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第弐拾肆話
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暗闇の中を真っ直ぐ進む。
何もないということが、いろいろな感覚を曖昧にし可怪しくさせる。
それでも佳朗は泣き声を頼りに進んだ。
随分と遠くにいるんだな。
距離など分からないのに、佳朗はそう感じていた。
ふと前方をよく見やれば、僅かに何かが見える。小さな白い何かだ。
佳朗は早歩きになった。
何か、じゃない。
気がついた時には駆け出していた。
「子どもだ……!」
走って、走って、遠いけれど、それでも何かが押すというよりも、何かに手繰り寄せられるように、前へと進んだ。
佳朗は走りながら心のどこかで、月隠が自分を此処につれてきたんだと思った。
姿がはっきり見えてくる。
たしかに子どもだった。
十歳も満たない印象の子で、白い髪に、暗い色の着物のようなものを着ている。
たった一人泣いていた。
佳朗は駆け寄り、彼の前に膝をついた。
「大丈夫?」
突然現れた佳朗に、その子どもは大層驚き顔を上げて目を瞠った。
その子の色は、佳朗に月隠を思い出させたが、それにしては様相があまりにも違いすぎる。
月白の髪は短く乱雑に切られ、全く手入れされていないのも見て分かる。服は子供用作務衣のようだが、サイズは合っていなくて、ほうぼうが汚れ擦り切れていた。肌は色白というより青白く、ところどころに痣や擦り傷のようなものが見られた。それに、随分と痩せている。
佳朗は痛ましさに胸が詰まった。
「だぁれ?」
震える声に、佳朗は更に苦しくなった。
見上げられて分かったが、顔にも痣や傷がある。特に左頬が腫れているのが見て取れた。これは自分より強いものに打たれたものだと、佳朗は思った。可愛らしい顔をしているが、子ども特有のまろみはなく、表情は暗い。
開かれた双眸は、やや青みがかった黒で、不安に揺れていた。僅かに、本当に僅かにだが青の遊色がキラリとする。けれどその小さな煌めきを呑んでしまうくらい、その瞳は暗かった。
佳朗は、小さな手を両手で包んだ。驚くほど小さく細く、冷たい手だった。
「俺は、よ、し、あ、き、だよ」
「ヨシ……アキ……?」
「そう、よしあき。きみは?」
「……サク……ヤ」
「サクヤ、くん?」
佳朗が名を呼べは、サクヤと名乗った子ども――佳朗には少年なのか少女なのか判別がつかなかった――は頷いた。
「サクヤくんは、ずっとここにいたの?」
「うん……ボクはずっと、此処にいる」
再び頷いたサクヤだったが、更に言葉を続けた。
「ヨシアキがいるのは……何処? 此処じゃない、何処にいるの?」
サクヤの言う意味が分からず、佳朗は混乱する。此処とはどこか、ここじゃない? 同じところにいないというのか。まして、自分がいるところだって皆目見当がつかない。
月隠が何故ここにつれてきたのか。
それすらも、佳朗には微塵も分からなかった。
佳朗は、一つ、はっきりと深呼吸をした。
どんな理由など関係ない。
何も見失ってはいけない。
自分も、この子も。
「……サクヤくんは、ずっとそこにいるの?」
慌てず、一つ一つ聞いていく。
うんとサクヤは頷いた。
「一人なのかな?」
ううんとサクヤは首を振った。
「クロといっしょ」
それを聞いてひとまず安心する。ただ、クロとはどういう人物だろうか。もしかしたらペットかもしれない。そういう雰囲気もある呼び名だった。
「二人でいるんだね」
念を押すように確認すれば、サクヤはまた一つ首肯した。
「そこで何をしているの」
「かくれてる」
「だれから?」
「イヤな人から」
僅かに顔が歪んだことに、佳朗は気がついた。
