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12話
しおりを挟む「えーっと、元々拓海は霊媒体質ではあるけど、それだけが理由じゃないって話。その霊に何か共感するような感情を持っていたり、同じ願望を抱いてたりする人に寄って行きやすいんだよ。あの女の子にとり憑かれる前に考えていた事とか、何か思い当たる節ないの?」
「考えていたこと………」
(あの時は、たしか ―――――)
(いくら俺のこと好きって言ったって、いつかめちゃくちゃタイプの子から告白されたりしたら、すぐ付き合ったりするんだろ)
《 私のことヲ見て…… 》
(思春期のアヤマチに付き合ってなんかいられるかよ)
《 こンなに好きナのに。愛して欲しイの…… 》
《 他の人を見ナいで、私ダけヲ見て……―――! 》
―――― そう、確か、好きだなんだと冗談めかして言ってくるくせに、女の子との噂ばかり立てている祥に腹を立てていた。
ただ、なんとなく苛々していた。
でも、あれはもしかして、
……ヤキモチ、だったんだろうか……――――
「…………」
「心当たり、あるんだ?」
黙り込んだ拓海に、少しだけ驚いた顔をした祥は、再び口元に笑みを作ると、畳みかけるように問いかけた。
「当ててみせようか? 俺のこと、好きかもしれないって考えてたんだろ? 他の人に取られたくない。ずっと傍に居たいって思ってたんだよね。」
ぼんやりと今自分が考えていた内容に当たらずとも遠からずなことを言い当てられて、思わず大きな声で言い訳をしてしまう。
「う、うるさい! お前が毎日、しつこいぐらいに好き好き言ってきて、セクハラしたりしてくるから……っ 洗脳されたようなものだろ!」
「…………」
「なんだよっ」
まじまじと自分を見つめる祥に、拓海は居心地の悪さを感じて悪態をつく。
「ほんとにそうなんだ? 考えてたことの中身は、正直そうだったら良いなぁっていう願望だったんだけど」
「…………っ!」
「ふーん、そっかぁ。拓海は俺に毎日好き好き言われて、身体触られて、実はその気になってくれてたんだぁ? 嬉しいな♡」
(は、嵌められた……!!)
今は何を言っても祥を喜ばせるだけな気がする。拓海は羞恥に震えながらも、口をキツく結んだ。
「言っておくけどね、色情霊にとり憑かれたとしても本当に嫌だって本人が拒否したら、霊だって好きには出来ないんだよ? 例えそれが霊媒体質の拓海だったとしても、身体の自由を完全に奪うのなんて相当な悪霊じゃないと無理だ」
祥は俯いて唇を噛みしめる拓海の顎をとり、自分の方へとその顔を向けた。
歓喜に濡れる瞳が、すぅっと細められて拓海を見据える。
「あの時の霊は、ただ現世に未練があっただけで悪霊ではなかった。それなのに、拓海がああいう行動を取ったってことは、霊の未練に対して拓海自身が『してもいいかな』って程度には思っていたってことだよ」
もう、否定の言葉を紡ぐことは出来なかった。
拓海はうすうす自分でも気付いていた。嫌いな奴だったとしたら、リハビリだと言われようが、あんな行為はしなかっただろうし、いつだって逃げようと思えば逃げられたはずだ。
何より自分自身の性格が、ただ静かに我慢していられるような性質では無いということは、誰よりも拓海自身が理解をしていた。
「俺のこと、好きだよね? そうじゃないのに、俺に触られてあんな風に気持ちよくなっちゃうんだとしたら、相当な淫乱なのかな」
「い、いんらん、じゃない……!」
そうだね、と祥が笑う。
「ねぇ、拓海。そろそろ認めてよ。そしたらもっと、全力で愛してあげるよ?」
「俺は……!」
絞り出すような声で、拓海が語る。
「お前のそういう、外堀から埋めていく感じが、大嫌いだ……っ」
「うん」
「っ、けど……」
拓海は言いながら、先ほどの霊の欲望に塗れた願いに気付いた瞬間、自分の中に芽生えた気持ちを思い出していた。あの時、拓海は自分の中にいる幽霊が祥に向けて身体の内で煮え滾らせている想いを知ったのだ。雄の劣情を。
それに対して拓海が感じたのは紛れもなく強烈な怒りと嫉妬だった。『自分のモノに手を出すな』という、完全なる独占欲から出る感情だったのだ。
「大嫌いだけど……! お前が他の誰かに尻掘られるくらいなら、俺が代わりに掘ってやるって思うくらいには……す、すきだよ!」
祥の目が一瞬まぁるくなり、次に嬉しそうに細められた。
「あは……それって最高の告白かもね」
「…………」
「今のままでも実力的には大丈夫だとは思うけど、拓海が掘らなくても済むように、これからもばあ様の修行頑張るよ」
「おう……」
頼んだぞ、とよく分からないお願いをしてしまう。
それからも、拓海はなんだかんだと祥に騙されながら転がされてしまうし、祥は拓海のふとした行動に心を乱されてしまうし、さらに距離の近くなった友人二人に八島は触れることなく適度な距離を保ち続けるし。
変わったようで変わらないそれぞれの日常は、色情霊にとり憑かれて、除霊の為にセックスした結果もなお、当たり前のように進んでいく……―――
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