騎士王マルス ~始まりの歌~

黒山羊

文字の大きさ
16 / 20
目指せ!王国騎士団長

5年生 英雄騎士の誕生

しおりを挟む
5年生になったマルスは、身長も伸び、それに合わせて技の切れも大幅に向上されていた。

すでに王都内に、マルスの腕に並ぶ騎士や冒険者は存在せず、他国からも注目されている程に飛躍的に成長していた。
マルスが、いつものように朝食を取っていると、楽しそうにメリッサ先輩とリサが寄ってくる。マルスは直感した。(ああ、面倒なことが始まる。)と・・・。



「メリッサ先輩、マルスも来てますね!」

「よかった。マルス、いま大丈夫かな?」

「いえ、朝食中なので。」

「はい。大丈夫そうですね。」


リサが勝手に話を進めるように促す。


「では、説明しようかな。今年も4年生が専科を選ぶ季節がやってきました。そこで、、マルスか、リサか、ランドの誰かに、4年生の歓迎の挨拶をしてもらおうと考えてるんだけど。」


「ああ、ランドは大丈夫です。私かマルスで勝負します。」

「僕も辞退します。それに3人しかいない学年ですから、突っ込むべきか悩んだんですけど、一応つっこみましょうか?」

「うん。分かってるんだけどね。ほら、選考の結果って言った方が盛り上がるかと思ったんだよ。」



その後、ランドにも確認したが、3人の多数決の結果、満場一致でリサに確定した。
大喜びで、スピーチの挨拶をするリサを見て、ランドがマルスに話しかける。


「あのさ、実の姉に向かっていう言葉じゃないかもしれないけど、リサってバカなんじゃないかな?」

「いや、何も考えていない幸せ者なんだよ。きっと。」

「ありがとう。そういった解釈もあるんだな。」



全員で、訓練場の中のカーテンを閉め、室内を暗くする。
ちょうど、1年前、マルスもルナたちと、一緒にドキドキしたことを思い出す。


「たまには、いいかもしれないな。」

「なに?」

近くに立っていたメリッサがマルスに質問をする。


「いえ、ちょっと昔の事を思い出しちゃって。」

「マルス、あのさ、ラアラお姉ちゃんや、ルナも同じことを言ってたけど、考えすぎだと思うよ。もっと、リサや、ランドみたいに楽しみなよ。」

「メリッサ先輩、いつもありがとうございます。去年の匿名の資金提供も、ムーンフェスト家からですよね。」

「ああ、バレてたの。」

「そんな気がしてたんですよ。最初の頃は分かりませんでしたけどね。」

「まあ、定期的に資金提供してれば、分かりそうだよね。パパも無頓着なところがあるから。」


そんな話をしていると、訓練所の扉が開き、4年生が、ゾロゾロと入ってくる。




「ウィン、本当にここなの?」

「たしか訓練場って言ってたはずだけど。」


全員が 訓練所に入ると、カーテンが一斉に開けられ、リサが、大きな声を出して歓迎する。


「ようこそ! 騎士剣専攻へ!!! あ、あれ!?」



思いのほか多すぎる人数に、リサが困惑している。
マルスが説明するように、口を開く。


「リサ、今年の名簿見てないの?」

「ごめん。見てないや。」

「マルス、あれだけ言ったのに、確認しなかった リサは放置して話を進めようぜ。」


カーテンを開けたランドが戻ってきて、リサをバカにする。
4年生の代表者が一歩前に出て自己紹介をする。


「メリッサ専科長、マルス先輩、僕はウィンド=ラージアンク。4年生の筆頭騎士見習いです。」


筆頭騎士見習いとは、学級委員のような存在で、マルスの代は、アロンが引き受けている。
メリッサや、マルスは、少し苦手なタイプだろう。
それを察した、別の6年生がフォローする。


「騎士剣専科にようこそ。ウィン、俺が騎士剣専科の副専科長のルークだ。よろしく。」


「・・・。」


ウィンは、完全にルークを無視する。
その様子を見て、リサが注意する。


「ちょっと、ルーク先輩が話してるんだから、ちゃんと返事くらいしなさいよ。弱くたって先輩なんだからね!」


ひどく落ち込むルークと、それに気づいたランドが注意を促す。

「ほら、リサ・・・。」


リサも、ルークを見て、しまった!という顔をする。

「・・・すみません。ルーク先輩。」


「面白担当の先輩方ですね。失礼な態度で申訳ありません。しかし、あなた方に学ぶことはないと思っていますから。」



その一言に、ランドがキレる。

「おい、だまって聞いてれば・・・。」


ランドの腕の傷を見て、ウィンは何かに気づく。

「あー!! 双騎士剣のランド先輩ですね! すみません。挨拶が遅れました!」

「お、おう。いい奴じゃん。」


「「どこが。」」



今年の騎士剣の専科は、全員志望の緊急事態だったそうだ。
そこで、騎士剣の成績上位者の20名が選定され、その20名が騎士剣の専科へ、それ以外は、第二希望へ回されたそうだ。
4年生の中には、マルスを見て、実感がわいたのか、泣き出す女の子もいた。


