色情霊にとり憑かれた俺が、除霊の為にセックスした結果。

つむぎみか

文字の大きさ
13 / 18

12話

しおりを挟む


「えーっと、元々拓海は霊媒体質ではあるけど、それだけが理由じゃないって話。その霊に何か共感するような感情を持っていたり、同じ願望を抱いてたりする人に寄って行きやすいんだよ。あの女の子にとり憑かれる前に考えていた事とか、何か思い当たる節ないの?」

「考えていたこと………」

(あの時は、たしか ―――――)







(いくら俺のこと好きって言ったって、いつかめちゃくちゃタイプの子から告白されたりしたら、すぐ付き合ったりするんだろ)


 《  私のことヲ見て……  》


(思春期のアヤマチに付き合ってなんかいられるかよ)


 《  こンなに好きナのに。愛して欲しイの……  》


 《  他の人を見ナいで、私ダけヲ見て……―――!  》





 ―――― そう、確か、好きだなんだと冗談めかして言ってくるくせに、女の子との噂ばかり立てている祥に腹を立てていた。

 ただ、なんとなく苛々していた。

 でも、あれはもしかして、
 ……ヤキモチ、だったんだろうか……――――




「…………」
「心当たり、あるんだ?」

 黙り込んだ拓海に、少しだけ驚いた顔をした祥は、再び口元に笑みを作ると、畳みかけるように問いかけた。

「当ててみせようか? 俺のこと、好きかもしれないって考えてたんだろ? 他の人に取られたくない。ずっと傍に居たいって思ってたんだよね。」

 ぼんやりと今自分が考えていた内容に当たらずとも遠からずなことを言い当てられて、思わず大きな声で言い訳をしてしまう。

「う、うるさい! お前が毎日、しつこいぐらいに好き好き言ってきて、セクハラしたりしてくるから……っ 洗脳されたようなものだろ!」

「…………」
「なんだよっ」

 まじまじと自分を見つめる祥に、拓海は居心地の悪さを感じて悪態をつく。

「ほんとにそうなんだ? 考えてたことの中身は、正直そうだったら良いなぁっていう願望だったんだけど」
「…………っ!」
「ふーん、そっかぁ。拓海は俺に毎日好き好き言われて、身体触られて、実はその気になってくれてたんだぁ? 嬉しいな♡」

(は、嵌められた……!!)

 今は何を言っても祥を喜ばせるだけな気がする。拓海は羞恥に震えながらも、口をキツく結んだ。

「言っておくけどね、色情霊にとり憑かれたとしても本当に嫌だって本人が拒否したら、霊だって好きには出来ないんだよ? 例えそれが霊媒体質の拓海だったとしても、身体の自由を完全に奪うのなんて相当な悪霊じゃないと無理だ」

 祥は俯いて唇を噛みしめる拓海の顎をとり、自分の方へとその顔を向けた。
 歓喜に濡れる瞳が、すぅっと細められて拓海を見据える。

「あの時の霊は、ただ現世に未練があっただけで悪霊ではなかった。それなのに、拓海がああいう行動を取ったってことは、霊の未練に対して拓海自身が『してもいいかな』って程度には思っていたってことだよ」

 もう、否定の言葉を紡ぐことは出来なかった。
 拓海はうすうす自分でも気付いていた。嫌いな奴だったとしたら、リハビリだと言われようが、あんな行為はしなかっただろうし、いつだって逃げようと思えば逃げられたはずだ。
 何より自分自身の性格が、ただ静かに我慢していられるような性質では無いということは、誰よりも拓海自身が理解をしていた。

「俺のこと、好きだよね? そうじゃないのに、俺に触られてあんな風に気持ちよくなっちゃうんだとしたら、相当な淫乱なのかな」
「い、いんらん、じゃない……!」

 そうだね、と祥が笑う。

「ねぇ、拓海。そろそろ認めてよ。そしたらもっと、全力で愛してあげるよ?」

「俺は……!」

 絞り出すような声で、拓海が語る。

「お前のそういう、外堀から埋めていく感じが、大嫌いだ……っ」
「うん」
「っ、けど……」

 拓海は言いながら、先ほどの霊の欲望に塗れた願いに気付いた瞬間、自分の中に芽生えた気持ちを思い出していた。あの時、拓海は自分の中にいる幽霊が祥に向けて身体の内で煮え滾らせている想いを知ったのだ。雄の劣情を。
 それに対して拓海が感じたのは紛れもなく強烈な怒りと嫉妬だった。『自分のモノに手を出すな』という、完全なる独占欲から出る感情だったのだ。

「大嫌いだけど……! お前が他の誰かに尻掘られるくらいなら、俺が代わりに掘ってやるって思うくらいには……す、すきだよ!」

 祥の目が一瞬まぁるくなり、次に嬉しそうに細められた。

「あは……それって最高の告白かもね」
「…………」
「今のままでも実力的には大丈夫だとは思うけど、拓海が掘らなくても済むように、これからもばあ様の修行頑張るよ」
「おう……」

 頼んだぞ、とよく分からないお願いをしてしまう。

 それからも、拓海はなんだかんだと祥に騙されながら転がされてしまうし、祥は拓海のふとした行動に心を乱されてしまうし、さらに距離の近くなった友人二人に八島は触れることなく適度な距離を保ち続けるし。

 変わったようで変わらないそれぞれの日常は、色情霊にとり憑かれて、除霊の為にセックスした結果もなお、当たり前のように進んでいく……―――



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

幼馴染みのハイスペックαから離れようとしたら、Ωに転化するほどの愛を示されたβの話。

叶崎みお
BL
平凡なβに生まれた千秋には、顔も頭も運動神経もいいハイスペックなαの幼馴染みがいる。 幼馴染みというだけでその隣にいるのがいたたまれなくなり、距離をとろうとするのだが、完璧なαとして周りから期待を集める幼馴染みαは「失敗できないから練習に付き合って」と千秋を頼ってきた。 大事な幼馴染みの願いならと了承すれば、「まずキスの練習がしたい」と言い出して──。 幼馴染みαの執着により、βから転化し後天性Ωになる話です。両片想いのハピエンです。 他サイト様にも投稿しております。

鬼ごっこ

ハタセ
BL
年下からのイジメにより精神が摩耗していく年上平凡受けと そんな平凡を歪んだ愛情で追いかける年下攻めのお話です。

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

ビッチです!誤解しないでください!

モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃 「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」 「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」 「大丈夫か?あんな噂気にするな」 「晃ほど清純な男はいないというのに」 「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」 噂じゃなくて事実ですけど!!!?? 俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生…… 魔性の男で申し訳ない笑 めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!

お兄ちゃんができた!!

くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。 お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。 「悠くんはえらい子だね。」 「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」 「ふふ、かわいいね。」 律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡ 「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」 ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

処理中です...