【CHANGEL】魔界姫マリーと純粋な見習い天使ジャスの不思議な魔界記

黒山羊

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大魔王

048・嵐の前

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不穏な空気のする方へ走るジャスの持つ指標玉に、世界樹の奪取に成功したという内容の文字が浮かび上がる。
強張った表情のジャスは 安堵の表情を浮かべ、いつもの笑顔をみせる。
ジャスは、その走り続ける足を止め、気持ちを整理するように目を閉じる。

(よかった、これでマリーさんは助かるんだ。
 だけど・・・。)


ジャスの頭の中を、様々な思いが駆け巡る。
もし、魔界で暮らすことがなければ、この全身を襲ってくるような悪意に気付かなかったかもしれない。
もし、悪魔たちのことを知らなければ、この悪意に気付いたとしても、見て見ぬフリをしていたかもしれない。
もし、仲間たちと出会わなければ、このまま逃げ出すことを選択したかもしれない。
もし・・・。

もしも、マリーと出会えていなければ、立ち向かう決意し 勇気を振り絞ることが出来なかっただろう。



何かを決心したジャスの表情から、優しい笑顔も消え、強い意志をした決意の表情へと変わった。
その決意とは、全身を襲ってくる悪意の正体を突き止め悪意の根源を断ち切るという決意であった。


指標玉を起動せずに先に進もうとするジャスに、背後から追いついてきたノーサが声をかける。

「ジャス、もう世界樹は見つかったと思うの。
 それなのに、どこに行くつもりなの?」

「ノーサさん、わたし、この翼に伝わってくる悪意を見逃すことが出来ません。
 ・
 ・
 ・
 だって、天使ですから。」

可愛らしい笑顔を見せるジャスに、すこし頬を染めながらノーサも笑顔で答える。

「ふーん、悪意・・・?
 まあ、その、よく分かんないけど、ジャスが行くんなら、ノーサもついて行こうと思うの。
 ジャスだけだと戦えないだろうから。」

「ノーサさん、ありがとうございます。」

「お礼とかいいの。ノーサが決めたことだから。」

ジャスは、力強く頷き、不穏な気配の方へと再び足を進める。






そのころ、正面突破してきた、大魔王ロロノア、魔王マダム・オカミ、魔戦長ベッチ、使い魔ハンは、何かに引き寄せられるように地下へと続く階段を降りていた。

「みんな、どうしたんスか?」

「ハンの兄貴、なにか地下から変な気配を感じるんだぜ。まるで生まれながらの天敵がいるような・・・。
 きっと、大魔王ロロノアも魔王マダム・オカミも、その気配を感じて地下に降りてるんだと思うぜ。」

全身の毛を逆立てながら、恐怖からか小刻みに震えるように魔戦長ベッチが答える。
その答えに同意するように、魔王マダム・オカミが頷く。

「そうね、地下に何か気配を感じるわ。
 きっと、、、いや、この気配は考えたくもないわね。」


魔王マダム・オカミは何かに気付いているようだが、言葉にすることをためらった。
その濁した言葉を代弁するかのように、大魔王ロロノアが口を開く。


「この気配、エイルシッド王のような気配にも感じるな。
 しかし・・・。」

「やめて!
 エイルシッド様なわけないじゃない!」

ロロノアの言葉を遮るように、マダム・オカミが耳を塞ぎながら大きな声で否定する。

4人は、特に気配の強い部屋の前で立ち止まった。
扉を開けるのも躊躇するような禍々しい気配に誰も扉を開けられずにいた。

すると、背後から聞きなれた声が聞こえて来た。


「あれ?
 ジャス、あれ、ハンたちじゃない?」

「ほんどだ、どうして・・・?」


悪意に導かれるようにやってきたジャスたちは、悪意の感じる部屋の前で、4人と合流する。
ジャスとノーサを見つけたハンが慌てて駆け寄ってくる。


「ジャスさん、何してるッスか!?
 世界樹も見つかったから早くマリー様の元へ帰るッス!」

ハンの言葉にジャスは首を横に振る。

「ハンさん、いま逃げてしまったらダメなんです。
 いま、この扉の先で何か邪悪なものが目覚めようとしてます。
 このまま悪を見過ごすわけには いきません!」

ジャスの決心した表情に、ハンは頷き答える。

「ジャスさん、もし危険だと感じたら逃げ・・・。
 マリー様に応援を頼む為に魔王城へ帰還してほしいッス。
 この役目は、俺らじゃないッス。ジャスさんの役目ッス。
 それだけ約束してもらえるッスか?」

「はい。」


ハンはジャスの言葉に頷くと、ノーサとベッチにも声をかける。

「二人には、ジャスさんの護衛を頼むッス。
 この先にいる相手次第では、俺らが束になっても敵う相手ではないかもしれないッスからね。」

「わかったの。ノーサは最初からそのつもりなの。」
「わかったぜ、ジャス姉さんのこと、任されたぜ!」


みんなは、それぞれに目を合わせあい、扉に手をかける。


「(エイルシッド様・・・)みんな、準備はいい?」

「はい!」
「うむ。」
「はいッス!」
「OKなの。」
「おう!」


それぞれが力を込め扉を開ける。
扉は、音もなく開ききった。


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