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閑話 “隼”ウィルの機転
しおりを挟む私はフォックス侯爵家の諜報部隊“隼”のウィルと申します。
今はウィルですが、その時その時で名前を変えますが、基本、ウィルです。
もう何年も本名を呼ばれてはいません。
高位貴族はそれぞれ諜報部隊を抱えておりますが、フォックス侯爵家の諜報部隊は他とは少し毛色が違って、表に出て活動しております。
我々“隼”の殆どのメンバーは見た目“地味”で平凡です。
見目が悪くはないけど特別良くもない程度ですが、無邪気な笑顔がチャームポイントです。
眼鏡や髪の色を変えると元の顔なんて思い出せないくらい薄ーい印象しか持たれませんが。
私、綺麗な金髪なんですけど、目立つので茶髪にしてるんです…いつか禿げ上がってしまうのではないかと怖くてたまりません…。
すみません、話しが逸れてしまいました。
なので“隠密に”ではなく“潜入”して情報を仕入れております。
あ、隠密も出来ますよ、もちろん。
庭師や御者、料理人見習い、などなど色々な職種で潜入するので、剣や暗器、体術の訓練より職種訓練の方が辛かったりします…凄く辛いです…。
そんな俺達が、今躍起になって探しているのが“魅了液”と呼ばれる禁忌魔法“魅了”と同じ効果がある無味無臭の危険極まりない代物の行方です。
魔法って何ですか?ってところから説明を隊長にしてもらったんですが、摩訶不思議な事がこの世にあるのだと知り、驚きました。
何百年も前に実在した魔法使いは今でもいて、なんとクラリス様の父君のガウル様が魔法使いだと聞いてビックリして変な声が出てしまいました。
あの方、いつも眩しいと思ってたら、気のせいではなくて魔力が漏れてキラキラしていたんだそうです。
さすが元王族は違うなぁと思っていたら、魔法使いなんて肩書きまで付いてるなんて、もう覇者じゃないでしょうか?
言いふらしたいほどの事ですが、契約してしまったので誰にも言えません、言ったら死んじゃいますから。
また話しが逸れてしまいました。
“魅了液”の捜索の話しに戻しますね。
“魅了液”なる物は元々ラッツェ伯爵家のストーカー・・・パトリシアっていうお嬢様が王宮研究所の研究員と作り出した物らしいんですけど、そんな危ない物を大量に作って保管してたらしいんですよ。
なんでも売り捌いて金儲けを企んだらしいです。馬鹿ですね。
ストーカー・・・すみません、我ら“隼”はあのお嬢様の事を昔からストーカーと呼んでいたのでつい・・・。
あのお嬢様・・なんか呼びづらいので“パト”って呼びますね、シモン様とシャルーナ様を傷付けた奴の名前は呼びたくないので。
パトの家に隠していたらしいんですが、回収出来てない分があるらしく、それを俺達は探してるんですが、パトの周りにいた人間は誰もそんな物隠し持ってなかったんですよ。
なので今はその周りにいた使用人の家族、友人を探っている所なんですが、なかなか見つからなくて焦っております…。
でもほんの少しだけ手がかりを見つけました。
ラッツェ伯爵家で、パトが捕まる前に辞めた洗濯下女が一人いる事が分かりました。
さすがに洗濯下女とストーカーでも一応伯爵令嬢のパトが接触する事はないと思ってたら、その下女、元々はパトの専属メイドをしていたらしいです。
不況を買い、下女に落とされたんだとか。
怪しい意外ないですよね。
その下女、なんとどんな伝手を使ったのか最近マルティノ侯爵家の下女になってたんですよ!
何やってるんですか、マルティノ家!
そんなヤバい下女屋敷に入れちゃ駄目ですよ!
そういえば最近全くフォックス侯爵家にマルティノ侯爵家の皆さん顔を出してないんですけど、それってやばくないですか⁉︎
何か起こってないですか⁉︎
“烏”は何をしてるんですか⁉︎
シャルーナ様とロビン様がそっちに帰るのにヤバくないですか⁉︎
マルティノ侯爵家に出入りしている業者になりすまして様子を見に行ったら・・・・。
ヤバいヤバいヤバい、ヤバいですよ!
俺の指輪の石が赤くなるわ、熱くなるわで、パニクりそうでした。
何気に見た使用人や護衛騎士、誰も指輪してませんでした!
え⁉︎なんで⁉︎
あれほど外すなって言われてたのに何で⁉︎
マルティノ侯爵、分かってる?
ひょっとして当主家族もやられた⁉︎
だから最近こっちに来なかったの⁉︎
急げ急げ、早く知らせないと!
こっちに来たらシャルーナ様もロビン様も危険極まりないですぅーーー!
あ!あの人“烏”の人!!
待って待って、ちょっと貴方、何のんびり馬と戯れてるの⁉︎
「そこの人ーーーーー大変ですーーーーー!」
ギョッとして私を振り返った“烏”の人に叫びました!
「指輪、ここの人指輪外してるの、なんでーーーーー⁉︎」
「ハアーー⁉︎」
時間がないのでざっと説明すると、その人は今からシャルーナ様達を迎えにいく所なのだとか。
とりあえず二人でフォックス侯爵家に向かいます。
大変です大変です!
急がないと!
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