「リサ、あんたたちの代は、苦労が多そうね。」

「メリッサ先輩の手腕にかかってます。お願いします。」










~数日後~

マルスの日課の早朝ランニングだが、異変が起きる。
この4年間、ララ以外に走っている人がいなかったのだが、最近は人数も増え、100人ほどになっていた。最初は ウィンが、次に ランドが、そこからどんどん人数が増え、ネズミ算式に、いまの人数に増えていった。


「マルス先輩! 雨の日も走っているんですか?」

ウィンは、走りながら質問してくる。

「小雨程度ならね。本格的に降っているときは、技の習得に重点を置いて訓練しているよ。」


「ウィン、俺にも聞けよ。」

「はい。もちろん! ランド先輩は、なぜ双騎士剣を目指したんですか?」

「あ、ああ、それは秘密だ。」


ランドは、速度を上げて先に走って行ってしまった。

「教えて下さいよ!」

ウィンも、ランドを追いかける。








マルスは、なるべくかかわらないように、食堂に移動する。
そこで、マルスは、下級生の虐めを見つける。
一緒に行動していた、ウィンが何かに気づく。


「ああ、下級騎士のベックと、上級騎士のホールたちですね。」

「ウィンは、何も感じないのか。」

「え、何がですか?」


そこに、遅れてきたランドが、口を挟む。

「おまえ、昔の俺みたいだな。」




ランドは、下級騎士のベックの横に座る。


「おい、久しぶりだな。ベック、俺の事、覚えてるか!?」

「え、あの、その・・・。」


上級騎士のホールたちは、気まずそうに、席を移動する。


「マルスさん、ランドさんは変わってますよね。」

「・・・いや、ランドは素晴らしい騎士だと思うよ。」


マルスは、いつもの席に戻り、何か周囲に聞かれないように、メリッサと話をしている。




呆然と立ち尽くすウィンに、リサが話しかける。

「ウィン、最初マルスはね、ブックっていう下級騎士を庇ったんだ。特級騎士の子供なのに可笑しいでしょ。
でもね、その頃は誰もマルスの事を知らなかったし、下級騎士の子って勘違いもされてて、一緒に虐められてたんだよ。
だけどね、マルスは仲間を見捨てなかったし、あきらめたり、逃げ出したりすることもなかった。その時、マルスを虐めてた アロンは、いまでは マルスの軍略仲間だし。バカのランドは、同じ騎士剣専科の仲間。フリオって騎士盾専科にもいるんだけど、彼だって防御魔法を一緒に練習してる。」


「・・・何が言いたいんですか。」

「もう分かってるでしょ。ウィンが変われば、もっともっと強くなれるよ。」



ウィンは、強がって反論したが、リサの言いたいことは分かっていた。
ウィンには、友達はいない。それどころか、同じ騎士剣専科の同級生もウィンの事を陰で悪く言ってることを知っている。彼の仲間は、成績もよく 教師からの評価も高い ウィンの意見を聞いているだけの存在だということも・・・。


「リサ先輩、僕は変われるんでしょうか・・・。」

「大丈夫だよ。アロンって同級生は、ウィンの1000倍は嫌な奴だったんだから。」

「はい、ありがとうございます。」





2人の後ろから、アロンが声をかける。


「リサ、感動の話の最中に申し訳ないが、向こうで一緒に朝食をとろうか。」

先ほどの話が聞こえていたのだろう、アロンの目つきが怖い。


「あ、アロン。ちょうどよかった。 ね、意地悪そうな顔をしてるでしょ。」


リサの声は、ちょっと大きい、周囲から失笑が巻き起こる。
アロンは、隠れるように、マルスの元へ移動していった。














~数週間後~

王国騎士団主催の、大会が開催される。

去年に引き続き、今年も来客数が減っている。
ここ最近、目立った戦闘もなく、盛り上がりに欠ける。その原因は、黒の騎士団を警戒し、入場者の制限を行ったことと、最終日の無差別の試合がなくなったことが要因かも知れない。
今年は、初日の騎士剣で、メリッサが見せ場を作るも、おおきな活躍はできず、翌日以降の来場者につなげることはできなかった。

