復讐のために生贄になった筈が、獣人王に狂愛された

彩月野生

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33最期まで傍にいてほしい

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 家屋の周囲には結界が張られているようだが、いつまでもこの場所にはいられないと判断した。
 フリオは、サビーノと共に早々に出て行く事を決めた。
 ジョエルには何度も止められたが、顔を出したサンビアにジョエルを頼み、早朝、出立した。

 とはいえ、どこに行こうか。
 サビーノと住んでいた小屋には戻れない。大国は自分たちが生きている可能性を捨ててはいない筈だ。

 隣に並んで歩いているサビーノを見やると、笑い返されて頬を緩める。
 穏やかなサビーノが見れるのは嬉しい。
 見つかるのを避ける為、厚手のローブを頭から被って貰っているので、ただでさえ毛で覆われた身体が熱くて、気持ち悪くないか聞いてみると顔を振る。

「いや。オマエがそうしろと言うなら、これでいい」
「でもな」
「目立たないように行動する必要があるのはわかっている。フリオの好きなようにしろ」
「……ありがとう」

 そっと手を伸ばして節くれ立った獣の手を握る。
 この手にはなんども性的になぶられたものだが、同時に優しさを与えてくれた。
 恐怖も嫌悪ももうない。
 
 それから、あてもなく旅を続けた。
 幸い大国の追っ手も見当たらず、祖国を脱出できた。

 隣国の領土に裏の手を使ってうまく入り込めたのは僥倖だった。
 この国の広大な森には、エルフ達がいる筈。
 彼らに知恵をもらいたいと考え、フリオはサビーノに声をかけて、森へと向かった。

 エルフ達はフリオ達を温かく迎えてくれて、これからどうするべきか、相談に乗ってくれた。
 エルフ達は水晶で守られたこの森の奥に、大木と葉で作った広大な屋敷を住処にしており、その一室にて長と向かいあう。
 詳しい事情を説明せずとも、長はすでに理解しており、二人で静かに過ごせる場所をこの森に作ってくれるというのだ。
 
 非常にありがたい話だったが、彼らに危険が及ばないか心配の旨を口にすると、優しい笑みで問題ないと頷いてくれた。

 屋敷の奥の部屋で待っていたサビーノに、ここに住むと告げると、嬉しそうに尻尾を振って抱きついてきた。

「うわ?」
「オマエと共にいれるなら、構わん」
「お、おい、はしゃぎすぎだ」

 呆れながらも嬉しいのはフリオも一緒なので、サビーノの背中に腕を回すと、顔を上げてつま先立ちをして頬に口づける。
 サビーノが腕に力を入れて、さらに強くフリオを抱きしめるので笑ってしまった。

 ――実は、長の話でサビーノに伝えていない事実がある。

 だが、それは自然の摂理ともいえるので、あえて口に出す必要はないと考えた。
 
 ――俺は、サビーノと最期まで一緒に過ごせればいいんだ。

 人狼と人間の寿命には大きな差がある。
 記憶を失ったままのサビーノを残していくのは避けたかったが、未来なんて考えたってどうなるか分からないのだ。

 与えられた部屋の窓からは、月明かりに照らされる木々が見える。
 大きな寝台に身をよせあって眠っていると、四肢の火照りがおさえきれず、つい甘えるように頬をすり寄せてしまうと、大きな獣の掌が引き寄せてくれて、するりと衣服を剥ぎ取っていった。

 荒い呼吸を繰り返し、肌を這う大きくてごつごつとした獣の手を感じるだけで、中心が熱を持つ。
 長い舌で頬、首元、胸元、そして性器をちゅぶちゅぶと嘗められしゃぶられて、快感に追い詰められて吐精する。
 早く中にイれて欲しいとねだると、いきりたつ剛直を奥に突き入れて、ぐちゃぐちゃにかき回してくれた。
 激しい動きにあわせてフリオの肉体がサビーノの膝の上で踊る。
 二人が繋がった部分が、卑猥な音を立てて一つになっている事実を示す。

 ――あつい……きもちいい……。
 
「サビーノお、愛してる」
「フリオ、我もだ……」
「ああ……サビーノ……!」

 体の奥に吐き出される熱を受け止め、全身を震わせながらもう一度絶頂を迎えて、脱力して、幸福に満たされて頬を緩めた。

 ずっとこうしていたい。

 熱を解放し、落ち着いた頃、ふいにサビーノがフリオの頬を撫でて、額をくっつけてきた。

「どうした?」
「……何故、隠す?」
「なんの話だ?」

 その言葉にぎくりとする。
 サビーノの穏やかな赤い目は、全てを見透かしているかのようだ。
 唾を飲み込むのが聞こえてしまっただろうか。

 サビーノは長い息を吐き出すと、フリオをきつく抱きしめて囁いた。

「もう、長くないのだろう」

 フリオは息を飲むと、ゆっくりと言葉を告げる。

「長くないといっても……後十年は生きる」
「それにしたって、我の寿命からすれば短い」
「……サビーノ」

 獣の勘なのか、能力なのか……サビーノはフリオの身に起こっている異変を察知したようだ。
 エルフの長の話によれば、呪術を施した胎の副作用らしい。
 おそらくマリユスも理解してはいなかったのだろう。
 わざと、あの呪術師がマリユスに言わなかったのかもしれないが……。
 
 フリオは苦笑して、サビーノの頬を撫でた。

「俺の、願いをきいてくれるか」

 そう呟くと、サビーノは赤い瞳を湖面のように揺らして、頷いてくれた。
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