同じ地獄で眠りたい

佐藤シオ

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七日間と少し

七日間と少し 四

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 ぼんやりと温かいベッドの中で一週間の出来事を追ってみると、今までの十九年を清算してまだ余りあるほど幸福な一週間だったと思う。

 危険を感じて飛び起きることなく朝まで眠れて、食事はいつも温かく、家事だって少しずつ慣れてきた。

 傷が増えることはないし、むしろロバートが丁寧に治療してくれるおかげで日に日に良くなっている。

 どこか夢見心地な一週間はゆるりと過ぎていった。

 空を見上げるのはいつぶりか、柔らかいパンをこんなに食べるのはいつぶりか、暖炉の火をのんびりながめるのはいつぶりか、いちいち考えていたらキリがないほどの幸福に満ちている。

 一日の中に生まれた大きな空白は私の頭まで空っぽにするにはぴったりで、留守を任されている間の半分は何もせず暖かいリビングで起きているのか寝ているのかわからない時間を過ごした。

 ようやく自分が人間に戻れた気がした。久々の自由というものは心地好い。

 ――ただ一つ問題があるとしたら、この一週間ロバートのベッドで眠ることを余儀なくされていることくらいだろうか。

 重い腕を少し持ち上げて寝返りを打つ。目を閉じて頬の緩んだ彼の顔は普段よりずっと幼く見える。

 そもそも未だに年齢を知らないことを思い出して右目の下のホクロをつつくが、反応は何もない。ベッドに入ると赤子も顔負けのスピードですんなり眠ってしまう彼は、ちょっとやそっと悪戯したくらいでは起きないらしいのだ。

 私の部屋になるという空き部屋には基本的な家具が揃っていた。しかしさすがに数年放置されたシーツや枕などの寝具をそのまま使わせるわけにはいかないと、この一週間、彼は私を『抱いて』眠っている。

 まるで小さい子どもがぬいぐるみに抱きつくように、すっぽりと長い腕の中に閉じ込めて安定した寝息を立てていた。

 警戒心がないのか、私の細い腕では首を絞められないと慢心しているのか。自分以外の体温が心地好いのかもしれない。それは私も一緒で、背中に温もりを感じながらベッドに入るのは好きだ。

 とはいえ、これはこの一週間で最大の収穫と言える。――彼は寝起きが悪い。

 悪いどころじゃない。最悪だ。

 彼をほったらかして腕の中から逃げても気づかないし、ここぞとばかりに彼の体を観察しても触ってみても少し唸るだけ。

 いくらなんでも無防備すぎじゃないかと思うが、この弱みを握ることができたのはきっといつか役に立つ。

 こんな様子だから彼を朝起こすことも私の業務の一つなのだが、今のところはこれが一番苦労する仕事だ。
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