バツイチになりましたが、元彼とヨリは戻しません

鳴宮鶉子

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親友と結婚したい男

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「ウワァーー、出たっ!!」

「り、凛花ちゃん、酷いな、その扱い!!」

成城石田で買い物をしていたら、いきなり肩を叩かれ、振り返ると、相葉社長がいた。

「また、ワインのツマミになるような食材ばかり入れて、毎日女2人で呑みまくってるんでしょっ……」

伽音ちゃんから頼まれた、アトランティックサーモンの柵とホタテ、生ハムに豚肉の薄切り肉、アボカドと玉ねぎとアスパラが籠に入ってる。
それを見て、相葉社長は溜息を打つ。

否定はできない。
土日の夜は、伽音ちゃんの夜中のリモート会議がないから、おうち女子会をする。
請け負ってる仕事の納期間近だと、飲まずにご馳走食べるだけだけど、リフレッシュタイムで食事を楽しんでる。

「……頼翔くんに塩分が多い酒のつまみばかり食べさせてない?」

「食べさせてるわけないでしょ。伽音ちゃん、料理が上手だからちゃんと作ってるよ。頼翔くん、8時には寝ちゃうから、だから毎日6時前に栄養満点ご飯食べてる。お家飲み会は頼翔くんが寝てからで、伽音ちゃんは、ちゃんと子育てをしてるよ!!」

頼翔くんが自分の子だと勘づいてる相葉社長。
だから、頼翔くんの食生活が心配なんだろう。

「……相葉社長、頼翔くんが自分の子だという根拠はあるんですか?伽音ちゃんが他の男性と関係持って、それでできたのかもしれないじゃないですか!!」

伽音ちゃんが相葉社長に会ったら、そう、シラを切ると言ってた。
相葉社長が頼翔くんの父親だという証拠は、コンパの夜に関係を持ったという事だけ。


「証拠、あるよ!ーーこれ、見て!!」

相葉社長が長財布から折り畳んだ紙切れを出し、広げて見せてきた。

“私的DNA型父子鑑定書”で、“義父は子供の生物学上の父親と判定できる”と書かれていた。
データのところに、父親:相葉将生、子:香坂頼翔と書かれてある。

「コピー、30部取ってあるから、これいる?伽音ちゃんに見せる?」

「ーー見せられるわけないでしょ!!」

「だよね……さすがにこれはキツイよね。俺、伽音ちゃんに嫌われてるし。嫌われるような事した覚えないんだけどな」

伽音ちゃんが嫌う理由は、馴れ馴れしいから。
人気インフルエンサーを口説き落とし、kittyに所属させたコミュニケーション能力は、伽音ちゃんには効かない。
インフルエンサーに対しては、動画編集技術の高さとフットワークの軽さ、斬新的なアイデアを持っていて提案力が剛を制したのもあるかもしれない。

「……ねぇ、伽音ちゃんと瀬川翔真、付き合ってるの?」

切なそうな表情を浮かべ、相葉社長が私に聞いてきた。

「……付き合ってないよ。仕事でしか絡んでないし、恋人には程遠い関係だよ」

翔真と伽音ちゃんをくっつけたいと思ってるけど、伽音ちゃんがその気がないから、ならない。

「ーー良かった。俺、避けられてるから、今動かない方がいいから、瀬川翔真に伽音ちゃん取られないか気が気じゃなかった。俺が頼翔くんの父親だとあんな写真と手紙、渡しちゃったし」

相葉社長は伽音ちゃんにあの手紙を渡した事を後悔しているようだった。

「相葉社長、……なんで、コンパの夜に、酔いつぶれてる伽音ちゃんを犯したんですか!?」

相葉社長に、率直に聞いてみた。
いくら、“ちゃら”のファンで大好きだからと、初対面の本人の未成年の伽音ちゃんを抱く行為は、犯罪だ。
しかも、伽音ちゃんは、お酒を飲んで判断力がなく、記憶が残らないぐらいに泥酔してた。

チャンスだと思って、本能のままに伽音ちゃんを抱いたのなら、人としてどうかと思う。失望する。

「まさか伽音ちゃんが、あの日の記憶を失ってるとは思わなかった。あの夜に伽音ちゃんを抱いたのは同意の上で、無理矢理ではなかった。信じて貰えないかもしれないけど、伽音ちゃんを抱いたのは、“ちゃら”だからじゃない。ホテルのBARで飲んでて、そこに伽音ちゃんが来て、お互いが一目惚れで一夜を共にしたと思ってる」

成城石田の鮮魚コーナーの前。
周りに人はいないけれど、聞かれたらまずい内容だから、相葉社長は私に近づき、耳元で小声で話す。

外見は超絶にカッコいいから、思わず、ドキッとしてしまった。

さすがにこれ以上、この話を続けられないと思った相葉社長は、仕事があるからと、颯爽に去って行った。



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