佳朗が判断するに、サクヤはクロとともに、二人を害する存在から逃げ隠れしているという状況のようだ。おそらくこの怪我をさせた、もしくは怪我をする状況に追い込んだのも、その人物だろう。ならばクロという存在も怪我をしている恐れがある。
佳朗は、サクヤに尋ねた。
「今いるところについて、教えてくれる?」
「ヤシキの……ハナレにいる」
屋敷の離れ。
それが一体何処にあるのか。
佳朗には皆目見当がつかない。
「嫌な人は何人?」
「ふたり」
「守ってくれる人はいないの?」
「今はいない。だいじなオヤクメがあるっていって、もうだいぶ会ってない」
何となく見えて来た。
サクヤは、離れのあるような屋敷に住んでいて、保護者の不在に伴い、悪意のある人物に追い詰められているという可能性がでてきた。もちろん佳朗の憶測だが、一つ一つを繋ぎ合わせるとこうなると考えられた。
悔しさにぐっと歯噛みした。
今二人がいるこの場所も、サクヤがいる場所も分からない。わかっているのは、サクヤがいる場所は危険があるということ。
それが本当なら、一緒にここを出ようと誘うのは無駄ということだ。出られる可能性はあるが、出た先が同じとは限らない。もし同じ場所を願って叶ったとしても、そのクロという子がどうなってしまうかも想像がつかない。
「俺が助けたいって言ったら、信じて待っててくれる?」
心から声が漏れ出た。
手がかりもないのに? と自問するが、何故か月隠の導きなのだから、できることのはずという自信のほうが勝った。
佳朗は、じっとサクヤを見た。
返答を待つ。
「むり、ヨシアキにはできない」
「やってみないと分からないよ」
「だめ、シンヨウニアタイしない」
子どもには難しい言葉選びだった。
何となくだが、サクヤの育った環境が垣間見れた気がした。
佳朗は、サクヤの瞳を見つめながら、努めて優しく尋ねた。
「どうしたら信じてもらえるかな?」
「大人は信じない」
苦い言葉だった。
「俺も、まだ大人じゃないよ」
「大きいのに、大人じゃないの?」
「そう。大きくてもまだ大人じゃない人もいるんだ。俺は頑張って大人になろうと思っているけどね」
少しわざとらしいかもしれないが、頑張って笑みを作ってみせた。佳朗の笑みを見て、サクヤの視線が少し泳いだ。
「じゃあ、指切りをしよう」
「ユビキリ……?」
「約束する時のおまじない」
「お呪い……」
おまじないと口にしたサクヤの焦点が、ばしりと佳朗に合った。
その中に青い遊色がキラリと舞った。
「おまじないなら、信じてくれる?」
「うん、呪いなら信じる」
サクヤは、しかと首肯する。
佳朗もこくりと頷き返して、右手の小指を差し出した。
「小指を絡めて、約束をするんだ」
「やくそく……」
「俺、佳朗は、サクヤくんを必ず助けます」
佳朗の宣言を受けて、サクヤはそろりそろりと小指を絡めた。
「うん……約束……」
「指切りげんまん、嘘ついたら……」
「嘘ついたら……?」
「ん? でもこれって、約束を守ったらどうするかは決めないよね」
「分からない、そういうものなの?」
佳朗は空いている手を顎に当てて、ひとしきり考えた。
「そうだ、両方決めよう」
「両方……?」
何となくだが、名案だと思った。
だって、絶対に助けるんだから、嘘ついた時のことなんて、重要じゃない。
大事なのは助けた後だ。
「守れたら……」
「守れたら……?」
佳朗の言葉を繰り返しながら、サクヤは不思議そうに首を傾げている。
素直で可愛らしい子だと、佳朗は思った。
こんな子が苦しんでいるのは認められない。絶対に助けるし、元気になってもらいたい。
「美味しいご飯を、一緒に食べよう!」
佳朗はにっと笑った。
――久々に他のものと食事をともにしたが、良いものだな。
佳朗の脳裏には、あの穏やかな笑みが浮かんでいた。
