色情霊にとり憑かれた俺が、除霊の為にセックスした結果。

13話

　

「ところで拓海（たくみ）。また大層な霊にとり憑かれて穴が元通りになっちゃったみたいだけど……リハビリ、どうする？」

　なんだかんだ、丸く収まったと思っていた所だったのに、祥（しょう）がおもむろにそんなことを問いかける。

「リハビリって。それも嘘だろ？」
「だから半分は本当だって。俺としてはリハビリとは関係なく拓海を抱きたいけど」

　ニコニコと満面の笑みを浮かべて小首を傾げる祥。拓海はその姿を見て、胡乱げに目を細めた。

「……言っておくけど、そんな風にしても全然可愛くないからな。むしろ無性にイラついてくるからやめてほしいんだけど」

　拓海がずばっと切り捨てると、ひどいなぁ～なんて言いながら、祥はくすくすと笑う。
　正直なところ拓海自身も、祥とのリハビリ……もとい、セックスは気持ちがいいと思っていた。気持ちがいいのだが、なんというか普通じゃない気がするのだ。というより、あんなにねちっこく、毎回啼かされ泣かされるセックスが、普通であって欲しくないと考えていた。

　女性とのあれこれをする前に、祥とばかり経験値を積んでいってしまう拓海にとっては、祥とのセックスとAVの知識だけが全てだ。祥のことは……好き、かもしれないと、認めて始めてはいるけれど、今まで自分は異性愛者だと信じ切っていた。その気持ちが捨てきれず、もしも女の子といい感じになったら、俺は絶対にそっちへ走る！という決意の元、あまり偏った性知識を付けたくは無いと思っているのだ。

「あのリハビリも、拓海の為に必要なことなんだよ？　今もここには簡易的な結界を張っているから安全だけど、多分外に出たら一発で何かにとり憑かれると思う」
「ま、まじか……」
「一番手っ取り早く、拓海に俺の霊力を流すには、いつものリハビリが一番なんだけどなぁ～」

　自分の身体が自分のものでは無くなってしまう、あの気味の悪い感覚。出来ることならもう味わいたくはない。
　でも、そのためには祥の言う"リハビリ"が必要で……。

「言葉責めみたいなの、しないって約束するか？」
「えー、言葉責めなんてしたことないじゃん」
「いつも、ヤってる時に色々聞いてきたり、言わせたりするだろ！」
「それは拓海がちゃんと気持ちいいか、心配だから聞いてるんです」

　ああ言えばこう言うで、一切話が進まない。
　苛々してきた拓海は、無理やり祥の襟首を掴むと、その頭を引き寄せる。ゴツンッという音が響いて、二人の額がぶつかり合った。

「いったぁ……ちょっと。拓海ってば石頭なんだから、少しは加減してよ」
「いいから！　……今日は俺が、する、から……祥は手ぇ出すなっ」

　わずかに目元を赤く染めた拓海が、思いがけず嬉しい提案をしてきたことに、祥は目を丸くさせる。

「拓海が？　……それは楽しみだけど」
「お前に主導権握られると、変なことされそうだし」
「変なことなんて、した事ないんだけどなぁ。ま、俺としては大歓迎だから、まったく問題ないよ」

　自分でする、だなんて。そんな事をしたら祥をただ喜ばせるだけだというのに、拓海はどうしてかそれに気付けない。なぜなら本人は、それが己の身を守るための最善策だと信じているから。勝手に自分の腕の中へと飛び込んできてくれた拓海に、喜びを隠せない祥だったが、それを悟られて逃げてしまったら堪らない。極力平静を保つようにして、うっそりと微笑んだ。

「除霊リハビリに必要なモ・ノ・。わかってる？　ちゃんと俺のこと、その気にさせてよね」
「……わかったよ」

　拓海は大きなため息とともに言葉を吐き出した。