16少年漂流記 〜クラス男子全員で漂流した異世界の浜辺で俺達なりたくもない冒険者になりました〜

かの

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第3章 ミラーレ姫とクラーケン

3-2 ミラーレ姫

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 じぃさんが何かの呪文を唱えると、じぃさんの隣りに、大きな鏡が現れた。

「姫君も一度、お前達に会ってみたいと、言い出したんじゃ。何と言っても、顔面偏差値952ptのクラスじゃからの。じゃが、姫君のおられる王都とここは、500キロ以上離れておるんじゃ。簡単には来れんし、行けん」

「は? じぃさんは昼飯にティータイムで、二回も行ったり来たりしてんだろ? 500キロって! じぃさん、嘘付きなのか?」

 ミラーレ姫には興味ないだろうけど、それまで黙っていたカイトが口を開いた。

「何を言っておる。わしは魔導師の中でも、王室お抱え、トップクラスの魔導師じゃ。たかだか500キロの距離を瞬間移動するなんて事は屁でもないわい!」

 カイトはそれ以上、何も言わなかった。じぃさんを突っ込んだところで、能力を自慢され、じぃさんの崇拝者を増やすだけだ。

「カイトのせいで、話が逸れたがの。ミラーレ姫の準備が整えば、この鏡にお映りになられる。……この鏡は今、王宮と繋がっておるからの」

 姫君になんか全く興味はないけど、今、一番レベルが高いのは俺だ。もしかしたら本当に婿入りさせられるかもしれない。

 顔くらいは見ておこう。 

 コタロウ達はさっき以上に前のめりだ。何だか生唾を飲み込む音が聞こえそうだ。それにライトやソラ達も、無視は出来ない存在に、鏡に目を向けている。

 目を向けた大きな鏡一面が、黄色で覆いつくされる。

「姫君よ。もう少し、お下がりください。それでは、ドレスしか映ませんよ」

 じぃさんの声は、王宮にも届いているんだろう。黄色のドレスが鏡の幅に収まって、少しずつ小さくなっていく……、ん? ドレス全体、首から下が映っているけど、何だかサイズ感がおかしい。

「姫君よ。もう少し、お下がりいただかないと、麗しいお顔が拝見出来ません」 

 その時だ。

「ひぃーーー!」

 じぃさんのすぐ近くにいたリョウが、奇声を発して卒倒した。パタン。椅子に座ったまま、リョウが後ろに倒れる。

「何だ! この、ブ◯で、デ◯のバ◯ァ! 早く姫君出せよ!」

 コタロウが叫んだ。

 確かにコタロウが言うように、鏡に映る姿は、事前に聞かされた情報とは、違いすぎる。国で一番の美女はどこだ? 正にブ◯で、デ◯のバ◯ァだ。

「何を言う。わらわがアシュナイト王国、第一姫君のミラーレであるぞ」

「いやー、どこが? 国で一番の美女って聞いてたんですけど? 何? 何? ブ◯で、デ◯のバ◯ァじゃないですかー」

 フウマは壊れたようだった。

「期待はしてなかったけど、これは酷いな。ブ◯で、デ◯のバ◯ァとしか、言いようがない」
「ああ、誰がこんなブ◯で、デ◯のバ◯ァに婿入りすんだよ。あり得ねぇ」

 タイガとリクも、前のめりだったはずが、今はのけぞっていり。

「ないわー、絶対ない!」
「無理、無理、無理、絶対無理!」

 シュウトとルイも全否定だ。

「お前達、この姫の美しさが分からんのか?」

「じぃさん、それマジで言ってる? ブ◯で、デ◯でバ◯ァじゃん!」

 ショウがキレていた。ショウも姫君に前のめりになった一人だから、仕方ない。

「何を言う。ミラーレ様はこの国一番の美女じゃ! お体もナイスプロポーションではないか! 148センチの身長に、体重は110キロ! こんなにグラマーなお方は、この国にはおらんぞ! お年も39歳で今が女盛りじゃ!」

 じぃさんの感覚がおかしいのか、この国の感覚がおかしいのかは分からない。でも、一つ言える事は、俺達の世界では、ブ◯で、デ◯でバ◯ァって事だ。

「なぁ、じぃさん。目が腐るから、そのブ◯で、デ◯のバ◯ァ、さっさと消してくれよ!」

「そうだ! そうだ! カイトの言う通りだ」

 皆んながカイトに加勢を始めた。

 ん? 今、気づいてしまったけど。姫君を狙っていたコタロウ達が、狙わなくなったら。一番、婿入りに近いのは、俺だ。……最悪だ。最悪過ぎる。
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