「うん……、食べる……」
サクヤは、少しはにかんだように、こくりと頷いた。
「クロも一緒?」
「もちろん!」
「わかった」
佳朗が元気に答えれば、僅かに笑ってくれた。
そして、サクヤは一つ目を閉じた。
開かれた瞳を見て、佳朗はぞくりとした。
この感覚は覚えがあった。
表情は静かなものになっており、声は変わらないが口調はゆったりとしたものに変わっていた。
「では、守れなかったら」
幼い声に似合わぬその調べに、佳朗はごくりと喉を鳴らした。背の中程をつうと汗が垂れていく。口をぐっと引き締めた後、一度瞬いた。
「守れなかったら、サクヤくんの好きにしていいよ」
指切りのような曖昧なものではなく、けれどただ相手の望むままに。
佳朗はそう望んだ。
守らないなどないのだから。
「うん」
清廉で崇高な何かは鳴りを潜め、可愛らしい返事が聞こえた。
表情はまた年相応の幼いものに戻っており、僅かに笑みを浮かべて言った。
「約束」
この子のことは何一つ分からないが、とても大きな物を背負って、難しい立場にいるのだと、佳朗は確かに理解した。
瑞樹が永原でなくなったように。
世界が今までの世界と変わってしまったように。
この子の世界も、どこかで何かの拍子に変わってしまったのだろう。
もしかしたら、最初から佳朗とは違う世界なのかも知れない。
憶測はたくさんできるが、どれも全部関係ない。
――きみやみんなのお陰で、私はまだ人でいられるんだ。
あの時、瑞樹はそう言ってくれた。
それがこの子にも、少しでも分けてあげられるなら。
徒人の佳朗だからできることがあるはず。
佳朗は、両腕でサクヤを優しく抱きしめた。
冷たくて、細くて、小さなサクヤを。
「絶対に約束は守るからね」
サクヤに伝えるように。
自分に戒めるように。
佳朗は、この小さな月魄に誓った。
腕の中で、ふるりと震えたサクヤは、小さく「ヨシアキは温かいね」と囁いて、柔らかく微笑んだ。
何もないということが、いろいろな感覚を曖昧にし可怪しくさせる。
それでも佳朗は泣き声を頼りに進んだ。
随分と遠くにいるんだな。
距離など分からないのに、佳朗はそう感じていた。
ふと前方をよく見やれば、僅かに何かが見える。小さな白い何かだ。
佳朗は早歩きになった。
何か、じゃない。
気がついた時には駆け出していた。
「子どもだ……!」
走って、走って、遠いけれど、それでも何かが押すというよりも、何かに手繰り寄せられるように、前へと進んだ。
佳朗は走りながら心のどこかで、月隠が自分を此処につれてきたんだと思った。
姿がはっきり見えてくる。
たしかに子どもだった。
十歳も満たない印象の子で、白い髪に、暗い色の着物のようなものを着ている。
たった一人泣いていた。
佳朗は駆け寄り、彼の前に膝をついた。
「大丈夫?」
突然現れた佳朗に、その子どもは大層驚き顔を上げて目を瞠った。
その子の色は、佳朗に月隠を思い出させたが、それにしては様相があまりにも違いすぎる。
月白の髪は短く乱雑に切られ、全く手入れされていないのも見て分かる。服は子供用作務衣のようだが、サイズは合っていなくて、ほうぼうが汚れ擦り切れていた。肌は色白というより青白く、ところどころに痣や擦り傷のようなものが見られた。それに、随分と痩せている。
佳朗は痛ましさに胸が詰まった。
「だぁれ?」
震える声に、佳朗は更に苦しくなった。
見上げられて分かったが、顔にも痣や傷がある。特に左頬が腫れているのが見て取れた。これは自分より強いものに打たれたものだと、佳朗は思った。可愛らしい顔をしているが、子ども特有のまろみはなく、表情は暗い。
開かれた双眸は、やや青みがかった黒で、不安に揺れていた。僅かに、本当に僅かにだが青の遊色がキラリとする。けれどその小さな煌めきを呑んでしまうくらい、その瞳は暗かった。
