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第三章
6 路上に響く破裂音
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身軽なサリアは部屋の窓から飛び降りる。
俺は階段を下りて玄関から外へ。
敵に遭遇した場合は適宜倒すこと。
二手に分かれて、外で合流する。
万が一合流できなかった場合は、アラカステル地区の南に位置するキュチェ鉄橋で待ち合わせ。
そのままアラカステルを出る寸法だ。
アラカステルから真っ直ぐ南下すれば、ペリュシェスを囲むペリュー山脈が、そしてそれを越えればペリュシェスがある。
世界の中心にして、かつて精霊幻都市のあった場所。
そしてその遺跡が残る場所。
――俺たちの目指す場所。
俺は宿屋の玄関から外へと勢いよく飛び出した。
剣を構えていた男が、咄嗟に剣を握り直すのがわかった。
でも遅い。
俺はその手首を思い切り蹴り上げた。
吹っ飛んだ剣が宙を舞う。
脇の上がった男の懐に素早く入りこみ、腕を掴んでこいつの仲間が立っている場所へと投げ飛ばした。
避ける間もなく、仲間の下敷きになった男が呻いている。
それを尻目に、俺は駆け出した。
建物に沿って走り、左に曲がれば俺たちの部屋の下に出る。
角を曲がろうとしたところで、こちらに向かってきた人影とぶつかりそうになり、慌てて半身になってかわした。
相手は俺よりもでかい図体の男だった。
髪を短く刈り、鋭い目で俺を捕らえる。
男は即座に反応して、短剣で俺に斬りかかってきた。
とっさに顔を傾けて避けると、耳のすぐ傍を刃先がかすめた。
その腕を絡めとリ、捻りあげる。
短剣が軽い音を立てて落ちた。
そのまま男を地面に押し倒し、背中を膝で押さえつける。
「何が目的だ?」
捻りあげる手に力を込めた。
力加減次第で、このまま脱臼させることもできる。
「力を借りたい」
男が低く呻くように言う。
「協力を仰ごうっていう態度には見えなかった」
「大人しくしてもらわなければ、話ができないからな」
「残念だけれど、俺にはどうでもいいことに関わってる暇はないんだ。悪いな。俺たちはすぐにアラカステルを発つ。もう用はないはずだ。放っておいてくれ」
言い終えるなり、俺は手に力を入れた。
手ごたえがあり、男の右腕がだらりと落ちる。
関節を外されたのに、男は声のひとつも上げず、荒い息を繰り返しているだけだった。
「また襲われるのは御免だからな」
「クルス!」
サリアが姿を現し、俺は立ち上がった。
「サリア、そっちはどうだ?」
「大丈夫」
『わたしがついているのです。怪我をさせるような無様はいたしません』
アスィの、心外だ、とでも言いだそうな声が聞こえた。
それは結構なことだ。
「よし、行こう」
念のため近くに落ちていた短剣を遠くに蹴り飛ばしてから、サリアの傍に駆け寄る。
「クルス、怪我はない?」
「ああ」
『さっさと行こう。応援が来たら厄介だ。気絶してる奴が目を覚ますかもしれないしな』
ツァルが言ったその時、破裂音が響いた。
反射的に、体が動く。
俺はサリアを抱えこむようにして、地面に倒れこんだ。
俺は階段を下りて玄関から外へ。
敵に遭遇した場合は適宜倒すこと。
二手に分かれて、外で合流する。
万が一合流できなかった場合は、アラカステル地区の南に位置するキュチェ鉄橋で待ち合わせ。
そのままアラカステルを出る寸法だ。
アラカステルから真っ直ぐ南下すれば、ペリュシェスを囲むペリュー山脈が、そしてそれを越えればペリュシェスがある。
世界の中心にして、かつて精霊幻都市のあった場所。
そしてその遺跡が残る場所。
――俺たちの目指す場所。
俺は宿屋の玄関から外へと勢いよく飛び出した。
剣を構えていた男が、咄嗟に剣を握り直すのがわかった。
でも遅い。
俺はその手首を思い切り蹴り上げた。
吹っ飛んだ剣が宙を舞う。
脇の上がった男の懐に素早く入りこみ、腕を掴んでこいつの仲間が立っている場所へと投げ飛ばした。
避ける間もなく、仲間の下敷きになった男が呻いている。
それを尻目に、俺は駆け出した。
建物に沿って走り、左に曲がれば俺たちの部屋の下に出る。
角を曲がろうとしたところで、こちらに向かってきた人影とぶつかりそうになり、慌てて半身になってかわした。
相手は俺よりもでかい図体の男だった。
髪を短く刈り、鋭い目で俺を捕らえる。
男は即座に反応して、短剣で俺に斬りかかってきた。
とっさに顔を傾けて避けると、耳のすぐ傍を刃先がかすめた。
その腕を絡めとリ、捻りあげる。
短剣が軽い音を立てて落ちた。
そのまま男を地面に押し倒し、背中を膝で押さえつける。
「何が目的だ?」
捻りあげる手に力を込めた。
力加減次第で、このまま脱臼させることもできる。
「力を借りたい」
男が低く呻くように言う。
「協力を仰ごうっていう態度には見えなかった」
「大人しくしてもらわなければ、話ができないからな」
「残念だけれど、俺にはどうでもいいことに関わってる暇はないんだ。悪いな。俺たちはすぐにアラカステルを発つ。もう用はないはずだ。放っておいてくれ」
言い終えるなり、俺は手に力を入れた。
手ごたえがあり、男の右腕がだらりと落ちる。
関節を外されたのに、男は声のひとつも上げず、荒い息を繰り返しているだけだった。
「また襲われるのは御免だからな」
「クルス!」
サリアが姿を現し、俺は立ち上がった。
「サリア、そっちはどうだ?」
「大丈夫」
『わたしがついているのです。怪我をさせるような無様はいたしません』
アスィの、心外だ、とでも言いだそうな声が聞こえた。
それは結構なことだ。
「よし、行こう」
念のため近くに落ちていた短剣を遠くに蹴り飛ばしてから、サリアの傍に駆け寄る。
「クルス、怪我はない?」
「ああ」
『さっさと行こう。応援が来たら厄介だ。気絶してる奴が目を覚ますかもしれないしな』
ツァルが言ったその時、破裂音が響いた。
反射的に、体が動く。
俺はサリアを抱えこむようにして、地面に倒れこんだ。
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