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もう迷わない想い
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魔人は倒せた。
それはもうあっさりと……。
奏の宣言通りに『グランドプレス』で動けなくなった魔人を奏が斬り捨てた。
問題は魔人ではなかった。
「どうして……いまさら……」
魔人を倒した後に残ったもの……装飾過多な扉、そして忘れもしない紫色の渦巻く異様な存在感。
「ゲートだね。本当……神ってのはよっぽど暇なんだね」
引かれるような感覚、奏の言葉からもあの日みた……母さんを連れていったものに間違いないだろう。
「どうする?この先がどこに繋がっているかは俺にもわからない。お母さんと同じ世界に行けるかもしれないし全く別の世界かも知れない。お母さんと同じ世界に行けたとしてもここに帰って来られる確証はない」
ゲートについては奏から説明を受けたからわかってる。母さんを見つけて連れて帰ってくることの難しさも理解してる。
「ルカちゃんが行くなら、そこがどんな世界でも俺はついて行くよ?」
ギュッと手を握られた。
…………。
「答えなんてわかってるくせに、いちいち言わせたいのか?」
ゲートが二人で潜れるのか、一緒に潜ったら同じ世界へ行けるのか。それは説明を受けていない奏自身だってそこはわかっていないだろう。昔の俺なら何も考えずに飛び込んでいたと思う。ただ母さんを見つけるためだけに周りは何も見えずに……。
「えへっ愛はいつでも確認しておきたいじゃん」
「うざい…………『お前と離れる可能性があるなら俺は行かない』」
「うっわ。超棒読み」
奏の手を引きながらなるべくゲートから距離を取ったが、まだ体を引かれる感覚が続いている。
このゲートはどうするべきか?このまま離れたら飲み込まれることはないのだろうが、時間経過で自然と消えるものだろうか?放置しておいて同じように苦しむ人を生み出したくはない。
「ルカちゃんさ……ご飯作ってよ」
「は?この状況で?」
どうすべきかと奏を見上げたのだが、全く予想していなかった答えが返ってきた。奏の考えを読もうと思ったけれど何もわからなかった。単純にお腹が空いたという事……も、こいつならあり得る。
「まぁまぁ、俺を信じてよ。前に解体したファルシュフェニックスの素材と世界樹の素材を使って何か作れそうにないかな?」
食材指定とは珍しい。何かを企んでるのはわかるけど何を企んでいるのかわからないが、言い出したら聞かないので言われた通りにファルシュフェニックスの素材と世界樹の素材を取り出して並べてみた。
何かと言われてもな……。
じっと見る、しっかり見る……無難に串焼きとか葉で包んで包み焼き?うーん……うん?
あれ?何かが頭を掠めた。掴もうとしたらスッと消えてしまったけど。
「きっかけが必要かな?確か釜も持ってたはず……あぁ、あったあった」
奏が取り出したのは大きな鍋?いや、釜と言っていたか。料理するのにはもったいないような彫刻が施されている。差し出されたそれを反射的に受け取った瞬間に頭の中に津波が押し寄せた。
鑑定眼鏡をかけた時の様な知識の奔流、グラグラと回る視界に目眩を起こして倒れた体を奏に支えられた。
「見えた?」
「……見えた。何これ?」
釜に触れた途端、これも呪われたアイテムだったのか?文字の羅列が頭の中を駆け抜けていった。
「レベル100超えたら良いスキルとか恩恵が大きいって言ったでしょ?料理人が錬金術師へ派生するとは思わなかったけど、材料を組み合わせて作り出すって点では似てるのか?お父さんは魔導具師の天才だし、才能も関係してるのかな」
「錬金術っ!?魔法使えない俺にそんなこと……」
「魔力がゼロとは言ってないでしょ?実際身体強化は使えてるんだし。爆発力はないけど少しづつ魔力をこめていく事にかけてはルカちゃんこそ無尽蔵でしょ?」
確かに小さな灯火を永遠と照らし続けることができると前に言われたけれども……。
「無理やり魔法を使ってもらって解放の条件もクリアできたしね。ほら、早く錬金してみて?ファルシュフェニックスの素材と世界樹の素材で出来るもの。今のルカちゃんなら作り方がわかるでしょ?」
「わかるけど……そこまでわかってるなら奏だってできるんじゃないのか?」
