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第三章 孫を追いかけ北を目指す旅で御座います。
3-2 王都目指して出発で御座います。
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「探偵さんよぅ。もう用は済んだのかい?」
「ええ。光江さんのギルド証と報酬を受け取ったので、これで町を出ます」
「ほぅ、そうかい、そうかい。それで何処へ行くんだ? 町を出てから」
そうでした。探偵さんにお任せしておけば、間違いはないのですが、この後どこへ向かうか聞いておりませんでした。
「王宮のある王都、ライネルスへ向かいましょう。このパノスの町でも少し噂は耳にしましたが、やはりこの国の片田舎では噂も曖昧です。ここはこの国の中心に向かうのが一番かと」
「そうですね。異世界から集められた若者が王宮の護衛隊になったなんて噂もあったんでしょ?」
「何だ? その護衛隊に雷人もいるんじゃろか?」
「いえ、分かりません。ですが、このパノスよりは確かな情報が手に入るはずです」
王都……この国の都なら、雷人の事が何か分かるかもしれません。今は少しの情報でも欲しいところで御座います。いざ、王都、ライネルス目指して前進で御座いますね。
「それでじゃ、探偵さんよぅ。その王都まではどれくらいかかるんじゃ? 1時間か? 2時間か?」
探偵さんが、ハハハと笑い出しました。
「1、2時間で行けるのなら、いいのですが。1週間から10日はかかるかと……」
「10日じゃと!」
じぃじがびっくりしておりますが、私はたかだか10日なんて日数には驚きません。雷人に会えない1日より、雷人に近づく10日の方が、どれだけ有難い事か、私は存じ上げております。
「途中で何事もなければ、1週間で辿り着けるかと思います」
「何事もなければ?」
探偵さんのお言葉に、じぃじはまだ勘付いていないようです。ここは私がビシッと申し上げた方がよろしいのでしょう。
「何事……それは途中で、魔物に出会したり、何があるか分からないと言う事です。ですが、全て雷人のためです。じぃじも覚悟をお決めください!」
「覚悟って言われてものぅ」
何だか頼りない返事です。
「……大丈夫です。私もいますし、王都まではレオンが護衛に付いてくれますから」
「あら、レオンさんがご一緒してくださるのですね。それは心強い。……昨日、お一人でゴブリンさんを4匹も倒されたレオンさんがご一緒なら、何も怖くありませんね」
「私がお二人をお守り致します」
丁寧に膝をついて、まるで忠誠を誓う騎士のような、レオンさんのお姿には、目を見はるものが御座います。本当に紳士的なお方です。
私も丁寧に御礼を申し上げないといけません。スカートの端をつまんで、頭を下げようと致しましたら。……あら、目の前にパンさんが、飛んで入ってまいりました。
「俺も一緒に行くにゃー! 俺も上手い飯、一緒に食うにゃー!」
あらあら、大変です。パンさんは、プクぅっと、頬を膨らませていらっしゃいます。
「パン。お前が来ても、何の役にも立たないだろ。昨夜だって、真っ先に逃げ出したのは誰だ?」
レオンさんがパンさんを嗜めていらっしゃいます。確かに怖がりなパンさんに、レオンさんのような護衛は期待出来ませんね。ですが一緒に行くと言うパンさんを、突き放す理由も御座いません。
「お願いにゃー! 一緒に行くにゃー! 何でも言う事、聞くにゃー!」
「どうされますか? 康夫さん、光江さん」
探偵さんに判断を委ねられました。私はもう決めておりますが、じぃじは何と答えますでしょうか?
