の足手まといになった事なんて一度もないじゃない!!」
足手まといはともかく、今その味方に殺されそうです。
「あ……ごめん。つい可愛すぎて……」
俺の口の端から血が一筋伝ったところでようやく腕の力を抜いてくれた。内臓をやられたのは筋肉の魔人に捕まった時ぶり……まだまだ強化魔法は未熟な様だ。
「ルカちゃんってばあんまり俺を振り回さないでよ!!」
「俺が……悪いのか?」
ようやく内臓の痛みも引いてきた。
ムカつくので奏の服で吐血を拭ってやった。
「魔人を倒せるようになったし、これからルカちゃんますます強くなっていっちゃうね」
「今回は相手が良かっただけ、物理攻撃が効かない相手ならわからない。スリングショットを撃たせてくれる隙をくれるかなんてわからないから」
今回は『解体』で勝てたわけで、『解体』に関係ないスリングショットの魔法攻撃を上手く扱えるかはわからない。奏の込めてくれた上級魔法はこの世界の魔物になら威力は高過ぎるくらいだが魔人にどこまで効くものか。
「じゃあ今度からは一緒にやろう?」
俺と奏は実力差があり過ぎて戦闘はお互いソロのままだった。共闘っぽい感じでも双子の魔人との戦闘はソロのようなもの。奏が強過ぎて大概の魔人は瞬殺だったから俺がわざわざ手を出す必要がなかった。
「協力しあって敵を倒す。パーティーぽくっていいよね。俄然やる気出てきた!!次のダンジョンへ向かおう!!」
張り切って俺の手を引いて歩き出した奏だが、次の目的地にしていたミルテア国は逆方向だ。
「こっちだ。お前に先導を任せてたら目的地へ辿り着く為に世界一周しそうだな」
ーーーーーー
ミルテア国はナドーワラウス帝国ほどではないけれどそこそこ寒さの厳しい国。
「あ~冷えた体にあったかいスープが染みわたるね。麺はこっちで初めてかも。スープパスタみたいで美味しい」
「初めてだったか?お前には『米』をメインに考えてたからか」
小麦を練って作った生地を薄く伸ばして切るだけ、パンより早くできるから作る機会も多かったと思うのだが、奏に出すのは初めてだったらしい。
「パスタならこの世界でもやっぱり定番はカルボナーラとかミートソース?それともペペロンチーノかな」
「その呪文はわからないけど麺料理も色々かな。こうしていろんな味のスープに入れたりするし、茹でてチーズやレッドマートのソースであえて食べたりもする」
「俺はカルボナーラが一番好きだったな……カルボナーラ……チーズとベーコンと卵?」
料理したことないと言っていたからそれもあやふやな材料だろう。
チーズとベーコンと卵を使う麺料理を考えてみるとパニーヤヤが近いかもしれない。今度作ってみてあってたら、それをベースに奏の思う味に近づけていけたらいい。
「ワウのダンジョンってあとどれぐらい?魔物って強い?」
「強いの基準がどこにあるかわからないけど、弱くはないと思う。メンバーに一人以上B級推奨のダンジョンだからな。最下層はA級以上必要だ。そうだな……あと三日もあれば着くと思う」
「そっか~敵の強さはそこそこってことだよね」
ニヤッと笑った奏の笑顔が不穏だった。
「魔物の数は戻りつつある……けど、
人の気配は無いな……」
猫耳フードを研ぎ澄ませてダンジョン内の音を探るが、人の発する声は一つも無かった。ボスを攻略し魔人を呼び出した者も、その時にダンジョンに居合わせてしまった者も生き残っている者は居なさそうだった。
もう少し早く辿り着けていれば……とも思うが、冒険者にとって死は常に隣り合わせ。こればっかりは自己責任の世界なので冥福を祈るしかない。
「魔人の死体は収納したよ。報知鳥飛ばしたなら、もう帰ろっか」
早々に帰り支度をしている奏だが、一階層しか進んでないので帰るのはかなり楽だ。
ダンジョンに入って何時間も経ってはいない。
先程見たばかりの風景に戻ってくる。
「俺……本当に魔人を倒したんだよな?」
凄い事なのに……凄い事だからこそ実感が湧かない。数十年前に何人もの冒険者や軍隊が総出で掛かって討伐した魔人を俺が一人で……。
「そうだよ。鮮やかだったよね~」
奏の理論で言うと、個人の職業に沿った行動がレベルを上げやすいとの事だった。
『解体』は『狩人』にも『料理人』にも共通する作業だ。奏の手持ちの高レベルの魔物を解体して調理する事で俺のレベルは奏に聞いていた時よりかなり上がっていたのかもしれない。