「知識と実践は別。物質の加工や合成は出来ても錬金術は俺には使えないよ」
錬金釜に触れたことで錬金術に関わる知識を一方的に頭に流し込まれたわけだけど、何気なく渡されたこの錬金釜も名前は『神秘の錬金釜』とかいう仰々しい名前だった。
「奏が取り出すものはいちいち神話級」
「まあゲームで言えば一回完クリした様なもんだからしょうがない?強くてニューゲームだよね」
奏の言っていることはよく理解できなかったけれど、魔王を倒すほどの冒険をしてきたからというような内容だろうか。召喚されて数年間、勇者として特訓されて過酷な旅をしてきたと言っていた。そんな旅なら神話級の秘宝を持っていても当然と言いたいのだろう。当然かも知れないけど、この世界とその世界とじゃ全ての桁が違うんだよね。
初めての錬金術でこんなものを作らせようとか、初心者に厳しすぎるだろう。借りた錬金釜の中に世界樹の葉とファルシュフェニックスの羽を入れて水を注い釜に魔力を注いでいく……ゆっくり少しづつ注いでいく。
ゆっくりと錬金釜の中で素材が混ざり合っていくのを想像して……ボンッと錬金釜の中から軽い爆発音がして、釜の中には金色の液体の入った小瓶が残った……小瓶は一体どこから?
「奏……一応作ったけど、鑑定できないからできてるかは自信ない」
「ん~……大丈夫!!しっかりできてるよ。錬金レベルが低いから品質も狙い通り『下』だ」
品質まで狙っていたのか……しかし、ちゃんとレシピ通りにできたのだとしたら、こんなけったいな薬を何に使う気だろう。
「何に使う気なんだ?『蘇生薬』なんて……」
「ゲートを吹き飛ばしても良いんだけど、何が起こるかわからないから出来れば通常通りに閉じて欲しいんだよね。生物が一度潜れば消えるはずだからさ……」
そういうと奏は真っ二つにされた魔人の上半身を掴み上げた。
それはもうあっさりと……。
奏の宣言通りに『グランドプレス』で動けなくなった魔人を奏が斬り捨てた。
問題は魔人ではなかった。
「どうして……いまさら……」
魔人を倒した後に残ったもの……装飾過多な扉、そして忘れもしない紫色の渦巻く異様な存在感。
「ゲートだね。本当……神ってのはよっぽど暇なんだね」
引かれるような感覚、奏の言葉からもあの日みた……母さんを連れていったものに間違いないだろう。
「どうする?この先がどこに繋がっているかは俺にもわからない。お母さんと同じ世界に行けるかもしれないし全く別の世界かも知れない。お母さんと同じ世界に行けたとしてもここに帰って来られる確証はない」
ゲートについては奏から説明を受けたからわかってる。母さんを見つけて連れて帰ってくることの難しさも理解してる。
「ルカちゃんが行くなら、そこがどんな世界でも俺はついて行くよ?」
ギュッと手を握られた。
…………。
「答えなんてわかってるくせに、いちいち言わせたいのか?」
ゲートが二人で潜れるのか、一緒に潜ったら同じ世界へ行けるのか。それは説明を受けていない奏自身だってそこはわかっていないだろう。昔の俺なら何も考えずに飛び込んでいたと思う。ただ母さんを見つけるためだけに周りは何も見えずに……。
「えへっ愛はいつでも確認しておきたいじゃん」
「うざい…………『お前と離れる可能性があるなら俺は行かない』」
「うっわ。超棒読み」
奏の手を引きながらなるべくゲートから距離を取ったが、まだ体を引かれる感覚が続いている。
このゲートはどうするべきか?このまま離れたら飲み込まれることはないのだろうが、時間経過で自然と消えるものだろうか?放置しておいて同じように苦しむ人を生み出したくはない。
「ルカちゃんさ……ご飯作ってよ」
「は?この状況で?」
どうすべきかと奏を見上げたのだが、全く予想していなかった答えが返ってきた。奏の考えを読もうと思ったけれど何もわからなかった。単純にお腹が空いたという事……も、こいつならあり得る。
「まぁまぁ、俺を信じてよ。前に解体したファルシュフェニックスの素材と世界樹の素材を使って何か作れそうにないかな?」
食材指定とは珍しい。何かを企んでるのはわかるけど何を企んでいるのかわからないが、言い出したら聞かないので言われた通りにファルシュフェニックスの素材と世界樹の素材を取り出して並べてみた。
何かと言われてもな……。
じっと見る、しっかり見る……無難に串焼きとか葉で包んで包み焼き?うーん……うん?