「何じゃ? お前はゴブリンを見て、真っ先に逃げ出したのか? 情け無い奴じゃのぅ」
「だって怖かったにゃー」
「ほぅ、そうか、そうか。怖かったんじゃのぅ」
「怖かったにゃー」
「そうじゃのぅ。一緒に来ても良いが……」
「いいにゃ?」
「役に立たなかったら、それで終わりだからのぅ」
「役に立つにゃ!」
パンさんが短い両手を上げて、喜んでいらっしゃいます。じぃじの意図は分かりませんが、結果よかったんじゃないでしょうか。
「光江さんはよろしいんですか?」
「ええ、私はもちろん」
旅は賑やかな方が、よろしいじゃ御座いませんか。じぃじと探偵さん、それにレオンさんとパンさん。そして私、こんな私達の事をパーティと呼ぶ事を、後に探偵さんが教えてくださいました。
それでは、王都、ライネルスを目指して、いざ、出発で御座います。
「ええ。光江さんのギルド証と報酬を受け取ったので、これで町を出ます」
「ほぅ、そうかい、そうかい。それで何処へ行くんだ? 町を出てから」
そうでした。探偵さんにお任せしておけば、間違いはないのですが、この後どこへ向かうか聞いておりませんでした。
「王宮のある王都、ライネルスへ向かいましょう。このパノスの町でも少し噂は耳にしましたが、やはりこの国の片田舎では噂も曖昧です。ここはこの国の中心に向かうのが一番かと」
「そうですね。異世界から集められた若者が王宮の護衛隊になったなんて噂もあったんでしょ?」
「何だ? その護衛隊に雷人もいるんじゃろか?」
「いえ、分かりません。ですが、このパノスよりは確かな情報が手に入るはずです」
王都……この国の都なら、雷人の事が何か分かるかもしれません。今は少しの情報でも欲しいところで御座います。いざ、王都、ライネルス目指して前進で御座いますね。
「それでじゃ、探偵さんよぅ。その王都まではどれくらいかかるんじゃ? 1時間か? 2時間か?」
探偵さんが、ハハハと笑い出しました。
「1、2時間で行けるのなら、いいのですが。1週間から10日はかかるかと……」
「10日じゃと!」
じぃじがびっくりしておりますが、私はたかだか10日なんて日数には驚きません。雷人に会えない1日より、雷人に近づく10日の方が、どれだけ有難い事か、私は存じ上げております。
「途中で何事もなければ、1週間で辿り着けるかと思います」
「何事もなければ?」
探偵さんのお言葉に、じぃじはまだ勘付いていないようです。ここは私がビシッと申し上げた方がよろしいのでしょう。
「何事……それは途中で、魔物に出会したり、何があるか分からないと言う事です。ですが、全て雷人のためです。じぃじも覚悟をお決めください!」
「覚悟って言われてものぅ」
何だか頼りない返事です。
「……大丈夫です。私もいますし、王都まではレオンが護衛に付いてくれますから」
「あら、レオンさんがご一緒してくださるのですね。それは心強い。……昨日、お一人でゴブリンさんを4匹も倒されたレオンさんがご一緒なら、何も怖くありませんね」
「私がお二人をお守り致します」
丁寧に膝をついて、まるで忠誠を誓う騎士のような、レオンさんのお姿には、目を見はるものが御座います。本当に紳士的なお方です。
私も丁寧に御礼を申し上げないといけません。スカートの端をつまんで、頭を下げようと致しましたら。……あら、目の前にパンさんが、飛んで入ってまいりました。
「俺も一緒に行くにゃー! 俺も上手い飯、一緒に食うにゃー!」
あらあら、大変です。パンさんは、プクぅっと、頬を膨らませていらっしゃいます。
「パン。お前が来ても、何の役にも立たないだろ。昨夜だって、真っ先に逃げ出したのは誰だ?」
レオンさんがパンさんを嗜めていらっしゃいます。確かに怖がりなパンさんに、レオンさんのような護衛は期待出来ませんね。ですが一緒に行くと言うパンさんを、突き放す理由も御座いません。
「お願いにゃー! 一緒に行くにゃー! 何でも言う事、聞くにゃー!」
「どうされますか? 康夫さん、光江さん」
探偵さんに判断を委ねられました。私はもう決めておりますが、じぃじは何と答えますでしょうか?
「何じゃ? お前はゴブリンを見て、真っ先に逃げ出したのか? 情け無い奴じゃのぅ」
「だって怖かったにゃー」
「ほぅ、そうか、そうか。怖かったんじゃのぅ」
「怖かったにゃー」
「そうじゃのぅ。一緒に来ても良いが……」
「いいにゃ?」
「役に立たなかったら、それで終わりだからのぅ」
「役に立つにゃ!」
パンさんが短い両手を上げて、喜んでいらっしゃいます。じぃじの意図は分かりませんが、結果よかったんじゃないでしょうか。
「光江さんはよろしいんですか?」
「ええ、私はもちろん」
旅は賑やかな方が、よろしいじゃ御座いませんか。じぃじと探偵さん、それにレオンさんとパンさん。そして私、こんな私達の事をパーティと呼ぶ事を、後に探偵さんが教えてくださいました。
それでは、王都、ライネルスを目指して、いざ、出発で御座います。
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