マジックバッグの整理だとか解体しないと売りにも出せないと言ってちょこちょこ解体を頼まれていたけれど、高レベルの魔物の解体で『狩人』を、高レベルの魔物の素材を調理して『料理人』を、その料理を食べてステータスを増強……。
「食道楽って……俺のレベルを上げる為?」
「ん?いや?そこは単純にルカちゃんの手料理を食べ尽くしたいって願望だけ……結果的にルカちゃん最強になりつつあるけどね」
最強はさすがに無いだろ。奏だって同じ物を食べてるし、ダンジョン破壊や魔人討伐でレベル上がっていってるだろうから、奏最強は覆らないだろう。
「でも……本当に俺が魔人を倒したんだよな?」
「ルカちゃんってば……そんなに嬉しかった?」
「だって今まで全然歯がたたなかったのに……こんなあっさりと……信じられない」
もちろん俺だけの力じゃなくて装備の性能も相まってだろうけれど……その装備を持ってしても敵わなかった相手に勝てたのだ。
「もう奏の足手まといにはならない……か?」
隣を見上げた瞬間に視界が遮られる。
力強い腕に抱き締められて……やっぱり魔人よりこいつが危険だ。骨が軋む。
「もぉっ!!そんな可愛いことばっか言って!!ルカちゃんが俺の足手まといになった事なんて一度もないじゃない!!」
足手まといはともかく、今その味方に殺されそうです。
「あ……ごめん。つい可愛すぎて……」
俺の口の端から血が一筋伝ったところでようやく腕の力を抜いてくれた。内臓をやられたのは筋肉の魔人に捕まった時ぶり……まだまだ強化魔法は未熟な様だ。
「ルカちゃんってばあんまり俺を振り回さないでよ!!」
「俺が……悪いのか?」
ようやく内臓の痛みも引いてきた。
ムカつくので奏の服で吐血を拭ってやった。
「魔人を倒せるようになったし、これからルカちゃんますます強くなっていっちゃうね」
「今回は相手が良かっただけ、物理攻撃が効かない相手ならわからない。スリングショットを撃たせてくれる隙をくれるかなんてわからないから」
今回は『解体』で勝てたわけで、『解体』に関係ないスリングショットの魔法攻撃を上手く扱えるかはわからない。奏の込めてくれた上級魔法はこの世界の魔物になら威力は高過ぎるくらいだが魔人にどこまで効くものか。
「じゃあ今度からは一緒にやろう?」
俺と奏は実力差があり過ぎて戦闘はお互いソロのままだった。共闘っぽい感じでも双子の魔人との戦闘はソロのようなもの。奏が強過ぎて大概の魔人は瞬殺だったから俺がわざわざ手を出す必要がなかった。
「協力しあって敵を倒す。パーティーぽくっていいよね。俄然やる気出てきた!!次のダンジョンへ向かおう!!」
張り切って俺の手を引いて歩き出した奏だが、次の目的地にしていたミルテア国は逆方向だ。
「こっちだ。お前に先導を任せてたら目的地へ辿り着く為に世界一周しそうだな」
ーーーーーー
ミルテア国はナドーワラウス帝国ほどではないけれどそこそこ寒さの厳しい国。
「あ~冷えた体にあったかいスープが染みわたるね。麺はこっちで初めてかも。スープパスタみたいで美味しい」
「初めてだったか?お前には『米』をメインに考えてたからか」
小麦を練って作った生地を薄く伸ばして切るだけ、パンより早くできるから作る機会も多かったと思うのだが、奏に出すのは初めてだったらしい。
「パスタならこの世界でもやっぱり定番はカルボナーラとかミートソース?それともペペロンチーノかな」
「その呪文はわからないけど麺料理も色々かな。こうしていろんな味のスープに入れたりするし、茹でてチーズやレッドマートのソースであえて食べたりもする」
「俺はカルボナーラが一番好きだったな……カルボナーラ……チーズとベーコンと卵?」
料理したことないと言っていたからそれもあやふやな材料だろう。
チーズとベーコンと卵を使う麺料理を考えてみるとパニーヤヤが近いかもしれない。今度作ってみてあってたら、それをベースに奏の思う味に近づけていけたらいい。
「ワウのダンジョンってあとどれぐらい?魔物って強い?」
「強いの基準がどこにあるかわからないけど、弱くはないと思う。メンバーに一人以上B級推奨のダンジョンだからな。最下層はA級以上必要だ。そうだな……あと三日もあれば着くと思う」
「そっか~敵の強さはそこそこってことだよね」
ニヤッと笑った奏の笑顔が不穏だった。
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