【CHANGEL】魔界姫マリーと純粋な見習い天使ジャスの不思議な魔界記

黒山羊

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魔界姫

004・本当に大切なこと

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マリーは、構えていた槍の矛先を ゆっくりと下げる。

「ジャス、エイト、そこをどきなさい。
 リッチモンドに話があるの。」

「・・・分かりました。
 私は、マリーさんを信じます。」


マリーは、座り込むリッチモンドに近づき、片膝をつき、同じ目線で声をかける。


「メルディエゴの養成所、大義よ。
 きっと乱心する前の お父様も称賛すると思う。
 あなたの最期の願い、私が必ず叶えるから。」

「マリー様・・・。」


「だけど・・・。
 罪は罪、主君への裏切りは 非道な悪魔といえど大罪よ。
 その罪は償う必要があるの。それは分かるわよね。」

「・・・はい。
 裏切りの罪、死して償います。」


マリーとリッチモンドのやり取りを見守っていたジャスが、マリーに駆け寄り、マリーを止める。

「ちょっと待ってください。
 マリーさん、リッチモンドさん!
 死んで罪を償うなんて意味ないじゃないですか!
 本当に償う気があるのであれば、生きて罪を償うべきです!」

「・・・ジャスちゃん、悪魔には悪魔の掟があるのよ。
 リッチモンド、目をつぶりなさい。」

マリーが立ち上がり、再び槍を構える。
リッチモンドも目を閉じ、祈るように頭を垂れる。

「マリーさん!!!」


マリーの槍は、リッチモンドの重厚なマントを貫き、背後の壁に突き刺さる。

「・
 ・
 ・
 ・
 ・リッチモンド、いまの一撃で あなたは死んだのよ。
 いまこの瞬間から、魔界姫マリーの配下、暗黒のリッチとして新たな道を歩みなさい。」

「・・・マリー様!!?」

「あなたが死んでしまったら、誰が魔王城の財産管理をするのよ!
 それに、あなたは徳を貯めて家族に再開するチャンスがある。
 こんなところで無駄死にしてはいけないわ。」

マリーの一言に、リッチモン・・・暗黒のリッチは涙を流して感動している。

「は、はい。マリー様・・・。
 私、暗黒のリッチは、マリー様に永久の服従を誓い、配下になることを契約します。」

暗黒のリッチの体にも、マリーの城にあった紋章と同じ紋章が光り輝き刻まれていく。






~魔王城~

事後処理を暗黒のリッチに任せて、先に魔王城に戻ってきたマリーたち。
そこに同行して戻ってきたハンが声をかける。

「マリー様、リッチモンドを見つけ出した者の褒美って、ジャスさんに決まったんスか?」


「・・・そうだったわね。
 うやむやになってたけど、ジャスちゃんの悪を追い詰める観察眼がなければ成しえなかった結果だもんね。
 やっぱり ハンの言う通り、褒美は ジャスちゃんかな。」

「え、そんな、褒美だなんて・・・。
 わたし、不思議な振子時計だなーってくらいにしか考えてなかったですから。」

「ジャスさん、もらっておいた方がいいッスよ。
 マリー様の面子もあるし、それに名刀を装備している天使だなんて、カッコいいじゃないッスか!」


(名刀を装備する天使・・・。
 それってイイかもしれない・・・。)



・~・~・~・~・~・~・~・


~ジャスの妄想迷作劇場・
 美少女天使降臨、星空より愛よ届け~ 


半魚人的な怪物
 「グエェ、グエェ!人間どもめ食っちまうぞー。」

逃げ遅れた少女
 「お母さーん、助けてー!」

少女の母
 「ああー娘を返して下さい、お願いします!」

半魚人的な怪物
 「もう遅いわ、グエェ、グエェ!」

少女の母
 「誰か・・・
  天使様、助けて下さい。」


ズガガガーン!


