同じ地獄で眠りたい

佐藤シオ

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七日間と少し

七日間と少し 十

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 諦めずにペンを走らせるうち、いつの間にかかなりの時間が経っていたらしい。

 鍵を差し込む音に気がついて時計を見ると、最後に時計を見た時間から数時間後の時間を指している。

 眠ってしまったわけではないし確かにその数時間分の記憶はあるのだが、物事に没頭するとはこういった感覚なのか。時の流れが急に速くなったような、そんな感じだ。

「おかえりなさい。お荷物、お預かりします」
「ただいま。見た目ほど重くないから大丈夫だよ」

 見てる側が薄ら寒くなるほどに、非の打ち所のない善人といった風な笑顔だ。

 しかしそれは扉を閉めた瞬間に溶けていき、その下からはいつもの表情が覗く。

 どちらも本性を上手く隠していて気味が悪いが、こちらの方が素に近いと知っているだけにまだ良く思えた。

「重くないなら私が持っても問題ないでしょう?」

 靴紐を解いて両手を差し出すと、観念したように大きな包みを渡してくれた。確かに見た目ほどの重量はないが、ずっしりとしていてかさばる。

「口が上手いな、お前は。いい女だ」
「それはどうも」

 ルームシューズに履き替えて自室へ向かう彼の後を追い、自分の不在中に何をしていたか尋ねる声に応える。それは質問という形を取りつつも嘘か誠かは気にしていない、不思議なコミュニケーションだった。

 一度試しに外へ出たと答えたこともあったが、怪我はしていないかと聞かれただけだ。もしかしたら嘘だと気づいていたのかもしれない。

「その中にはシーツと枕と布団が入ってる。全部お前のものだ。毛布は俺の部屋に余っているのがあるからそれを使え。他に足りないものに気がついたら言え」
「わかった。この後のご予定は?」
「特にない。勉強したいなら付き合ってやれるぞ」
「じゃあお願い。下で待ってるから」

 コートを脱ぎながら部屋に入っていく彼の背中を見送って自室へ入る。

 テーブルの上で包みを解いてみると確かにきっちり畳まれた寝具と大きな枕が入っていた。

 真っ白で触り心地の良いそれらは私の気分を高揚させ、ベッドメイクを済ませてしまおうかという気を起こさせたが、彼に直接勉強を教わることのできるうちに教わっておこうと思い直して部屋を出た。
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