この事態に、最終日に騎士団、騎士団見習い、一般参加の無差別の試合を復活させることが急遽決まった。一般参加者は、安全確保の為に、世間に公表はしないが、魔装具の鑑定を条件にするらしい。
この発表は、競技3日目、ダンテ国王自ら、最終日をずらし、9日目に開催することを宣言した。この発表に、国民は期待し、その後の来場者数が急激に増加した。
尚、今回の無差別の優勝者には、叶えられる範囲での希望を叶えると、国王からの通達もあった。その言葉から、無差別の応募者が殺到し、8日に予選会を設けることも決まったそうだ。






~夜・食堂~

競技3日目の夜、4年生以上は、メイガス校長に呼ばれ、食堂に集合する。
メイガス校長は、ダンテ国王の決定事項を伝え、魔装具を保有していることを条件に、参加者を募る。
その結果、集まったのは、4人。マルス、ランド、アロン、ウィンであった。

4人は、明日の朝一番で、競技会場に入場することになった。






~マルスの無駄に豪華な部屋~

明日からの準備に向けて、なぜか一番狭い マルスの部屋に、アロン、ランド、ウィン、リサが集まる。
ウィンは、マルスの豪華な部屋をみて、愕然とする。


「なんなんですか! この部屋は!!!」

部屋は狭く、家具もベットと机しかないが、アロンいわく、全て超高級品だそうだ。
アロンは、自分の事のように自慢を始める。


「ウィン、この花瓶、いくらだと思う?」

「えっと、金貨5枚とかですか?」

「おいおい、中の花しか買えないぜ! この花瓶で、金貨30,000枚だぞ!」


花瓶に肘をついていた、リサが、ゆっくりと距離をとる。


「それに、ブックの置いていった軍略盤、ちょっと気になって調べてみたんだが、アンティークの名品で、駒とセットだと、金貨6,000枚だぞ。」

軍略盤の上に座っていたランドが、傷をつけないように立ち上がる。





「極めつけは、この布団!」

「いったいいくらなの!?」

リサが喰いつく。






「ラーナ姫の私物で、査定不能らしい!」

「マルス、今度から床で寝れば。」

「ああ、そうしようかな。」



ウィンは、驚きを隠せない。

「全部高価で驚きましたけど、ラーナ王女の私物の布団ですか! マルス先輩はいったいどうやって入手してるんですか!!?」


ウィンが異様なほど喰いついてくる。どうやら、ラーナ姫のファンクラブの会員だそうだ。
マルスは、当たり障りのない範囲で説明する。


「まさか、お忍びで 騎士養成所に来ていたとは・・・。知っていれば、懲罰房覚悟で、先輩方の授業に参加して、騎士剣で殴打してもらえる夢が叶ったのに・・・。」

「夢が小さいわね。」

リサがあきれている。






その後、お互いに知っている魔装具の知識を交換し合い、9日目の競技に備えた。


どうやら、魔装具は 装備する人を選び、譲渡することで、その所有者を変えていくというのが分かった。
また魔装具は、1~3個ほどの能力を付加しているだろうということ。
能力は、魔法を無効化したり、自身の身体能力を向上させたり、攻撃時に状態異常を付加させたりといった物や、マルスの腕輪のように、防御時に発揮する能力がある物もあると言うことが分かった。
それと、壊れたりしても魔力を注ぎ続ければ、数日~数カ月後には回復するということ。


魔装具に関しての知識は、冒険者の方が詳しいだろう。しかし、そこをカバーするべく、日々鍛錬を積んできたので、負けるわけにはいかない。
マルス達は、騎士見習いとして優勝を目指すことを互いに誓い合った。










~9日目・無差別~

人数も集まり、トーナメント方式の競技が成立する。

総参加者は、18名。


騎士団見習いの成績優秀者(メリッサ)と、一般のトップ(※月夜のレイザー)が、シードでトーナメントのA,Bブロックにそれぞれ振り分けられる。

(※月夜のレイザー:二つ名を持つ冒険者。二つ名を持つ冒険者は、かなりの腕前があるとされている。とくに、レイザーは、魔法剣の開祖で、その実力は相当なものだろう。)


