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銀河系地球人
026・人間の欲望は底なしに深く虚しく・続
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~司令艦・作戦会議室~
小さめの部屋に円を描くように設置された椅子に 複数名の老人たちが座っている。
そんな老人たちは、それぞれに意見を出し、議論を重ねている様子だ。
「そもそも悪魔どもに屈するなど論外だ!」
「しかし、魔王が提示したという土地があれば、我々が永住しても問題がないのでは?」
「何をバカなことを!
敵は悪魔の魔王なんだぞ、我々を誑かしているだけだ!
それに考えてみるんだ、悪魔どもは我々人類の何倍もの土地を所有し悠々と暮らしている。
いずれ何百年か時が経ち 荒野の開拓が終われば、我々の末裔は静粛されるに決まっている。
いま戦わずして、いつ戦うんだ!
いま戦えば全てを手に入れることができるんだぞ!」
「それもそうだな。
いまこそ アレを起動する時かもしれない。」
「アレとは・・・まさか!」
「そう、all the people・・・異魔神だ。」
「しかし、まだ未完成では・・・。」
「いや、すでに完成している。
あとは、きっかけがあれば発動するのだが・・・。」
「きっかけとは?」
「異魔神に強いストレスを与えればいい。
自我が崩壊するほどのな。」
「自我が崩壊するストレス・・・。
しかし、いかなる拷問をも耐える あの子にどうやって・・・。」
「彼女から母親を取り上げてみては?」
「なるほど・・・。
魔王から母親が殺されたとなれば、強いストレスを受け、その矛先は魔王に向くということか・・・。
悪くない・・・いや、むしろ最善の策だな。」
「魔王を異魔神に殺させ、その後、体内の起爆装置を起動すれば、異魔神を破壊できる。
それから ゆっくりと魔界を制圧していけばいい。
安心しろ。我々には 全能の神ベルゼブイ様がついているのだから。」
~死人の荒野
・母艦マザーグース内~
マリー、ジャス、ノーサの3人は、死人の荒野に停泊している宇宙戦艦の母艦を見学しに訪れていた。
本当の目的は、この艦隊に縁ある使い魔のリストを届けに来たのだ。
使い魔たちも、家族や親せきに合うことができ、とても喜んでいた。
マリーたちは、再開の時間を与える間、持て余した時間を宇宙戦艦の見学に充てていたのだ。
このとき 母艦を案内していたのは、なぜか地球人種より母艦の構造に詳しい使い魔のフォンで、かなり得意気に案内して回る。
「この宇宙戦艦は、俺の一族たちが代々命を懸けて設計していった発明品なんだニャン。
戦艦の構造から、構築まで無駄のない設計。極端な重力を受けても自重で破損しないデザインと材質。
単独で宇宙航行ができるだけでなく、護衛艦にも食料や燃料を供給できるリサイクルシステム。
全てにおいてパーフェクトなんだニャン。
その証拠に、何千年も 俺たちの設計した戦艦が基盤になってるニャン!
・
・
・
って、あれ?
マリー様、あまり興味がないのかニャン?」
説明中に あくびをするマリーにフォンが声をかけてきた。
「ごめんごめん。
ちょっと難しい話だったから。
ねえ、フォン。そんなに凄い能力があるんなら、転送装置を改良して、天界にある審判の門だっけ?
あれみたいに、指標玉がなくても好きな場所に移動できるようにならないかな?」
「審判の門の原理が分かれば、問題ないニャン。
しかし、魔法は俺の専門外だニャン。
せめて、Dr.リュウマが居ればもっと違った結果になると思うニャン。」
「Dr.リュウマ?
