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「閉幕」
しおりを挟む「はぁ……はぁ…面倒じゃなぁ!…権能と言うものは…!!」
「ふふふ、反則よねぇ」
呼吸の乱れる魔王に対して最高神は汗すら滲んでいない。
「ふははっ!余裕綽々と?儂はまだまだ戦えーーー」
「…魔王ちゃん」
………分かっているのじゃ。
「…なんじゃ」
「私、決めたわ。次の世界、どんなものにするか」
「………勝ってから言うがよい…」
………分かっているのじゃ。
「勝つわよ、私が最高神である間は。貴方がどんなに傷を付け致命傷を与えたとしても、私には関係ないの」
「魔力とは関係の無い治癒と復活。それが私の一つ目の権能。そしてもう一つは…」
魔王の傷を指す。
「傷を付けた部位の魔力による回復を無効にする権能。」
「これらは私の持ち得る権能の中で余りにも秀でているわ」
「例へ魔王ちゃんに天性の武があって私より強かったとしても、勝てないのよ。」
「それが最高神と言うもの」
………分かっているのじゃ。
「だからなんだと言う」
「………諦めなさい」
「貴様、儂がここに来た理由、貴様と戦う理由を分かっているのだろう?」
「ええ…そうね」
「諦めると思うか?儂が」
「貴様を易々と死なせるとでも?」
「死ぬ訳じゃないわよ」
「死んだも同然じゃ!世界の核となるのだろう?何が違う!」
「独りぼっちになるのじゃろ…誰とも喋れず光を見ず動けず…命を消費して」
「そんなもの…ッ…!怖いじゃろうて…!!!」
(ああ…この子は、なんて……)
「儂は嫌じゃ!友をその様な場所に独りにさせたくはないッッッッッ!!!」
………分かっているのじゃ。
「なれば、儂がやる」
「それに儂はまだまだ若いからのう!次の世界も安泰じゃ」
(……ふふふ、結局私達は同じ理由で戦っているのよね。良かったわ、魔王ちゃんの口から直接聞けて)
「…私も同じ気持ちよ、魔王ちゃん」
「大好きな魔王ちゃんを核になんてさせる訳にはいかないの。元、愛の神としてね」
「だから…!!」
再び刃を交える。
「私は魔王ちゃんを救いたいから魔王ちゃんを殺すわ!」
「儂は貴様を救うために貴様を殺す!!」
理解かっているのじゃ……
無敗の儂を降すのは貴様しかおらぬだろうと
理解かっているのじゃ……
儂が貴様に勝てぬことなぞ
理解かっているのじゃ……
儂の全力に応えてくれていることも
それが儂への手向けだと言うことも…!
だからこそ!それに答える訳にはいかんのじゃ!!
儂は!魔王!世界の悪で無くてはならない!!
我が誇り!我が信念!儂の願いは!!!
降される事を儂が許さん!!!
ーーー過去、こんなにも優しい魔王が居たかしら……
何度も世界の終焉、創世を見続けて今回は私の番
出来上がったばかりの頃は気が滅入っていたわ
だって、私の次の人生、もとい、神生が1回休みになっちゃうんだもの。
終末の日を早めてやろうかと何度も思って、その度ナンナに怒られて………。
あの日、本来の魔王が倒された日…。
有り得るはずの無い〃魔王の隠し子〃が存在していた
指を咥え、立って間もないようなたどたどしい歩み。
愛くるしい貴方にナンナは自ら堕天し、育てた。
元々の魔王が死んだ事により魔物たちは戸惑い、喚き、暴れ、人間に倒された。
数を減らした魔物たちは長い時間身を潜め人間の前に姿を表す事はなくなったーーーーーー。
一時の平和
数百年が経ち、貴方は魔王を継承した。
魔王城に集まる嘗て魔王に忠誠を誓った生き残り
「再び人間界への侵攻を」と血沸き肉踊る野獣たちに貴方は一言「全員クビ」と言い放った。
その後、不満から襲い掛かった魔物を血祭りに上げ、玉座を我が物へ。
たった一つの人間界の飲み物が幼子のお気に入りになった事で開戦を免れた。
そして、記念すべき第一回目の天界侵攻
私の部下を実に8割を殺し私の前に現れた。
無法者、天下一の愛らしい魔王
貴方に会いたかった。
契りを無視してでも。
貴方は私の願いを叶えてくれた。
貴方を落ち着かせティータイムへと
貴方はココアとビスケット、私はカモミール。
無心で頬張る貴方は可愛いの権化。
そこで、貴方に人間界の愉快さを教えてあげたような気がするわ。
正直、貴方に会えたことで話の内容なんて朧気なのよね。
キラキラ目を輝かせて爽快に笑う。
思いつきの夢をその場で語る無謀者。
快楽的愛ッ!
