【完結】怪談収集家は探偵じゃありません！戸羽心里はホンモノに会いたい──《ひもろきサマ》

牛丸ちよ

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《盛り塩団地のひろきくん》

２　了栗団地にまつわる話

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＊一枚の写真：
古びた団地の廊下が写っている。
手前から奥まで一直線に整列した玄関扉はどれも錆び気味。
すべての扉の前に一対の盛り塩が置かれている。

＊了栗おくり団地：
K県の大型団地。
敷地内に公園があり、老朽化した公衆トイレは封鎖されている。
とある棟の廊下を撮った写真がオカルト界隈で有名になっている。

＊ひろきくん：
了栗団地のオカルト。
心臓が弱かったひろきくんは、かくれんぼで公園のトイレに隠れたまま発作を起こして死んでしまった。
けれど自分が死んだことに気付かずに、次は自分が鬼になったと思って友達を探している。
夜な夜な団地の部屋を順番にノックする。その音に返事をしたり、ドアを開けると、病気になったり大怪我をする。
なお、了栗団地でひろきという名前の子供が死んだ事実はない。

＊ひろきくん対策：
玄関の外側、扉の左右に盛り塩をすると、ひろきくんは通り過ぎる。

＊ 4号棟402号室の住人（心里のフォロワー）の話：
「母の介護のために先々月くらいに引っ越してきたんです。
そのときから薄気味悪い団地だなとは思っていました。

先週、母は亡くなりました。
玄関外の盛り塩はボケた母が置いていたと思うんですが、私はそういうの管理できないので葬式のあとすぐ捨てたんです。

そうしたら……夜になると玄関をノックする音が聞こえるようになって。

ノックって言っても、手のひらでバンバン！って叩くみたいな。
リビングにいても気付く音です。

私は心霊現象なんて信じてません。
盛り塩を捨てたことで、この団地に伝わるオバケが会いにきたとは考えませんでした。
どうせ子供のいたずらです。
この団地、ゴミも多いし汚いでしょう。つまりそういう治安なんですよ。

だから無視してました。
けど、三日四日と続くとさすがにしつこいと思って、ドアは開けずに怒鳴ったんです。
いい加減にして！って。

その日から、玄関のノックは無くなりましたよ。

……迷惑なノックは解決したのに、どうして私は友達の家に避難して、オカルト系インフルエンサーに部屋を貸すのかって？

玄関のノックは無くなったけど、寝室のドアがノックされるようになったからですよ。

しかもずっと、体調が良くないんです。
病院に行っても原因不明と言われてしまって。
こんなにしんどくて、苦しくて倒れてしまうこともあったのに、どこも悪くないなんてことありますか？

ノックはまだ続いています。
次にうっかり返事をしたら、私はどうなるんですか？」

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