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最終章 孫を追いかけ最後の追い込みで御座います。
8-4 国王在位10周年6の日で御座います。
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「探偵さんよぅ。昨日は疲れたのぅ。わしはもう動けないんじゃ」
人鷲カフェ2号店のテーブルに、じぃじがだらしなく顎をのせておいでです。さすがに齢66の体には堪えたので御座いましょう。私も、一瞬の事でしたが、昨日の揉みくちゃに、まだ全身が痛とう御座います。
「どうぞ今日はゆっくりなさってください。今日の催しはゴブリンの森だそうです。冒険者を目指さないなら関係ないですし、光江さんはもうランクDの冒険者ですしね」
そうで御座いました。私、冒険者ギルドでギルド証を頂いたので御座いました。
「……そうですね、じぃじ。無理はいけません。明後日が私達にとって本番です。もう歳なんですから、今日明日はゆっくりどうぞ」
「もう歳って。ばぁばだって変わらんじゃろ」
「まぁ、そうで御座いますね。ですが私はピンガルの実を頂いてますから」
「おお、そうじゃったの。わしにもくれんか。あのミーナって人鷲に全部ジュースにしてもらって飲むんじゃ!」
全部だなんて、じぃじったら本当に欲張りで御座います。
「おい、じじぃ。ピンガルの実は大量に食べたら、腹を下すから気をつけるんだな」
「じじぃじゃない! じぃじじゃ!」
じぃじに強気なミーナさん。それに対抗するじぃじ。たまにはこう言う光景も面白いもので御座います。探偵さんも、レオンさんも何だか今日はのんびりお過ごしです。……そんな午前中の緩い光の中で、寛いでいる時で御座いました。
「おい、ヨーフ。随分と余裕な様子だな」
テーブルの前に現れたのは、真っ黒なマントを羽織ったローグさんで御座いました。……あら。真っ黒と申しましたが、翻ったマントの裏地は玉虫色で御座います。さすが本当の国王だけあって、お洒落さんで御座います。
「どうしたんですか? こんな所まで」
探偵さんが返すと、奥から、「いらっしゃい」と、威勢のいい声と共に、ウーグルさんが出ていらっしゃいました。
「陛下!」
一目見て驚いたので御座いましょう。ウーグルさんが、とんでもなく裏返った声で叫ばれました。
「……陛下。どうして私共の店にいらっしゃったのですか?」
そうでした。ウーグルさんは王室護衛隊の隊長だった方です。現国王の顔を知っていても当然で御座います。
「説明が難しくなるので、陛下と呼ぶのはおやめください。そうですね、ローグと名前で呼んで頂ければ」
ローグさんが気さくに笑って、おっしゃいました。ですがウーグルさんは、何も発せず突っ立ったままで御座います。
「ローグさんもコーヒーでよろしいですか?」
「あ、はい。コーヒーを」
「ウーグルさん。コーヒーをもう一つお願い致します」
探偵さんの向かいに腰を下ろしたのを確認して、ウーグルさんに注文を伝えます。
「……それで、どうしたんですか?」
探偵さんのお声に、仕切り直しで御座います。
「ああ。俺なりに考えてみたんだ。やはり増税を行い、私腹を肥やすアンダンは見過ごしてはおけない。それに……」
「それに何ですか?」
ローグさんが、グッと何やら考え込んでおいでです。
「……康夫さん達の前でお話するのもなんですが。お二人の息子さんは国王として、この国を司るには役不足です。アンダンの言いなりで、ただのお飾りでしかない」
私達を前には話辛かった事は、よく分かりました。私達の息子……聖人を役不足だと言うんですから。ですが当然の事で御座います。
「……ローグさん。申し訳御座いませんが、当然の事で御座います。私達は聖人を国王にすべく育ててはまいりませんでした。先日のお話では、聖人達は自分達が、死んだものと思っているとの事でした。国王として召喚され、生きて行くためには、そこにしか選択肢がなかったんだと思っております」
「聖人さん達にとっての選択肢……そうですね。きっと他に選べる道がなかったんでしょう」
探偵さんが静かに、お答えくださいました。私達の気持ちを踏まえ、寄り添ってくださる探偵さんには、しつこいですが感謝しか御座いません。
「……そうですね。ですがもし選択肢が生まれたら?」
ローグさんの意図する事が見えませんでした。選択肢が生まれるとは?