その後は抽選で位置が決められていく。

マルスは、Bブロックの8枠を引く。最初の対戦相手は、アリスという一般冒険者になる。
マルスの後ろから、老人が声を掛ける。


「君が、マルスくんじゃな。」

「は、はい。あなたは?」

「わしは、レイザーじゃ。最初の試合、楽しみにしておるぞ!」

「はい、すぐにレイザーさんの番になりますよ。楽しみに待ってて下さいね。」


競技場では、A、Bブロックが同時に試合を始める。


いよいよ、マルスの番だ。


マルスは、魔装具(守護の聖騎士剣)を装備して、試合に挑む。
相手のアリスは、どんな武器かも分からないようになのか、試合開始の合図がなっても、黒いフード付きのマントを脱ごうとしない。


マルスは様子を見て、警戒する。
選手の控え場所から、レイザーが応援している。


「これ、アリス! 恥ずかしがっとらんで、マントを取らんか!!!」

「で、でも、お父さん、この格好は、無理だよぉ。」

「フラウ母さんの前でも言えるのか!」


マルスは、嫌な予感がする。
(フラウ母さん、レイザーお父さん。戦闘民族のハイブリットじゃないか。)
しかも・・・。


マントを脱いだアリスをみて、確信した。
観客席からも、大歓声が沸き上がる。


アリスは、18~19歳の若い女性で、健康的な小麦色の肌に、赤のビキニアーマーを装備している。しかし、マルスの知っているアマゾネスとは、大きく違う点がある。



大きく違う、大きく違う、大きく・・・。



それは、胸が大きく、少し動くだけで、ぷるんぷるんと弾ける胸を装備していたことだ!



沸き上がる観客の声援が、応援席から聞こえる ため息をかき消す。
観客席から観戦していたリサが、落ち込んだ顔をする。


「あー、マルスの弱点属性が来たか。」




アリスは、両手に装備した片手斧を魔法で強化する。


「ごめんなさい、ごめんなさい、早く終わらせましょう!」


マルスは、魔法で強化された斧の連撃を回避する。その攻撃は、騎士剣程の威力があり、片手剣以上の速度がある。しかし、ランドの二刀流に慣れていたマルスにとってみれば、射程が短い分、騎士剣の二刀流より避けやすい。短さを武器とした変則的な動きも、アリスの強すぎる力で直線的な動きしかしていない。
マルスの動きを見ていたレイザーは気づく。


「残念じゃが、負けは確定じゃな。」


次の瞬間、空振りのスキをつき、マルスの騎士剣の柄が、アリスのみぞおちを突く。
そのまま、気を失うように、マルスに倒れ掛かるアリス。


床には、大量に出血がみれる。


レイザーは、娘の心配をして駆けつけるが、状況を見て、マルスに回復薬と止血用の布切れを渡す。


「すみません。」

鼻に布を詰めたマルスの勝利だ。


会場は、大爆笑の渦に包まれる。

一般の観衆には、マルスの踏み込みの速度や、判断能力の高さは、分からないのだろう。
ただ、アマゾネスと戦い、鼻血を出したという、事実のみ広まっていく。




マルスが控室に戻ると、同じBブロックの ランドと、ウィンが次の試合に挑む。

「おい、俺の双騎士剣術で訓練しておいてよかったろ!」

「ああ、助かったよ。」

「マルス、さっさとウィンを倒して待ってるからな!」

「ランド先輩、絶対に負けませんからね。」



ランドと、ウィンが闘技場に進む。


ランドの武器は、魔装具(※双頭の竜殺しツインヘッド・ドラゴンキラー)と、普通の騎士剣の2刀流。

ウィンの武器は、魔装具(※疾風の両手剣)の正当な騎士剣術である。




(※双頭の竜殺しツインヘッド・ドラゴンキラー:1本の両手剣を、左右に分けて装備することができる、変化型の魔装具。剣の重量は半分になるが、なぜか破壊力は、変わらない。なお、1本で戦っても破壊力が変わらない。)

(※疾風の両手剣:武骨な両手剣で、いかにも重量がありそうだが、その剣の重さは、短剣1本分と同じ重さであるという。その分、破壊力がなく、リーチを活かした連続攻撃の技術が必要な武器でもある。)



観客席で見ていたリサは、つぶやく。

「手数勝負か。」



まず先手を仕掛けるのは、見かけに似合わず 気の短いウィンだろうと、関係者は読んでいた。
ランドは、臆病なところもあり、未知の相手に、自分から仕掛けることは、絶対にしない。

しかし、この日は違った。一瞬、ほんの一瞬だけ、ウィンの集中が途切れた。それは、Aブロックで、魔法攻撃による爆発音だ。

その瞬間に、ランドは左右の両手剣で挟むようにウィンを攻撃する。ウィンは、後方に下がり、攻撃を回避する。ランドも、簡単に終わらないのは 分かっていたようで、そのまま、右手に持つ、魔装具を前に突き出し、ウィンを攻撃する。ウィンは、その突きを払い、剣を振り上げて反撃に出る。ランドは、顔を横に向け、左頬を切らせるだけに留まる。そのまま、振り上げていた左の騎士剣を振り下ろす。