知り合いの科学者なの?」
「いや、直接の面識はないニャン。
太古の文献によれば、人間で初めて魔法を使った科学者らしいニャン。
もう何千年も前の話だから、魔界に転生してても会うこともないと思うニャン。
マリー様の元に来れば、もしかすればと考えてた時期もあったけど、会えなかったニャン。
まあ 仕方ないニャン。」
「そうね・・・。
魔法を使える使い魔とか話を聞いたこともないし、魔界に転生してない可能性もあるわね。
そうすれば、天界に転生してて、すでに人間になってるとかかもね。」
そんな会話をしながら、母艦の中を散策して回っていると、見慣れた母子がマリーに近づいてきた。
母親は、艦長のミネルヴァのようだ。
「マリー様、この度は 娘たちの命を救っていただき、ありがとうございます。」
「気にすることないよ。
ミネルヴァ、娘さんを大切にね。」
ミネルヴァたち母子は、簡単に挨拶をすると、足早に何処かへ歩いて行った。
その様子をみながら、ジャスが声をかけてきた。
「仲が良さそうな親子でしたね。
娘さんの青い髪は、お父さん似なんでしょうかね?」
「そうかもね、母親の髪の色とは全然違うからね。
それにしても、何を慌てて移動してたのかな?」
マリーが疑問に思ったことを口にすると、何かを心配したのか 母艦の艦長が答えてくれた。
「たぶん、定期検診の日だからですよ。
ミネルヴァ艦長の娘 エリーゼは、生まれたときから体が弱く、週に1度、定期検診を受けているみたいですから。
決して、マリー様から逃げて行ったりでは ありませんよ。」
「・・・艦長、そんな心配はしてないよ。
艦長は、そんな風に私を見てたの?」
「も、申し訳ありません。
そういった意味では・・・。」
言い訳を考えているのか、言葉に詰まった艦長をフォローするようにジャスがマリーに声をかける。
「まあ、いいじゃないですか。
ゆっくりと仲良くなっていけば。
早く、食堂に行ってみましょうよ!」
「はぁ、ジャスちゃんらしいね。
フォン、艦長、先にお昼にしようよ。」
~マザーグース内・食堂~
3人は 食堂の自動販売機で食事を注文し、座席について食事を始める。
艦長は定期報告があるとのことで、席を外してしまった。しばらくすると、3人の周囲に人だかりができ始める。
マリー、ジャス、ノーサは人間の目から見ても魅力的だし、友好的な種族だと分かったから安心して近づけるのだろう。
「マリーさん、ちょっと視線が気になって食べれないですね。」
「そうだね。見られるのも いい気分じゃないよね。」
「そう?
ノーサは嬉しいし、もっともっと見てほしいの。」
「「「・・・。」」」
昼食を終えた3人の元に、母艦の艦長が慌てた様子で戻ってきた。
「マリー様、少し耳に入れたい情報がございます。
いまから艦長室に お越しいただけないでしょうか。」
マリーたち一行は、艦長の案内で艦長室へと移動を始めた。
10畳ほどの狭い艦長室に着くと、艦長が小声で話し始めた。
「マリー様、先ほど上層部からの命令で、マリー様たちを捕らえ、魔界を再度攻撃するように指令がありました。」
「それで、私たちを部屋に閉じ込めようとして、この狭い部屋に連れてきたの?」
「いえ、ここは本当に私の部屋です。
私は個人的に、マリー様と争いをしたくありません。」
艦長の意見に疑心の目を向けるマリーに、艦長が理由を説明してくれた。
「実は、私には一人息子のベンがいました。
しかし、ベンは成人した年の戦争で命を落としました。」
「戦争?」
「はい、この母艦もリサイクルで成り立っていますが、限度があります。
定期的に星々を襲い、物資を調達する必要性があるのです。
そこで襲った星の原住民から反撃にあい、命を落としたのです。」
「・・・もしかして。」
「いいえ、持ってきてくださった、この艦隊に縁ある使い魔たちの名簿を拝見させてもらいましたが、息子の名前はありませんでした。
しかし、家族であった使い魔たちと再会する隊員を見たとき、私の心は決まりました。
たとえ上層部が どんな判断を下しても、かならずマリー様の味方になると・・・。
ですから、私を信じてください。」
「ええ。分かったわ。
私たちは具体的に何をすればいいの?」
「はい、これから私が母艦の扉を全て開放し、メインシステムを強制終了させます。
その時に、母艦から脱出してください。
部屋の明かりが消え 非常灯が付いた時が、そのタイミングになります。」
艦長の決意のようなものを、その瞳から感じ取ったマリーが寂しげに頷くと、無理に笑顔をみせていた艦長は部屋を出ていった。
30分もしないうちに、部屋の扉が全開になり、遠くの方で爆発音が鳴り響き、部屋の明かりが消える。
「さっきの爆発音は何なの?