「どう言う意味で御座いましょうか?」
「ヨーフにもしっかりと聞いておいて欲しい。私は国王の座を奪還する。国王として、この国を守っていく。と、なれば、現国王はお役御免だ。生前に召喚されたのであれば、元の世界に戻る事も出来るだろう。……私が国王に就く事で、生まれる選択肢。だがもし国王の座にしがみつくのであれば、戦う事になるだろう」
凛としたローグさんのお姿は、やはり国王になるべき方のお姿で御座いません。
「ローグさん。私達とローグさんの意見は一致しております。私の願いは孫の雷人と、息子達を連れて元の世界に戻る事だけです。そのためなら何でも致します」
「では、明日のお料理コンテスト、頑張ってください」
「え?」
当然、ローグさんが話を変えられて、びっくりで御座います。
「明日の優勝者の料理は、国王に献上されます。もし優勝して献上となれば、謁見の日を待たずに息子さんに会って頂ける。……そして息子さんの意思を聞いていただきたい」
んまっ。重大任務では御座いませんか。お料理は大好きですが、易々と優勝できるものでしょうか。……いえ、不安を口にしてはいけませんね。何が何でも優勝すると言う思いが無ければ、優勝などきっと出来ません。
人鷲カフェ2号店のテーブルに、じぃじがだらしなく顎をのせておいでです。さすがに齢66の体には堪えたので御座いましょう。私も、一瞬の事でしたが、昨日の揉みくちゃに、まだ全身が痛とう御座います。
「どうぞ今日はゆっくりなさってください。今日の催しはゴブリンの森だそうです。冒険者を目指さないなら関係ないですし、光江さんはもうランクDの冒険者ですしね」
そうで御座いました。私、冒険者ギルドでギルド証を頂いたので御座いました。
「……そうですね、じぃじ。無理はいけません。明後日が私達にとって本番です。もう歳なんですから、今日明日はゆっくりどうぞ」
「もう歳って。ばぁばだって変わらんじゃろ」
「まぁ、そうで御座いますね。ですが私はピンガルの実を頂いてますから」
「おお、そうじゃったの。わしにもくれんか。あのミーナって人鷲に全部ジュースにしてもらって飲むんじゃ!」
全部だなんて、じぃじったら本当に欲張りで御座います。
「おい、じじぃ。ピンガルの実は大量に食べたら、腹を下すから気をつけるんだな」
「じじぃじゃない! じぃじじゃ!」
じぃじに強気なミーナさん。それに対抗するじぃじ。たまにはこう言う光景も面白いもので御座います。探偵さんも、レオンさんも何だか今日はのんびりお過ごしです。……そんな午前中の緩い光の中で、寛いでいる時で御座いました。
「おい、ヨーフ。随分と余裕な様子だな」
テーブルの前に現れたのは、真っ黒なマントを羽織ったローグさんで御座いました。……あら。真っ黒と申しましたが、翻ったマントの裏地は玉虫色で御座います。さすが本当の国王だけあって、お洒落さんで御座います。
「どうしたんですか? こんな所まで」
探偵さんが返すと、奥から、「いらっしゃい」と、威勢のいい声と共に、ウーグルさんが出ていらっしゃいました。
「陛下!」
一目見て驚いたので御座いましょう。ウーグルさんが、とんでもなく裏返った声で叫ばれました。
「……陛下。どうして私共の店にいらっしゃったのですか?」
そうでした。ウーグルさんは王室護衛隊の隊長だった方です。現国王の顔を知っていても当然で御座います。
「説明が難しくなるので、陛下と呼ぶのはおやめください。そうですね、ローグと名前で呼んで頂ければ」
ローグさんが気さくに笑って、おっしゃいました。ですがウーグルさんは、何も発せず突っ立ったままで御座います。
「ローグさんもコーヒーでよろしいですか?」
「あ、はい。コーヒーを」
「ウーグルさん。コーヒーをもう一つお願い致します」
探偵さんの向かいに腰を下ろしたのを確認して、ウーグルさんに注文を伝えます。
「……それで、どうしたんですか?」
探偵さんのお声に、仕切り直しで御座います。
「ああ。俺なりに考えてみたんだ。やはり増税を行い、私腹を肥やすアンダンは見過ごしてはおけない。それに……」
「それに何ですか?」
ローグさんが、グッと何やら考え込んでおいでです。
「……康夫さん達の前でお話するのもなんですが。お二人の息子さんは国王として、この国を司るには役不足です。アンダンの言いなりで、ただのお飾りでしかない」
私達を前には話辛かった事は、よく分かりました。私達の息子……聖人を役不足だと言うんですから。ですが当然の事で御座います。
「……ローグさん。申し訳御座いませんが、当然の事で御座います。私達は聖人を国王にすべく育ててはまいりませんでした。先日のお話では、聖人達は自分達が、死んだものと思っているとの事でした。国王として召喚され、生きて行くためには、そこにしか選択肢がなかったんだと思っております」
「聖人さん達にとっての選択肢……そうですね。きっと他に選べる道がなかったんでしょう」
探偵さんが静かに、お答えくださいました。私達の気持ちを踏まえ、寄り添ってくださる探偵さんには、しつこいですが感謝しか御座いません。
「……そうですね。ですがもし選択肢が生まれたら?」
ローグさんの意図する事が見えませんでした。選択肢が生まれるとは?
「どう言う意味で御座いましょうか?」
「ヨーフにもしっかりと聞いておいて欲しい。私は国王の座を奪還する。国王として、この国を守っていく。と、なれば、現国王はお役御免だ。生前に召喚されたのであれば、元の世界に戻る事も出来るだろう。……私が国王に就く事で、生まれる選択肢。だがもし国王の座にしがみつくのであれば、戦う事になるだろう」
凛としたローグさんのお姿は、やはり国王になるべき方のお姿で御座いません。
「ローグさん。私達とローグさんの意見は一致しております。私の願いは孫の雷人と、息子達を連れて元の世界に戻る事だけです。そのためなら何でも致します」
「では、明日のお料理コンテスト、頑張ってください」
「え?」
当然、ローグさんが話を変えられて、びっくりで御座います。
「明日の優勝者の料理は、国王に献上されます。もし優勝して献上となれば、謁見の日を待たずに息子さんに会って頂ける。……そして息子さんの意思を聞いていただきたい」
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