ウィンは、反撃で振り上げた騎士剣で防御する。

しかし、ランドの頭上からの騎士剣は、囮だった。そのまま、騎士剣を手放し、下げた左手は、右手の剣の柄を握り、薙ぎ払うように、ウィンを襲う。


かろうじて、鎧で防御できたウィンを再度 頭上から、ランドの魔装具が襲う。
足元に2本目の騎士剣が落ちているのを確認したランドは、頭上からの攻撃を受け止め、反撃に出る。

はずだったのだが、いつの間にか、ランドの右手に持たれていた騎士剣は、ウィンの鎧の隙間に突き立てられる。


勝負ありの旗が挙げられる。


ランドの最後の攻撃は、魔装具の作り出した 2本目の剣で、上下に分かれた柄から騎士剣が生成されるようだ。


ウィンは、完全回復魔法にて、傷を癒される。
傷が回復したウィンに、ランドは 手を差し伸べる。


「ウィン、大丈夫だったか?」

「ありがとうございました。」

「この次に戦うときは、今みたいには行かないだろうな。」

「はい、先輩の魔装具の秘密も分かりましたからね。」


2人が、Bブロックの控室に戻ってきた。
想像よりも強く、優しかったランドに、ウィンは 憧れの視線を送る。
それを見ていた、アリスは、つい口にする。


「最高の展開ですね。」

「アリス、お前、気色悪いのー。」








マルスの2回戦の相手は、王国所属の魔法使いだった。地獄の風景を幻影として 見せつける杖を持った相手だったが、魔法LV9までの無効化という、マルスの武器性能の前に、何もできずに終わった。
幻影は、おぞましい世界だったが、マルスにとってみれば、懐かしい風景であり、動揺するような映像でもなかった。


マルスは、そのまま闘技場に残り、ランドを待った。


ランドは、鎧を脱ぎ、最初から魔装具を2刀流にして、闘技場に現れた。


「ランド、鎧は?」

「あれがあるから、勝てないと思うんだ。どうせ、マルスの剣を受ければ、鎧を着ていても意味がないからな。最初っから脱いできた。」

「今日は 手強そうだね。」


マルスは、出たり消えたりする方の魔装具を警戒して戦うつもりだったのだが、最初から同じ形状の武器で来られると、どちらが消える方の魔装具か分からない。
これは、ランドの作戦でもあるのだろう。


両者が向かい合い、試合開始の合図がなる。

とっさに、マルスが右足を大きく前に滑らせるように出し、大きく振りかぶるように剣を構える。
渾身の武器破壊ブロークンハートの構えに、ランドは警戒する。

魔装具は、時間をかけて魔力を注入すれば、自己修復で回復すると言うのは、アロンや、ウィンの情報があるから安心はできる。しかし、武器破壊を受ければ、その後の戦闘にも支障をきたすし、何より、防御できなければ、一撃で敗北が確定するような大技になる。


ランドは、警戒し、様子を見る。
マルスの必殺技と、ランドの攻撃では、ランドの方が分が悪い。




マルスは、ゆっくりと必殺の構えをとき、足の幅を狭め、剣先を下ろす。

まるでランドを誘っているかのように、左手で剣を持ち、剣先は、地面に付きそうにな程下がっている。そして全身の力を抜いていく。


左手の軽く指が曲がった先に、かろうじて剣の柄が乗っているようにも見えるほど、薬指と小指以外の指はだらしなく伸びている。
肩の力は抜け、右手は 指先の力も抜けきっている。その姿は、完全に脱力しているようにしか見えない。

しかし、その目は、獲物を睨みつけるように鋭い。


ランドは、意を決してマルスに襲い掛かる。
ランドの先制攻撃は、完全にマルスを捕らえていた!



ドス!



