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第七章 月空の下で
実力主義の国
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「私は、クルト・ビルテモンと申します」
国主の代理だと言って訪ねてきた男は、名を名乗って頭を下げた。
最初は、男性陣が泊まっている部屋で話を聞こうとしたが、リィカも話を聞きたがったため、リィカのいる部屋に全員が集まっていた。
応対は、やはりアレクがメインだ。
「ビルテモン……、確かトルバゴ共和国の王都だったな。失礼だが、平民の方か?」
「ええ、そうです。無論、我が国にも貴族はおりますし、国主は他国で言うところの王の血筋です。しかし、ここは実力主義の国ですから、平民であってもいくらでも上に上がれます。
それと、我が国は王国ではありませんので、王都ではなく首都という呼び方をしております」
クルトと名乗った青年は、臆することなくアレクに相対していた。
盛衰の激しい小国群にあって、トルバゴ共和国の歴史は長い。その理由が、クルトが言ったように、実力主義の国であるからだ。
小国群で生き残っていくには、威張るしか能のない貴族に上の立場にいてもらっては困るのだ。
国主にしても、前国主の長男が後を継ぐ、という事は一切ない。
国主の血筋の中から、直系傍系関係なく、選ばれた者がその後を継ぐのだ。
「どのようにして選ぶんですか?」
そう聞いたのは泰基だ。
「選挙……と言って分かるでしょうか。我々、国主の館に勤める者を始めとする国民すべてが、誰が国主に相応しいか、一人が一人ずつ選ぶのです」
直接選挙か、と泰基は感心したように考えた。国主の血筋のみ、という限定はあっても、確かに民主制に近いところがあるようだ。
「――ご用をお伺いしよう」
アレクが、真っ直ぐに話に踏み込んだ。
「皆様方のご入国は、我々にも報告がありましたが、お呼び立てすることもないですし、通り抜けるだけだろうと判断しておりました。ですが、留まっているようでしたので、申し訳ありませんが、調べさせて頂きました」
クルトは、リィカの寝ているベッドに目を向ける。
「このナハニルソンの街に国主の別邸がございますので、もし良ければお招きしたい、と国主からの言葉です。同性の神官……老婆ですが、腕が確かな者もおります。
旅にご同行されている神官様ほどではございませんが、それでも同性であるというのは、また違うと思います。如何でしょうか?」
要するに、リィカが熱を出して寝込んでいることを、すでに把握済みという事だ。
別におかしいことでも何でもない。宿側にはそれを伝えて、病人でも食べられるものを用意してもらっている。
調べようと思えば、そんなに難しくないだろう。
同性の神官。
確かに、有り難い存在ではある。だが、それだけでは足りない。
「……その神官の方、貴族か?」
「いえ、申し訳ありませんが、平民です。腕は落ちますが、貴族の方が良ければそちらをご用意致しますが?」
アレクの聞き方が悪かったのか、逆の意味で取られた。
が、平民だというのであれば、その方が良い。
アレクはリィカに声を掛ける。
「リィカ、どうしたい? 決めて良いぞ」
「…………行きたい」
わずかの沈黙の末、リィカが答えた。
アレクが頷いた。
「分かった。――では、そのお申し出、有り難く受けさせて頂く。神官は、その老婆の方をお願いしたい」
後半は、クルトに向けて伝える。
「承知致しました。――老婆の方、などと丁寧な言い方は不要です。頼りにはなりますが、ただのうるさい婆様ですから」
クルトの辟易した言い方に、アレクは微妙に不安になるが、リィカはわずかに口元を綻ばせていた。
国主の代理だと言って訪ねてきた男は、名を名乗って頭を下げた。
最初は、男性陣が泊まっている部屋で話を聞こうとしたが、リィカも話を聞きたがったため、リィカのいる部屋に全員が集まっていた。
応対は、やはりアレクがメインだ。
「ビルテモン……、確かトルバゴ共和国の王都だったな。失礼だが、平民の方か?」
「ええ、そうです。無論、我が国にも貴族はおりますし、国主は他国で言うところの王の血筋です。しかし、ここは実力主義の国ですから、平民であってもいくらでも上に上がれます。
それと、我が国は王国ではありませんので、王都ではなく首都という呼び方をしております」
クルトと名乗った青年は、臆することなくアレクに相対していた。
盛衰の激しい小国群にあって、トルバゴ共和国の歴史は長い。その理由が、クルトが言ったように、実力主義の国であるからだ。
小国群で生き残っていくには、威張るしか能のない貴族に上の立場にいてもらっては困るのだ。
国主にしても、前国主の長男が後を継ぐ、という事は一切ない。
国主の血筋の中から、直系傍系関係なく、選ばれた者がその後を継ぐのだ。
「どのようにして選ぶんですか?」
そう聞いたのは泰基だ。
「選挙……と言って分かるでしょうか。我々、国主の館に勤める者を始めとする国民すべてが、誰が国主に相応しいか、一人が一人ずつ選ぶのです」
直接選挙か、と泰基は感心したように考えた。国主の血筋のみ、という限定はあっても、確かに民主制に近いところがあるようだ。
「――ご用をお伺いしよう」
アレクが、真っ直ぐに話に踏み込んだ。
「皆様方のご入国は、我々にも報告がありましたが、お呼び立てすることもないですし、通り抜けるだけだろうと判断しておりました。ですが、留まっているようでしたので、申し訳ありませんが、調べさせて頂きました」
クルトは、リィカの寝ているベッドに目を向ける。
「このナハニルソンの街に国主の別邸がございますので、もし良ければお招きしたい、と国主からの言葉です。同性の神官……老婆ですが、腕が確かな者もおります。
旅にご同行されている神官様ほどではございませんが、それでも同性であるというのは、また違うと思います。如何でしょうか?」
要するに、リィカが熱を出して寝込んでいることを、すでに把握済みという事だ。
別におかしいことでも何でもない。宿側にはそれを伝えて、病人でも食べられるものを用意してもらっている。
調べようと思えば、そんなに難しくないだろう。
同性の神官。
確かに、有り難い存在ではある。だが、それだけでは足りない。
「……その神官の方、貴族か?」
「いえ、申し訳ありませんが、平民です。腕は落ちますが、貴族の方が良ければそちらをご用意致しますが?」
アレクの聞き方が悪かったのか、逆の意味で取られた。
が、平民だというのであれば、その方が良い。
アレクはリィカに声を掛ける。
「リィカ、どうしたい? 決めて良いぞ」
「…………行きたい」
わずかの沈黙の末、リィカが答えた。
アレクが頷いた。
「分かった。――では、そのお申し出、有り難く受けさせて頂く。神官は、その老婆の方をお願いしたい」
後半は、クルトに向けて伝える。
「承知致しました。――老婆の方、などと丁寧な言い方は不要です。頼りにはなりますが、ただのうるさい婆様ですから」
クルトの辟易した言い方に、アレクは微妙に不安になるが、リィカはわずかに口元を綻ばせていた。
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