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【第五部 異世界転移奇譚 NAYUTA 2 - アトランダム -(RENJI 5)】もしもしっくすないんしてる途中で異世界転移しちゃったら。
第154話
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生きるということは何だろう。
ナユタは、そばに横たわるピノアを見つめながら考えていた。
意識を失っていた。
夢を見ているのか、こんな状況だというのに幸せそうな寝顔で寝息を立て、よだれを垂らしていた。
ピノアならばレンジたちをクラウジャに喰われる前の状態にまで戻せる。
自ら魔人となったリサや、リサに魔人にされたレンジを元のただの人間に戻すことができる。
だが、それはクラウジャという存在をなかったことにしてしまう。
喰人も、すべてを喰らう者も、また命だ。
レンジの身体を乗っ取り、その魂を喰らったあの男は、リサを喰らいステラを喰らい、アトランダムの皇帝すらも喰らった。
あの男は、人に代わり食物連鎖の頂点に立ち、世界の王となろうとしている。
そのためにリサやステラに自分の子を産ませようとしている。
それは、あの男にとっては、種の保存という、生物としての当たり前の本能だ。
人は、食物連鎖の頂点に立ち、世界の王として、喰らうためだけに家畜を育てている。
あの男は人を滅ぼしはしないだろう。
食糧として、絶滅しないよう、一定量の数を保つよう繁殖させながら、喰らい続けるつもりだろう。
あの男がしようとしていることを否定することは、人の歴史を否定することではないのか?
すべての生命は、自ら生を望んでうまれてきたわけではない。
産み出されたにすぎない。
人以外は種の保存という本能にただ従っているだけだ。
だが、人は本能よりもエゴで子を残す。
ナユタの父も母もそのような人ではなかったが、世間体のために子を残す親はいまだにごまんといる。
身勝手な理由で産み出した命は、親のステータスのひとつとなりえ、一度ステータスにされた命はさらに優良なものになるように教育され、身勝手な理由で失敗作の烙印を捺される。
叔母のミカナの恋人である大和ショウゴがかつてそうだったと聞いたことがあった。
この世界にエーテルが存在しなければ、あの男は産まれることがなかった。
すべてを喰らう者も。
これは仕方がないことなのではないか?
いや、違う。
これがリバーステラで起きたことならば仕方がないことだろう。
だが、ここはテラだ。
エーテルを産み出したのは叔母のミカナだ。
そして、精霊たちがテラと一体化し、一度その存在を失わせたエーテルや魔法を復活させたのはナユタだ。
ミカナもナユタもこの世界の人間ではない。
リバーステラという別の世界で産まれた存在が、この世界を滅茶苦茶にした。
テラでさえ、リバーステラに産まれた存在が身勝手な理由で産み出したもうひとつの地球だ。
仕方がない、ですまされることではない。
止めなければいけない。
人は中途半端に頭が良いために自分が存在する理由を考えてしまう。
だから理由を見失うと、何もかもがどうでもよくなってしまったり、自ら死を選んでしまったりする。
自分が今ここにいることには確かに理由がある。
その理由を全うするだけの力もまだある。
クラウジャが自分の肉体のオリジナルを喰らい不老不死となればテラは終わる。リバーステラも、まだ見ぬビハインドテラという世界さえも、すべての地球が終わる。
「ピノアちゃん、ぼく、行くね」
ナユタは神器を再び身にまとった。
「あの人が行った場所。ぼくの身体のオリジナルがある場所に」
神器がゲートを開いてくれた。
「ぼくは帰れないかもしれないけれど、レンジさんやリサさんやステラさんは、必ずピノアちゃんの元に帰すから」
ナユタは、そばに横たわるピノアを見つめながら考えていた。
意識を失っていた。
夢を見ているのか、こんな状況だというのに幸せそうな寝顔で寝息を立て、よだれを垂らしていた。
ピノアならばレンジたちをクラウジャに喰われる前の状態にまで戻せる。
自ら魔人となったリサや、リサに魔人にされたレンジを元のただの人間に戻すことができる。
だが、それはクラウジャという存在をなかったことにしてしまう。
喰人も、すべてを喰らう者も、また命だ。
レンジの身体を乗っ取り、その魂を喰らったあの男は、リサを喰らいステラを喰らい、アトランダムの皇帝すらも喰らった。
あの男は、人に代わり食物連鎖の頂点に立ち、世界の王となろうとしている。
そのためにリサやステラに自分の子を産ませようとしている。
それは、あの男にとっては、種の保存という、生物としての当たり前の本能だ。
人は、食物連鎖の頂点に立ち、世界の王として、喰らうためだけに家畜を育てている。
あの男は人を滅ぼしはしないだろう。
食糧として、絶滅しないよう、一定量の数を保つよう繁殖させながら、喰らい続けるつもりだろう。
あの男がしようとしていることを否定することは、人の歴史を否定することではないのか?
すべての生命は、自ら生を望んでうまれてきたわけではない。
産み出されたにすぎない。
人以外は種の保存という本能にただ従っているだけだ。
だが、人は本能よりもエゴで子を残す。
ナユタの父も母もそのような人ではなかったが、世間体のために子を残す親はいまだにごまんといる。
身勝手な理由で産み出した命は、親のステータスのひとつとなりえ、一度ステータスにされた命はさらに優良なものになるように教育され、身勝手な理由で失敗作の烙印を捺される。
叔母のミカナの恋人である大和ショウゴがかつてそうだったと聞いたことがあった。
この世界にエーテルが存在しなければ、あの男は産まれることがなかった。
すべてを喰らう者も。
これは仕方がないことなのではないか?
いや、違う。
これがリバーステラで起きたことならば仕方がないことだろう。
だが、ここはテラだ。
エーテルを産み出したのは叔母のミカナだ。
そして、精霊たちがテラと一体化し、一度その存在を失わせたエーテルや魔法を復活させたのはナユタだ。
ミカナもナユタもこの世界の人間ではない。
リバーステラという別の世界で産まれた存在が、この世界を滅茶苦茶にした。
テラでさえ、リバーステラに産まれた存在が身勝手な理由で産み出したもうひとつの地球だ。
仕方がない、ですまされることではない。
止めなければいけない。
人は中途半端に頭が良いために自分が存在する理由を考えてしまう。
だから理由を見失うと、何もかもがどうでもよくなってしまったり、自ら死を選んでしまったりする。
自分が今ここにいることには確かに理由がある。
その理由を全うするだけの力もまだある。
クラウジャが自分の肉体のオリジナルを喰らい不老不死となればテラは終わる。リバーステラも、まだ見ぬビハインドテラという世界さえも、すべての地球が終わる。
「ピノアちゃん、ぼく、行くね」
ナユタは神器を再び身にまとった。
「あの人が行った場所。ぼくの身体のオリジナルがある場所に」
神器がゲートを開いてくれた。
「ぼくは帰れないかもしれないけれど、レンジさんやリサさんやステラさんは、必ずピノアちゃんの元に帰すから」
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