異世界に降り立った刀匠の孫─真打─

リゥル

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第四章 新天地

第349話 セルフ身体検査

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「──ハァハァ……カナデ様、起きて下さい。朝ですよ」

 窓から、薄暗くも、光の射し込む早朝。
 俺は誰かの声に、現実へと誘われる。

 しかし微睡みが気持ちよく、少しでも長く味わいたいと、お約束の言葉を口にした。

「ん~後五分……」っと。 

「もう少し寝たいと言うことですね? 分かりました、では引き続き堪能させてもらいますね……ジュルリ」

 透き通るような甘い声、それはどことなく、ビーナスを連想させ、母性すらも感じる。

 しかしそんな声に反して、ジュルリと言う艶かしい響きが…………。

 ……ジュルリ?

「──ってティア!? なんで俺の部屋に」

 ジュルリのワードのお陰で、一気に目が覚めた。
 目の前には、ベットにあごを乗せ、涎でシーツを濡らすティアがいたのだ。
 
 久しぶりに出てきたな、ティアの変態性!!

「これは失礼しました。本日はお目覚めが遅かったので。それとエルフィリアから連絡がありまして、昨晩言ってた物資が本日届くと言うことなのでご報告を」

「そうか……噂をすればだな……」

 出来れば普通に起こしてほしかった。
 なんでウチの連中は、まともに起こそうとしないんだ?

 腹に飛び乗ったり、勝手に布団に添い寝したり…… 起きたら食事が無くなってることもあったっけ。
 唯一まともに起こしてくれる、トゥナが恋しい。

「ところでティア。確認だが、俺を起こしに来たのであって、別に何もしてないよな?」

「……カナデ様。私、恥ずかしながらお腹が空いてしまいました。本日の朝食はなんでしょうか?」

「おい、ミコみたいな誤魔化し方するな。本当、何もしてないんだよな!?」

 どうしても彼女と視線が合わない……。
 何されたの──俺、何されてたの!?

「あ、急用を思い出しました。では後ほど……」

「お、おい──!」

 ティアめ、逃げやがった……。

 視線を落とすと、甚平のような前あわせの寝巻きの胸元が、結構開いている気がする……。

 いやこう言う服は、寝相で結構はだけることもあるよな?
 寝相が良いためか、今まではだけた経験はあまり無かったけど、そう言う事も……。

「朝食……何作るか?」

 現実逃避した。
 知らないこと方が良いこともある……そんな気がした。

 その後、目の冴えた俺は手早く準備を済ませ、多めに朝食の準備をする。

 そして食事を終えると、物資を運搬してくれるエルフィリアの来客に御礼を言うため、御出迎えをする事にした。

「──カナデ様、どうしたんですか? 先程から御自身のお召し物の中を覗いて?」

「いや、ティアに何されたかが気になっててだな……」

「──あ、人影が」

「あくまでもシラを切り通す気かよ!」

 今さら知るのも怖いけどな!?
 
 ただ、あながち誤魔化しただけでは無さそうだ。
 関所を超える人影が見え……。

「って、あれは……子供?」

 関所を抜けてきたのは、二人組の少女だ。

 長耳が特徴で、よわい十二、三と言ったところだろうか?
 そして、俺の目の前に立つと手を上げ──。

「初めまして、私はリズムだよぉ~」

「初めまして! メロディだよ~」

 っと、とても元気に挨拶をしてくれたのだ。

「えっと、初めまして。俺は領主をしているカナデです。長旅の物資運搬、誠にありがとうございます。そしてこちらにいる彼女が、この村のギルド職員でティアです」

 俺の説明に合わせ、ティアが一礼をした。

「なるほどなるほど。この方が、お姉ちゃんの恋敵なんだぁ?」

「どうしよリズちゃん! お姉ちゃん、勝ってる所がないよ!」

 ん、恋敵? それにお姉ちゃんって……。

「──こら、二人とも、わっちから離れるでないと言うたじゃろ! 転んだらどうするのじゃ!」

 俺は、この声を聞いたことがある!

 関所を通過した荷馬車を先導するかの様に、目が見えないはずの美女がこちらに向かい歩いてくる。
 
 まさか、この人が来るとは思ってもいなく「──キ、キサラギさん!?」っと、声が裏返ってしまった。
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