マリー、爆発音の説明とかあった?」
マリーは 寂しげな表情のまま動けない。
マリーの代わりにフォンが説明した。
「艦長が自爆したニャン。
メインシステムを強制終了するスイッチなんてあるわけないニャン。
そんなことすれば、宇宙空間で人間は死んでしまうニャン。
艦長は、セキュリティゲートを欺くために、爆薬を飲み、そのまま物理的にマザーコンピューターを破壊したニャン。
マリー様、いまの混乱のうちに魔王城へ引き上げるニャン!」
マリーたちが母艦を抜け出し 魔王城付近まで帰りつくと、上層部より直接命令を受けたからなのだろうか、宇宙戦艦の半数が空へと舞い上がり 魔王城を目指して動き始めた。
「マリー半分くらいは、争わないみたいなの。
どうする?
攻撃されたら撃ち落とす?」
「・・・ええ、ノーサの魔法の力を借りてもいいかな。
私の魔法と合わせれば・・・。」
「マリーさん!
ノーサさん!
話し合えば分かるんじゃないですか?
せっかく分かり合えそうなのに!
マリーさんの防御魔法で攻撃を防いで、また話し合うとか・・・」
「ジャス、ダメなの!
魔王ドランサーを倒し、魔王として有名になったマリーは、裏切りを黙認できないの。
黙認してしまえば、もっともっと魔界で争いが起きるの。」
「でも・・・。」
マリーは 攻撃命令を出すために、ジャスと目を合わせることなく魔王城へと入っていく。
呆然と立ち尽くすジャスに、ノーサが声をかける。
「一番側にいるジャスが マリーの気持ちを考えないで どうするの。
誰がマリーを支えてあげるの?
いま一番 辛いのはマリーなんじゃないの?」
ノーサも魔王城へと入っていく。
しばらくすると、慌てた様子のハンが魔王城から出てきた。
「あ、ジャスさん!
いまから裏切者への制裁が始まるッス。
早く魔王城の中に避難するッス!」
「あ、あの、ハンさんは・・・?」
「俺は、裏切らなかった人間の生き残りを保護する為に、周辺の悪魔に伝令をして回るッス!」
ハンは、そういうと駆け足で死人の荒野へと駆けて行った。
「私は・・・。
ハンさん、待ってください!
私も一緒に連れて行ってください!」
ジャスも、ハンの後を追って 死人の荒野へと全力で走り出した。
→027へ
小さめの部屋に円を描くように設置された椅子に 複数名の老人たちが座っている。
そんな老人たちは、それぞれに意見を出し、議論を重ねている様子だ。
「そもそも悪魔どもに屈するなど論外だ!」
「しかし、魔王が提示したという土地があれば、我々が永住しても問題がないのでは?」
「何をバカなことを!
敵は悪魔の魔王なんだぞ、我々を誑かしているだけだ!
それに考えてみるんだ、悪魔どもは我々人類の何倍もの土地を所有し悠々と暮らしている。
いずれ何百年か時が経ち 荒野の開拓が終われば、我々の末裔は静粛されるに決まっている。
いま戦わずして、いつ戦うんだ!
いま戦えば全てを手に入れることができるんだぞ!」
「それもそうだな。
いまこそ アレを起動する時かもしれない。」
「アレとは・・・まさか!」
「そう、all the people・・・異魔神だ。」
「しかし、まだ未完成では・・・。」
「いや、すでに完成している。
あとは、きっかけがあれば発動するのだが・・・。」
「きっかけとは?」
「異魔神に強いストレスを与えればいい。
自我が崩壊するほどのな。」
「自我が崩壊するストレス・・・。
しかし、いかなる拷問をも耐える あの子にどうやって・・・。」
「彼女から母親を取り上げてみては?」
「なるほど・・・。
魔王から母親が殺されたとなれば、強いストレスを受け、その矛先は魔王に向くということか・・・。
悪くない・・・いや、むしろ最善の策だな。」
「魔王を異魔神に殺させ、その後、体内の起爆装置を起動すれば、異魔神を破壊できる。
それから ゆっくりと魔界を制圧していけばいい。
安心しろ。我々には 全能の神ベルゼブイ様がついているのだから。」
~死人の荒野
・母艦マザーグース内~
マリー、ジャス、ノーサの3人は、死人の荒野に停泊している宇宙戦艦の母艦を見学しに訪れていた。
本当の目的は、この艦隊に縁ある使い魔のリストを届けに来たのだ。
使い魔たちも、家族や親せきに合うことができ、とても喜んでいた。
マリーたちは、再開の時間を与える間、持て余した時間を宇宙戦艦の見学に充てていたのだ。
このとき 母艦を案内していたのは、なぜか地球人種より母艦の構造に詳しい使い魔のフォンで、かなり得意気に案内して回る。
「この宇宙戦艦は、俺の一族たちが代々命を懸けて設計していった発明品なんだニャン。
戦艦の構造から、構築まで無駄のない設計。極端な重力を受けても自重で破損しないデザインと材質。
単独で宇宙航行ができるだけでなく、護衛艦にも食料や燃料を供給できるリサイクルシステム。
全てにおいてパーフェクトなんだニャン。
その証拠に、何千年も 俺たちの設計した戦艦が基盤になってるニャン!
