青春サイダー・掌編集

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中2・陸上部・聖二の秋

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総体でほとんどの3年生が引退して、俺たちがチームの中心になった中2、秋。俺はショート・スプリンターのブロック長になった。
俺の専門は100m。先輩がいなくなったので4継のアンカーも任された。
この間の市内新人戦では100mで初めて3位に入賞出来たし、4継では優勝することが出来た。最近、すごく調子がいい。
しかし俺は目先に地区新人戦がある今、アップで外周を走っている時に石に躓き、酷いコケ方をしてしまった。足首を捻挫し、これじゃあ走れない。なんでこんな不注意なんだろう、俺…。

もう100mは諦めるとして、4継は?この間、4継で県大会に出ようって仲間と約束したばかりなのに。新チームになって早速裏切り者になってしまう。なんとか治せば、いや、治りきらなくても予選と決勝の2本だけなら走れるかもしれない。

帰宅途中、智に声をかけられた。智は同じショートの仲間だ。
「聖二、ブロック長だからってあんまり気負うなよ?スポーツに怪我はつきものなんだし。俺ら頼れよ」
「でも、まだあと1週間あるから。ギリギリ出られると思う。ただの捻挫だし」
「やめとけ」
後ろから、駅伝を走るために残っている滝本先輩がやってきた。
「お前も村瀬のこと知ってるだろ?あいつは長距離だけどな。怪我抱えながら周りの無理押し切って3km走って、結局悪化して陸上やめる羽目になったんだよ。まぁ、お前より酷い怪我だったのもあるけど。お前は大丈夫かもしれない、でも大丈夫じゃないかもしれない。怪我を軽く見るのはマジでやめとけ」
普段大人しい滝本先輩がきつめの口調で言ってきてびっくりした。
「もしどーしても走るってなら100mの方だろ。4継には代わりがいるんだから」
「そうですよ。僕じゃ先輩の代わりにはなれませんけど…県大会にバトン繋ぎますから!」
後輩の石井がそう言った。
「いやー、石井も最近めっちゃタイム縮めたよな!今1番ノってんのお前なんじゃない?まぁ、俺の方が速いけどな!?」
智が茶化すようにそう言った。
「そんなの言われなくても分かってますよ!」
「それは冗談にしても、マジで、そりゃ聖二がいないと若干?心細いけど?でも石井も速いよ。俺らショート5人でワンチームだからな!」
確かに、俺は仲間を信頼しきれてなかったのかもしれない。信頼しているつもりでいて、どこかで不安に思っていたのかも。
「わかってるよ、わかってる。石井が速いのはわかってる。それでも、走りたかった。中学の新人戦に出られるのは最後だし。けど、滝本先輩の言葉で目が覚めました」
「そうか、それならよかった。あんま短距離のことはわかんないけど、怪我して出場することの危なさはわかるからさ。じゃーね、俺こっちだから」
「さようなら」
夕陽に照らされた仲間が光って見えた。

俺の代わりに走った石井も、智も、他のリレメンも頑張った。おかげで地区で3位入賞。県大会を決めた。
今日は県新人戦。コンディションは完全、1番にゴールテープを切ってやる。
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