佳朗は、小さな手を両手で包んだ。驚くほど小さく細く、冷たい手だった。
「俺は、よ、し、あ、き、だよ」
「ヨシ……アキ……?」
「そう、よしあき。きみは?」
「……サク……ヤ」
「サクヤ、くん?」
佳朗が名を呼べは、サクヤと名乗った子ども――佳朗には少年なのか少女なのか判別がつかなかった――は頷いた。
「サクヤくんは、ずっとここにいたの?」
「うん……ボクはずっと、此処にいる」
再び頷いたサクヤだったが、更に言葉を続けた。
「ヨシアキがいるのは……何処? 此処じゃない、何処にいるの?」
サクヤの言う意味が分からず、佳朗は混乱する。此処とはどこか、ここじゃない? 同じところにいないというのか。まして、自分がいるところだって皆目見当がつかない。
月隠が何故ここにつれてきたのか。
それすらも、佳朗には微塵も分からなかった。
佳朗は、一つ、はっきりと深呼吸をした。
どんな理由など関係ない。
何も見失ってはいけない。
自分も、この子も。
「……サクヤくんは、ずっとそこにいるの?」
慌てず、一つ一つ聞いていく。
うんとサクヤは頷いた。
「一人なのかな?」
ううんとサクヤは首を振った。
「クロといっしょ」
それを聞いてひとまず安心する。ただ、クロとはどういう人物だろうか。もしかしたらペットかもしれない。そういう雰囲気もある呼び名だった。
「二人でいるんだね」
念を押すように確認すれば、サクヤはまた一つ首肯した。
「そこで何をしているの」
「かくれてる」
「だれから?」
「イヤな人から」
僅かに顔が歪んだことに、佳朗は気がついた。
佳朗が判断するに、サクヤはクロとともに、二人を害する存在から逃げ隠れしているという状況のようだ。おそらくこの怪我をさせた、もしくは怪我をする状況に追い込んだのも、その人物だろう。ならばクロという存在も怪我をしている恐れがある。
佳朗は、サクヤに尋ねた。
「今いるところについて、教えてくれる?」
「ヤシキの……ハナレにいる」
屋敷の離れ。
それが一体何処にあるのか。
佳朗には皆目見当がつかない。
「嫌な人は何人?」
「ふたり」
「守ってくれる人はいないの?」
「今はいない。だいじなオヤクメがあるっていって、もうだいぶ会ってない」
何となく見えて来た。
サクヤは、離れのあるような屋敷に住んでいて、保護者の不在に伴い、悪意のある人物に追い詰められているという可能性がでてきた。もちろん佳朗の憶測だが、一つ一つを繋ぎ合わせるとこうなると考えられた。
悔しさにぐっと歯噛みした。
今二人がいるこの場所も、サクヤがいる場所も分からない。わかっているのは、サクヤがいる場所は危険があるということ。
それが本当なら、一緒にここを出ようと誘うのは無駄ということだ。出られる可能性はあるが、出た先が同じとは限らない。もし同じ場所を願って叶ったとしても、そのクロという子がどうなってしまうかも想像がつかない。
「俺が助けたいって言ったら、信じて待っててくれる?」
心から声が漏れ出た。
手がかりもないのに? と自問するが、何故か月隠の導きなのだから、できることのはずという自信のほうが勝った。
佳朗は、じっとサクヤを見た。
返答を待つ。
「むり、ヨシアキにはできない」
「やってみないと分からないよ」
「だめ、シンヨウニアタイしない」
子どもには難しい言葉選びだった。
何となくだが、サクヤの育った環境が垣間見れた気がした。
佳朗は、サクヤの瞳を見つめながら、努めて優しく尋ねた。
「どうしたら信じてもらえるかな?」
「大人は信じない」
苦い言葉だった。
「俺も、まだ大人じゃないよ」
「大きいのに、大人じゃないの?」
「そう。大きくてもまだ大人じゃない人もいるんだ。俺は頑張って大人になろうと思っているけどね」