何が起こったのか、ランドは気づいていないようだ。
ランドは、腹部を蹴られた痛みに顔をゆがませ、体を起こそうとするが、なかなか起き上がれない。
異変に気付きながらも、ランドが体を起こすと、その視線の先には、自身の右腕が転がっている。状況を確認しながらも、ランドは何が起きたのか、理解できずにいた。


遠くから見ている会場の観衆には、その動きが見えていた。

ランドが、攻撃に態勢をとり、マルスの身体を切りつけるその刹那の瞬間に、マルスは左手の剣を超高速で 振り上げ、ランドの右腕を切断した。
切断とほぼ同時に、左足を前に蹴りだし、ランドの左手に持たれた剣の攻撃をランドを蹴り飛ばすことで回避した。



その技術の高さに、観客席は静まり返った。

マルスは、ランドの右腕を拾い、審判を呼ぶ。
審判の位置からも、見えていなかったようで、審判も呆然としていた。

マルスに呼ばれ、我に返った審判の合図で、すぐに魔法治療班が駆け付け、完全治療魔法をかける。その光景を見て、会場が一気に盛り上がる。


「ランド、大丈夫だったかい?」

「まったく、マルスは永遠の目標だな。お互いの距離が縮まる気がしない。」


マルスとランドは、控室に引き上げる。
控室では、アリスが2人を見てニヤニヤしている。
レイザーは、アリスの様子に完全に引いているようだった。





Aブロックも、準決勝のカードが決まったようだ。

Aブロックは、メリッサ VS レヴィア
Bブロックは、レイザー VS マルス

というカードに決まった。




準決勝は、午後から始まる。

特別観覧席に、ダンテ国王たちが到着してからのスタートで、それまでは時間がある。
準決勝に出場する選手以外は、観客席へと移動が命じられた。
出場する選手は、控室で待機をしてもいいし、割り振られた個室で休むこともできる。
競技開始は、1時間半後になるそうだ。






マルスが控室で待機していると、近衛兵が声を掛けてきた。


「マルス、着いてこい。」

「嫌です。」

「いいからついてこい、俺だ、親父さんから助けられた。」

「すみません。皆さん、フルフェイスの兜を被っているので、分かりませんでした。」

「いいから、早く来い!」





マルスは、割り振られた自分の個室へ案内される。


「マルス、30分だけだぞ。」




近衛兵長は、近衛兵を集め、周囲を巡回させる。
マルスは、意味も分からず、個室へと入っていった。


「ル、ルーナ。」

「マルス、会いたかった。」


個室の中で待っていたのは、ルーナ姫だった。


「どうしてここに!?」

「へへ、お見合いを急いで断って戻ってきたの。近衛兵長さんが急いでくれて、お父様が来る前にマルスに会いに来ちゃった。」


マルスは、涙が止まらない。ルーナもマルスに抱き着き泣いている。




2人は、いままで合ったことを話したりした。30分という時間が、あっという間に過ぎていく。



コンコン。

「お時間です。そろそろ戻りましょう。」


扉越しに、近衛兵長が声を掛ける。


「分かったわ。すぐ行く。」

「ルーナ!」


マルスは、ルーナを抱き寄せ、熱いキスを交わす。



「こんなに近くに居るのに、凄く遠いよね。もっと、マルスと会っていたかった。」

ルーナは、目に涙を貯めながら 精いっぱいの笑顔で、別れを言い外に出る。


マルスは、そんなルーナの後姿を見送ることしかできない。







いよいよ、Aブロックの準決勝戦が始まるようだ。


マルスは、控室に移動し、椅子に座る。
その横に、レイザーが座り、話しかけてくる。


「マルス、そろそろ出番だぞ。」

「まだ、いま始まったばかりですよ。」


会場の方から、大歓声が聞こえる。
まだ試合が始まり、10秒も経っていない。


「ほら、レヴィア団長はせっかちだからの。」

「本物のレヴィア団長なんですね。」


マルスは、立ち上がり、レイザ-と握手をし、闘技場へ向かう。


そこには、武器を破壊され、座り込むメリッサと、仁王立ちの、15~16歳のツインテールの女の子が立っていた。


「ああ、君がマルスだね。レイザー、アルルの想いを伝えちゃってよ。」

「もちろん。最初から全力で倒しにかかるつもりじゃよ。」



メリッサは、破壊された武器を拾い、マルスの方によって来る。

「マルス、あの2人、とんでもない強さだよ。注意してね。」

「はい、僕は絶対に負けません。」


マルスは、闘技場の中央に進み、魔装具(守護の聖騎士剣)を腰ベルトの鞘にしまったまま、革の手袋を装着し、こぶしを握り構える。


レヴィアは、何かに気づいたのか、口元を緩ませるが、レイザーに助言することなく、闘技場脇の日陰のベンチに座る。
しかし、審判の椅子だったようで、少し怒られたあと、壁に寄りかかって観戦している。