あれ?何かが頭を掠めた。掴もうとしたらスッと消えてしまったけど。
「きっかけが必要かな?確か釜も持ってたはず……あぁ、あったあった」
奏が取り出したのは大きな鍋?いや、釜と言っていたか。料理するのにはもったいないような彫刻が施されている。差し出されたそれを反射的に受け取った瞬間に頭の中に津波が押し寄せた。
鑑定眼鏡をかけた時の様な知識の奔流、グラグラと回る視界に目眩を起こして倒れた体を奏に支えられた。
「見えた?」
「……見えた。何これ?」
釜に触れた途端、これも呪われたアイテムだったのか?文字の羅列が頭の中を駆け抜けていった。
「レベル100超えたら良いスキルとか恩恵が大きいって言ったでしょ?料理人が錬金術師へ派生するとは思わなかったけど、材料を組み合わせて作り出すって点では似てるのか?お父さんは魔導具師の天才だし、才能も関係してるのかな」
「錬金術っ!?魔法使えない俺にそんなこと……」
「魔力がゼロとは言ってないでしょ?実際身体強化は使えてるんだし。爆発力はないけど少しづつ魔力をこめていく事にかけてはルカちゃんこそ無尽蔵でしょ?」
確かに小さな灯火を永遠と照らし続けることができると前に言われたけれども……。
「無理やり魔法を使ってもらって解放の条件もクリアできたしね。ほら、早く錬金してみて?ファルシュフェニックスの素材と世界樹の素材で出来るもの。今のルカちゃんなら作り方がわかるでしょ?」
「わかるけど……そこまでわかってるなら奏だってできるんじゃないのか?」
「知識と実践は別。物質の加工や合成は出来ても錬金術は俺には使えないよ」
錬金釜に触れたことで錬金術に関わる知識を一方的に頭に流し込まれたわけだけど、何気なく渡されたこの錬金釜も名前は『神秘の錬金釜』とかいう仰々しい名前だった。
「奏が取り出すものはいちいち神話級」
「まあゲームで言えば一回完クリした様なもんだからしょうがない?強くてニューゲームだよね」
奏の言っていることはよく理解できなかったけれど、魔王を倒すほどの冒険をしてきたからというような内容だろうか。召喚されて数年間、勇者として特訓されて過酷な旅をしてきたと言っていた。そんな旅なら神話級の秘宝を持っていても当然と言いたいのだろう。当然かも知れないけど、この世界とその世界とじゃ全ての桁が違うんだよね。
初めての錬金術でこんなものを作らせようとか、初心者に厳しすぎるだろう。借りた錬金釜の中に世界樹の葉とファルシュフェニックスの羽を入れて水を注い釜に魔力を注いでいく……ゆっくり少しづつ注いでいく。
ゆっくりと錬金釜の中で素材が混ざり合っていくのを想像して……ボンッと錬金釜の中から軽い爆発音がして、釜の中には金色の液体の入った小瓶が残った……小瓶は一体どこから?
「奏……一応作ったけど、鑑定できないからできてるかは自信ない」
「ん~……大丈夫!!しっかりできてるよ。錬金レベルが低いから品質も狙い通り『下』だ」
品質まで狙っていたのか……しかし、ちゃんとレシピ通りにできたのだとしたら、こんなけったいな薬を何に使う気だろう。
「何に使う気なんだ?『蘇生薬』なんて……」
「ゲートを吹き飛ばしても良いんだけど、何が起こるかわからないから出来れば通常通りに閉じて欲しいんだよね。生物が一度潜れば消えるはずだからさ……」
そういうと奏は真っ二つにされた魔人の上半身を掴み上げた。
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