同じ地獄で眠りたい

佐藤シオ

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七日間と少し

七日間と少し 十二

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 彼は特に訝しむ様子もなく、私を室内へ招き入れてくれる。

 光源は彼が持つランタンの火の明かりただ一つで、彼が寝る前は電気を早めに消していたことを思い出す。もしかして、昼間みたいに明るかったところから急に眠ろうとしたから、体が上手くついていかなかったのだろうか。

「もう寝るところだった?」
「まぁな。後はベッドに潜り込めば完璧だ」

 ぎりぎり間に合ったことに安堵しつつ、彼の手からランタンを掠め取ってベッドのすぐ傍に置いた。

 何をしているのかと私の様子を伺いながらこちらに歩いてくるところを、飛び込むように抱きすくめる。

 布の奥にある分厚い筋肉を感じながら、背骨をなぞって、締まった腰を緩くくすぐり、二人の体を密着させた。

「……抱いて。いいでしょう?」

 彼にだけ届けるように呟いた言葉は重く床に落ちて消えていく。

 一週間前に言われた言葉が不安材料ではあったものの、目に見えて私の汚れは落ちてきている。匂いだってマシになったはずだ。

 長く沈黙に押し潰されそうな時間を過ごした後に、彼は焦れったいほどにゆっくり私の腰をなぞりながら抱き寄せた。

 腹に熱を帯び始めている雄が当たり、髪をかき分けた指先にうなじをなぞられて、私は勝利を確信する。

「そんなにいじらしく誘われちゃ堪らない」

 耳に甘ったるく湿った声が忍び込む。それを合図にどちらともなくベッドに倒れ込み、互いの体を貪り始めた。

 ベッドの中で擦り合わせる体は娼館のときよりも密着して熱く、初めて彼は私の体にキスを落とした。

 口にはしなかったが、うなじや背中、首など、あらゆるところを唇で撫でては恍惚とした表情で私を見下ろす。彼のお眼鏡に適う体にはなれたらしい。

 相変わらず彼との行為は気持ちよく、体を幸せな疲労感に沈ませてくれる。

 一週間を共に過ごしただけなのに驚くほど素直に体を委ねられるようになってしまったことは癪だが、今後も仕事に組み込まれた行為を続けられそうなことはありがたい。それも、私も楽しめる形で。

 全てが終わった頃、ぐったりと今にも眠りに落ちてしまいそうな体を温かいタオルで拭われ、昨日と全く同じように背後から腕に囲われる。

 あんなに元気だった彼は私の頭頂にキスをしてすぐに安定した寝息を立て始め、私もそれからほどなくして静かに眠りについた。

 どうしても寝つけず毛布の匂いに誘われるようにロバートに抱かれに行く、その行動を私はそれからも幾度となく繰り返した。

 彼の方から私を抱きたがる頻度には波があって、一週間に何度も誘われることもあったし二週間か三週間何もないこともある。そういうとき、胸の奥がざわめいて眠れなくなる私は自分から彼を尋ねた。

 それが性欲ではなく寂しさからくるものだと知ったのは、ずっとずっと後のことだった。
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