・
・
・
って、あれ?
マリー様、あまり興味がないのかニャン?」
説明中に あくびをするマリーにフォンが声をかけてきた。
「ごめんごめん。
ちょっと難しい話だったから。
ねえ、フォン。そんなに凄い能力があるんなら、転送装置を改良して、天界にある審判の門だっけ?
あれみたいに、指標玉がなくても好きな場所に移動できるようにならないかな?」
「審判の門の原理が分かれば、問題ないニャン。
しかし、魔法は俺の専門外だニャン。
せめて、Dr.リュウマが居ればもっと違った結果になると思うニャン。」
「Dr.リュウマ?
知り合いの科学者なの?」
「いや、直接の面識はないニャン。
太古の文献によれば、人間で初めて魔法を使った科学者らしいニャン。
もう何千年も前の話だから、魔界に転生してても会うこともないと思うニャン。
マリー様の元に来れば、もしかすればと考えてた時期もあったけど、会えなかったニャン。
まあ 仕方ないニャン。」
「そうね・・・。
魔法を使える使い魔とか話を聞いたこともないし、魔界に転生してない可能性もあるわね。
そうすれば、天界に転生してて、すでに人間になってるとかかもね。」
そんな会話をしながら、母艦の中を散策して回っていると、見慣れた母子がマリーに近づいてきた。
母親は、艦長のミネルヴァのようだ。
「マリー様、この度は 娘たちの命を救っていただき、ありがとうございます。」
「気にすることないよ。
ミネルヴァ、娘さんを大切にね。」
ミネルヴァたち母子は、簡単に挨拶をすると、足早に何処かへ歩いて行った。
その様子をみながら、ジャスが声をかけてきた。
「仲が良さそうな親子でしたね。
娘さんの青い髪は、お父さん似なんでしょうかね?」
「そうかもね、母親の髪の色とは全然違うからね。
それにしても、何を慌てて移動してたのかな?」
マリーが疑問に思ったことを口にすると、何かを心配したのか 母艦の艦長が答えてくれた。
「たぶん、定期検診の日だからですよ。
ミネルヴァ艦長の娘 エリーゼは、生まれたときから体が弱く、週に1度、定期検診を受けているみたいですから。
決して、マリー様から逃げて行ったりでは ありませんよ。」
「・・・艦長、そんな心配はしてないよ。
艦長は、そんな風に私を見てたの?」
「も、申し訳ありません。
そういった意味では・・・。」
言い訳を考えているのか、言葉に詰まった艦長をフォローするようにジャスがマリーに声をかける。
「まあ、いいじゃないですか。
ゆっくりと仲良くなっていけば。
早く、食堂に行ってみましょうよ!」
「はぁ、ジャスちゃんらしいね。
フォン、艦長、先にお昼にしようよ。」
~マザーグース内・食堂~
3人は 食堂の自動販売機で食事を注文し、座席について食事を始める。
艦長は定期報告があるとのことで、席を外してしまった。しばらくすると、3人の周囲に人だかりができ始める。
マリー、ジャス、ノーサは人間の目から見ても魅力的だし、友好的な種族だと分かったから安心して近づけるのだろう。
「マリーさん、ちょっと視線が気になって食べれないですね。」
「そうだね。見られるのも いい気分じゃないよね。」
「そう?