半魚人的な怪物
 「な、何だ今の衝撃は!?」

刀を持った可憐な美少女
 「そこの化け物!その女の子を離しなさい!」

半魚人的な怪物
 「貴様、何者だ!」

刀を持った可憐な美少女
 「少女の命を守るため、空より舞い降りた、
  愛と正義の美少女天使、スーパージャスティス!
  愛の天罰、落とさせていただきます!」

半魚人的な怪物
「お、おのれーーーー!」


・~・~・~・~・~・~・~・


「ジャスさん、ジャスさん、大丈夫ッスか?
 急にオノレー!とか、どうしたんスか?」

「あ、あの、いや、な、何でもないです。」

「何でもないわけないじゃん。
 ジャスちゃん、ヨダレ垂れてるよ。」

「はっ!(じゅるる。)」

恥ずかしそうに頬を赤くするジャス。
不審者扱いするマリーとハン。


「まぁ、ジャスちゃんにだったら名刀を授けてもいいかな。」

「俺もそう思うッス。
 よかったッスね。ジャスさん。」

「あ、ありがとうございます。
 私、名刀が似合うヒロイン目指します!!」

「おっ、その意気込み!
 さすがジャスちゃんだね!
 じゃあ、持ってくるから、ちょっとココで待っててよ。」

「はい!
 いつまでも待ち続けます!!!」

「そんなに時間かかんないと思うッスよ。
 先週、俺が部屋の整理をしたばかりッスから。」




~30分後~

「ハンさん、なかなか戻ってこないですね。
 マリーさん、焦らしてるんでしょうか。」

「ありえるッス。
 何かサプライズでも思いついたのかもッスね。」




~1時間後~

「他の使い魔さんたちも戻ってきてますね。」

「みんな揃うのを待ってるとかッスかね。」



~3時間後~

「マリーさん、ちょっと遅くないですか?」

「ジャスさんが、いつまでも待ち続けるって言ったからじゃないッスか?
 俺も、さっきからトイレを ずっと我慢してるッス。」



~5時間後~

ようやく城の中からマリーが顔を出す。

「ごめんごめん、ちょっと部屋が散らかってて、探すのに時間がかかっちゃった。」

「ちょっとって次元じゃないですよ!」

「お、俺もう限界ッス!」

「では、気を取り直して、ジャスへの授与式を始めるから、他の配下や使い魔たちも呼んできてよ。」

「了解ッス!
 先にトイレに行っていいッスか!!」

「う、うん。
 我慢はよくないよ。」

(誰のせいで・・・。)
ジャスもハンも、そう思ったが口にすることは出来なかった。


しばらくすると、ハンが声をかけたのだろう。
使い魔や配下の悪魔たちが、マリーの元へ集結していた。
マリーは疲れている家臣に気を使ってか、授与式を簡略的に済ませ、ジャスに褒美を授与する。


「ジャスちゃん、これからも魔界の権力奪回の為に頑張ってね!」

「・・・なんだか複雑な心境ですけど、ありがとうございます。」

名刀キル・グラムを受け取ったジャスは、さっそく装備してみる。


「「「おおぉぉ!似合うニャン!」」」
「「「さすがアネゴ!美しいぜ!」」」


「みなさん、ありがとうございます。」

「さすがジャスさんは、勇気あるニャン!
 俺はキル・グラムの呪いが怖くて装備できないニャン!」

「え、呪い?」

「ええ、キル・グラムは神殺しの魔剣ッスよ。
 並の悪魔や使い魔は、装備すれば呪われてしまうッス。
 やっぱり天使は、呪いの耐性があるって噂は本当だったんスね。」

「えぇぇぇ!
 神殺しの魔剣って!
 そんなの装備してたら、堕天されちゃいますよ!
 まずい!!!
 すぐに外さなくっちゃ!
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・あ、あれ?
 おかしいな。なんで体から離れないんだろう?」


「・・・ジャスちゃん、すでに呪われてんじゃない?」

「ど、ど、どうしましょう・・・。」

「あきらめるしかないッスね。」
「魔剣が納得するまで神殺しをしたらいいらしいニャン。」
「いっそのこと、堕天したらどうニャンか?」

「みなさん、他人事だと思って・・・。」

涙目になるジャスに、マリーが声をかける。

「大丈夫よ。
 神殺しの魔剣っていっても、私が生まれる前から宝物庫に眠っていた物だから、実物を見たことのある天使なんていないって。
 堂々としていれば、バレないよ。」

「・・・本当ですか?」

「う、うん。
 たぶん、きっと大丈夫!
 わ、私を信じて!
 それに、見た目は凄くいいよ!
 ダークヒロインって感じ。」

「ダークヒロイン・・・。
 そうですよね。
 私、マリーさんを信じてみます。」


「「「えぇっ!」」」


(俺なら、いまのは信じれないニャンね。)
(さすが天使ッス。純粋ッス。)
(だけど、このままに放置するのは、さすがに可哀想ニャン。)
(ジャスさんが天界に帰らないように、俺らで秘策を立てるしかないニャン。)
(そうッスね。俺、ちょっと秘策があるッス。)
(ひそひそ・・・・・・。)

(さっそく準備に取り掛かるッス!)

「「「エイエイオォォ!」」」


「使い魔さんたち、どうしたんでしょうか?」

「さぁ?」



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