「マルス、肉体強化の魔法を掛けなくてもいいのか?」

「ええ、必要ありません。」

「では、わしは遠慮なく使わせてもらうぞ。」


レイザーは、肉体強化の魔法を自身にかけ、腰の細剣を引き抜き構える。レイザーは、細剣の2刀流に魔法剣を掛けて戦うようだ。


レイザーは、高速の剣術でマルスを襲う。

マルスは、攻撃を数発かわすが、連続攻撃の速度が早い、肉体強化の魔法をかけているからだろうか、以前ブックに聞いていた攻撃よりも、圧倒的に早い攻撃だ。

しかし、マルスは確信する。急所への攻撃さえ回避していれば、一撃で致命傷になることはない。逆に、時間を掛ければかけるほど、魔法剣の効果が蓄積され危険な状況になってしまうだろう。


マルスは、考えていた秘策を早めに出す。

レイザ-の突きを、手のひらで受け、両手を貫通させる。

そのまま、一気に詰め寄り、細剣の鍔を握り、動きを封じる。


「やるな。わしも若い頃、こういった戦法を取られれば、窮地に陥るだろうと考えたことがあったのだが。」

「いままで、そんな場面もなかったでしょ。冒険者は、戦いの後の事も考えなければいけないですからね。」

「ははは、そうじゃな。」


マルスは、前蹴りを放ち、レイザーの膝を折る。


「うっ、うぐぐ・・・。
 ま、まいった、降参じゃ。」


審判が勝負ありの合図を送る。


「お前さんが、必殺技や脱力の戦法を取れば、倒せたろうに、残念じゃよ。」

「そうでしょうね。ずっと、あなたの視線を感じていましたから。」


レイザーは、大笑いし、大きな声でレヴィアに告げる。




「レヴィア、マルスは英雄の子で間違いないじゃろう。わしらが見誤ったんじゃろうて。」

「そのようだね。マルス、私と戦う?
 それとも、不戦勝で勝ちを名乗る?」

「レヴィア団長。あなたと戦い、勝ちを名乗ります。」



レヴィアの口元が緩む。

「最初に言っておくけど、私は、かなり強いからね。」





レヴィアが、闘技場に上がってくる。
右手には、いつの間に取り出したのか、巨大なハンマーを軽々と持っている。
この怪力が、レヴィア団長の強さの秘密なのだろうか。
レヴィア団長が口を開く。


「マルス、別に怪力女って訳じゃないからね。そんな目で見てたから注意しておこうと思って。それに、私は、魔法は使えないから。」

「そうなんですね。僕は、父エイトの使っていた魔法は全て詠唱できます。歌を奏でることで、神級魔法を詠唱することも可能です。しかし、今日は使いません。」

「戦士同士の対決だね。」

「はい。正々堂々と勝負をしましょう。」




お互いが、握手をし、距離を取る。



マルスは、魔装具(守護の聖騎士剣)を右手に持ち、左手に腕輪状の魔装具(※魔法の力場盾フォースシールド【LV3】)から、見えない盾を発生させる。

(※魔法の力場盾フォースシールド:ルビーの部分から、ある程度任意の大きさの見えない盾を召喚する。見えない盾は、複数召喚することができ、攻撃を防ぐだけでなく、LV6までの魔法を反射させることもできる。)



レヴィアは、ハンマーを振り回している。
レヴィアの振り回すハンマーは、

ゴオォォォン!ゴオォォォォン!

と不気味な唸り声のような音を立てている。
レヴィアが巨大なハンマーを振り回し、ポーズを決める!


「ゴニョゴニョ・・・又の名を、狂える海龍王の撃槌ストリームハンマー!」



準備ができたのを確認した ダンテ王が立ち上がり、観衆を鼓舞する。

会場の興奮は最高潮に達していた。



試合開始の鐘が鳴り響く。


先制の攻撃は、レヴィアの一撃だ。マルスは、魔法の力場盾フォースシールドで防ぐが、衝撃が強く、後ろに弾き飛ばされる。飛ばされている マルスを追うように、レヴィアが走り寄ってくる。マルスは、受け身をとり、逆にレヴィアの方に突進する。


レヴィアは、ハンマーを短く持ち、マルスを迎撃しようと構えるが、マルスは、レヴィアの攻撃範囲の直前で、騎士剣を逆手に持ち替え、一気に詰め寄る。
ハンマーは接近武器のようだが、超接近戦には弱く、威力のある攻撃ができない。それは、騎士剣も同じことなのだが。マルスの場合は違った。
マルスは、守護の聖騎士剣の柄で、レヴィアの腹部を攻撃する。レヴィアは無表情のまま、後方に飛び距離を取る。