少しわざとらしいかもしれないが、頑張って笑みを作ってみせた。佳朗の笑みを見て、サクヤの視線が少し泳いだ。
「じゃあ、指切りをしよう」
「ユビキリ……?」
「約束する時のおまじない」
「お呪い……」
おまじないと口にしたサクヤの焦点が、ばしりと佳朗に合った。
その中に青い遊色がキラリと舞った。
「おまじないなら、信じてくれる?」
「うん、呪いなら信じる」
サクヤは、しかと首肯する。
佳朗もこくりと頷き返して、右手の小指を差し出した。
「小指を絡めて、約束をするんだ」
「やくそく……」
「俺、佳朗は、サクヤくんを必ず助けます」
佳朗の宣言を受けて、サクヤはそろりそろりと小指を絡めた。
「うん……約束……」
「指切りげんまん、嘘ついたら……」
「嘘ついたら……?」
「ん? でもこれって、約束を守ったらどうするかは決めないよね」
「分からない、そういうものなの?」
佳朗は空いている手を顎に当てて、ひとしきり考えた。
「そうだ、両方決めよう」
「両方……?」
何となくだが、名案だと思った。
だって、絶対に助けるんだから、嘘ついた時のことなんて、重要じゃない。
大事なのは助けた後だ。
「守れたら……」
「守れたら……?」
佳朗の言葉を繰り返しながら、サクヤは不思議そうに首を傾げている。
素直で可愛らしい子だと、佳朗は思った。
こんな子が苦しんでいるのは認められない。絶対に助けるし、元気になってもらいたい。
「美味しいご飯を、一緒に食べよう!」
佳朗はにっと笑った。
――久々に他のものと食事をともにしたが、良いものだな。
佳朗の脳裏には、あの穏やかな笑みが浮かんでいた。
「うん……、食べる……」
サクヤは、少しはにかんだように、こくりと頷いた。
「クロも一緒?」
「もちろん!」
「わかった」
佳朗が元気に答えれば、僅かに笑ってくれた。
そして、サクヤは一つ目を閉じた。
開かれた瞳を見て、佳朗はぞくりとした。
この感覚は覚えがあった。
表情は静かなものになっており、声は変わらないが口調はゆったりとしたものに変わっていた。
「では、守れなかったら」
幼い声に似合わぬその調べに、佳朗はごくりと喉を鳴らした。背の中程をつうと汗が垂れていく。口をぐっと引き締めた後、一度瞬いた。
「守れなかったら、サクヤくんの好きにしていいよ」
指切りのような曖昧なものではなく、けれどただ相手の望むままに。
佳朗はそう望んだ。
守らないなどないのだから。
「うん」
清廉で崇高な何かは鳴りを潜め、可愛らしい返事が聞こえた。
表情はまた年相応の幼いものに戻っており、僅かに笑みを浮かべて言った。
「約束」
この子のことは何一つ分からないが、とても大きな物を背負って、難しい立場にいるのだと、佳朗は確かに理解した。
瑞樹が永原でなくなったように。
世界が今までの世界と変わってしまったように。
この子の世界も、どこかで何かの拍子に変わってしまったのだろう。
もしかしたら、最初から佳朗とは違う世界なのかも知れない。
憶測はたくさんできるが、どれも全部関係ない。
――きみやみんなのお陰で、私はまだ人でいられるんだ。
あの時、瑞樹はそう言ってくれた。
それがこの子にも、少しでも分けてあげられるなら。
徒人の佳朗だからできることがあるはず。
佳朗は、両腕でサクヤを優しく抱きしめた。
冷たくて、細くて、小さなサクヤを。
「絶対に約束は守るからね」
サクヤに伝えるように。
自分に戒めるように。
佳朗は、この小さな月魄に誓った。
腕の中で、ふるりと震えたサクヤは、小さく「ヨシアキは温かいね」と囁いて、柔らかく微笑んだ。
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