ノーサは嬉しいし、もっともっと見てほしいの。」
「「「・・・。」」」
昼食を終えた3人の元に、母艦の艦長が慌てた様子で戻ってきた。
「マリー様、少し耳に入れたい情報がございます。
いまから艦長室に お越しいただけないでしょうか。」
マリーたち一行は、艦長の案内で艦長室へと移動を始めた。
10畳ほどの狭い艦長室に着くと、艦長が小声で話し始めた。
「マリー様、先ほど上層部からの命令で、マリー様たちを捕らえ、魔界を再度攻撃するように指令がありました。」
「それで、私たちを部屋に閉じ込めようとして、この狭い部屋に連れてきたの?」
「いえ、ここは本当に私の部屋です。
私は個人的に、マリー様と争いをしたくありません。」
艦長の意見に疑心の目を向けるマリーに、艦長が理由を説明してくれた。
「実は、私には一人息子のベンがいました。
しかし、ベンは成人した年の戦争で命を落としました。」
「戦争?」
「はい、この母艦もリサイクルで成り立っていますが、限度があります。
定期的に星々を襲い、物資を調達する必要性があるのです。
そこで襲った星の原住民から反撃にあい、命を落としたのです。」
「・・・もしかして。」
「いいえ、持ってきてくださった、この艦隊に縁ある使い魔たちの名簿を拝見させてもらいましたが、息子の名前はありませんでした。
しかし、家族であった使い魔たちと再会する隊員を見たとき、私の心は決まりました。
たとえ上層部が どんな判断を下しても、かならずマリー様の味方になると・・・。
ですから、私を信じてください。」
「ええ。分かったわ。
私たちは具体的に何をすればいいの?」
「はい、これから私が母艦の扉を全て開放し、メインシステムを強制終了させます。
その時に、母艦から脱出してください。
部屋の明かりが消え 非常灯が付いた時が、そのタイミングになります。」
艦長の決意のようなものを、その瞳から感じ取ったマリーが寂しげに頷くと、無理に笑顔をみせていた艦長は部屋を出ていった。
30分もしないうちに、部屋の扉が全開になり、遠くの方で爆発音が鳴り響き、部屋の明かりが消える。
「さっきの爆発音は何なの?
マリー、爆発音の説明とかあった?」
マリーは 寂しげな表情のまま動けない。
マリーの代わりにフォンが説明した。
「艦長が自爆したニャン。
メインシステムを強制終了するスイッチなんてあるわけないニャン。
そんなことすれば、宇宙空間で人間は死んでしまうニャン。
艦長は、セキュリティゲートを欺くために、爆薬を飲み、そのまま物理的にマザーコンピューターを破壊したニャン。
マリー様、いまの混乱のうちに魔王城へ引き上げるニャン!」
マリーたちが母艦を抜け出し 魔王城付近まで帰りつくと、上層部より直接命令を受けたからなのだろうか、宇宙戦艦の半数が空へと舞い上がり 魔王城を目指して動き始めた。
「マリー半分くらいは、争わないみたいなの。
どうする?
攻撃されたら撃ち落とす?」
「・・・ええ、ノーサの魔法の力を借りてもいいかな。
私の魔法と合わせれば・・・。」
「マリーさん!
ノーサさん!
話し合えば分かるんじゃないですか?
せっかく分かり合えそうなのに!
マリーさんの防御魔法で攻撃を防いで、また話し合うとか・・・」
「ジャス、ダメなの!
魔王ドランサーを倒し、魔王として有名になったマリーは、裏切りを黙認できないの。
黙認してしまえば、もっともっと魔界で争いが起きるの。」
「でも・・・。」
マリーは 攻撃命令を出すために、ジャスと目を合わせることなく魔王城へと入っていく。
呆然と立ち尽くすジャスに、ノーサが声をかける。
「一番側にいるジャスが マリーの気持ちを考えないで どうするの。
誰がマリーを支えてあげるの?
いま一番 辛いのはマリーなんじゃないの?」
ノーサも魔王城へと入っていく。
しばらくすると、慌てた様子のハンが魔王城から出てきた。
「あ、ジャスさん!
いまから裏切者への制裁が始まるッス。
早く魔王城の中に避難するッス!」
「あ、あの、ハンさんは・・・?」
「俺は、裏切らなかった人間の生き残りを保護する為に、周辺の悪魔に伝令をして回るッス!」
ハンは、そういうと駆け足で死人の荒野へと駆けて行った。
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ハンさん、待ってください!
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