通常であれば、ダメージを与えていないと思い、作戦を変えるのだろうが、マルスは違った。レヴィアは無表情だが、距離を取るのは、連続で受ける攻撃ではないと感じとっての判断だと推測した。
そのため、レヴィアとの密着を保ったまま、マルスも移動する。


マルスは、2撃目を放つと見せかけて、レヴィアの足に、剣を突き立てる。
しかし、その攻撃を予測していたのか、レヴィアは、素早く足を引き、マルスの顔面めがけて、頭突きを放つ。

マルスは、意識を失いそうになるも、気力で耐え、レヴィアの右頬に拳をねじ込み、魔法の力場盾フォースシールドを展開し、レヴィアを吹き飛ばす。




ダンテ王や貴族たちも立ち上がり、一進一退の攻防に息をするのも忘れ、見とれている。

観衆の興奮は覚める気配がない。
それほどまでに、真の豪傑同士の闘いは、激しく美しい戦いであった。




マルスは、渾身の武器破壊ブロークンハートの構えで待ち構える。

レヴィアは、鼻血を拭きとり、ハンマーを振り回しながら、マルスに話しかける。
消費した体力を回復させているようだ。


「まいったよ。エイトみたいな魔法強化のタイプだと思ったけど、完全にアルルよりだね。」

「僕も、ここまで苦戦すると思ってませんでした。まさか、雷音の鼓動ライオンハートを披露することになるとは。」

「いまのが、ライオンハート?」

「いえ、いまから放つ、僕の必殺技です。レヴィアさん、あなたが呼吸を整えてくれたおかげで、僕も攻撃が放てそうです。」




レヴィアは、ハンマーの動きを止め、右足を前に出し、ハンマーを大きく振りかぶる。マルスと同じ構えをする。





「マルスは凄いね。すり足を独自で考え、必殺の一撃を昇華させるなんて。」


「・・・。」


「この一撃で決まるんだね。私がラアラに教えた必殺の渾身の武器破壊ブロークンハート。」


「メリッサの様子を見て、そうだろうと思いました。」



2人の口元が、一瞬だけ緩む。





会場中が一気に静まり返る。



小鳥の声や、木々の風に騒めく音が超満員の会場に響き渡る。






空の雲が太陽のまぶしい光を遮る。


雲が流れていく。




また雲の隙間から、光が差し込んだ、その瞬間!



同時に放たれた必殺の一撃だった。




マルスの守護の聖騎士剣に致命傷の傷が入る。



しかし、レヴィアの魔装具にも亀裂が入る。

その亀裂は どんどん広がり、伝説の巨大龍 レヴィアタンの牙で作られたハンマーが、音を立て粉々に砕け散る。



審判がマルスに軍配を上げる!!



会場が、いままでため込んだ熱気を吹き出すように、激しく揺れるほどの歓声に包まれた。


レヴィアが、マルスに近寄ってくる。


「まさか、神々の魔装具が、人の手で作られた魔装具に壊されるとは思わなかったよ。」

「すみません。」

「気にすることはない。しばらく使えないだけだから。」


レヴィアは、マルスに別れを告げて、レイザーたちと闘技場を後にした。





興奮が冷めない会場の中、ダンテ王が、闘技場まで降りてきて、マルスと謁見する。
会場は、マルスの願いを聞こうと、静まり返る。

「騎士見習いマルス、素晴らしい戦いだった。そなたに褒美を取らせることができるが、そなたの望む褒美を言うがよい。」


近衛兵や騎士団の先輩たちが、観客に気づかれないように、集まってくる。

みんな悲しそうな表情でマルスを見ている。


マルスは、笑顔で答える。


「国王陛下、私は騎士団見習いの団員です。私利私欲の為に戦ったのではありません。
今後、王国と、そこに暮らす民の、1000年の繁栄の為に戦いました。
ただ、1つだけ願いを叶えて頂けるのであれば、騎士見習いルナの除名の解除を願い出たい。共に王国を助ける為に騎士を目指す仲間であります。」

会場中の民衆が、ダンテ国王の反応を見ている。



ダンテ国王は、マルスを睨むが、すぐに両手をあげ、会場中に宣言する。


「いまここに宣言しよう。我、ダンテの名において、騎士見習いルナの除名処分を解除し、今後、マルスと共に騎士を目指す権利を保障しよう。」




会場中が、ダンテ国王を称える。

「「「ダンテ、ダンテ、ダンテ!」」」



王族の観覧席では、ルーナが泣いているのが分かった。

目に涙を貯めながら、マルスを最高の笑顔で見つめている。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

転生先はご近所さん?

フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが… そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。 でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

処理中です...