天使側の原初の誓を貴方に教えて、私が天界を動けない事を知った貴方は「だったら儂がお前の代わりに世界を見てやるのじゃ!」なんて。
溺れるほどの愛いッ!
「化粧品が欲しければ買うてやる!」
「等価交換じゃ!ココアと菓子をだせ!」
雪解けの水の様な清らかなッ!LOVE!
良い子すぎて堕天したかったわ……。
でもね、悪として貴方が立つならば
私は善として迎えなければならないの。
全てはこの日のために…………。
魔王ちゃんを次の世界へ届けるために
私がやらなくてはならないの。
だからね、魔王ちゃんーーーーーーーーーー
「終わりよ」
魔王の心臓を穿いた。
「ぐゔぉぁ……がぶ……」
「ありがとう、魔王ちゃん、私を想ってくれて」
「くくっ…勝てんなぁ…悔しいのぅ……」
滴り落ちる貴方の血。
「…大丈夫よ後は、任せなさい。神の愛をあなたに」
魔王をその場に残し最高神は遥か上空へと羽ばたいた。
「敗れてしまいましたね、魔王様」
「……ナン…ナ…」
ナンナは魔王を抱き寄せゆっくりと地上に降り腰を据えた。
「一緒に見届けましょう。新たな世界の創造を私達と共に」
変わらぬ声
「儂は…怖い…ナンナ、貴様達と離れ離れになる事が…」
か細い声
「安心して下さい魔王様、原初の誓に則り、最高神に挑んだ私達魔王軍は記憶と能力を引き継ぎ次の世界に移ります。」
「出現場所はバラバラになってしまうかも知れませんが、同じ時間同じ世界ですよ」
「…そうか…嬉しいのじゃ…皆、また会えるのだな…」
終焉に似つかわしくも無い美しい煌めき。
世界創造の天変地異。
我が友はその翼に抱かれ世界を慈しむ「世界」となる。
……対等なる友。対等に扱ってくれる友よ……。
ズルいのじゃ…
この光は儂には痛すぎる…。
貴様の愛が……この心には…辛いのじゃ…。
「…ナンナァ…儂は…少し眠る…」
「……承知しました。魔王様」
(願わくば、共に終焉を見届けたかった。)
「…そうですね………。それも承知しております」
「お休みください。私の魔王様」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
《…負けたのね》
「はい」
《…………そう》
《見たいわ》
「どうぞこちらへ」
《瞬間移動》
「…っんだよマーリン!急に飛ぶなよ!」
「……………」
「ッッッッッッッッッッツ!!!」
「おい、フェンリルど……う………っ!!」
「あ、あああ……まおう…さま………あああ……」
「……………」
「………そっか……そうだよな……そんな小さい体で良くやったよ魔王様…」
「まおう…さま……ペロペロ」
《記録しているのでしょう》
「はい」
《それも観せて》
「皆さんでみましょう」
「…………………魔王様の頬はこんなにも柔らかいものなのですね」
《変態》
「今だけは許して下さいマーリンさま」
《当然よスプリガン、だってあなた泣いているもの》
「…はい」
「よっこいせ…っと」
「…バハムートは…!舐めなぐで!良いんズが!?」
「一緒にするなよ、いいんだよオレは…尻尾で触れてさえいればな」
「ぞれがバハムードの親愛なんズね!!」
「………ああ…そうだ。お前が舐めるのと同じだよ」
「素゙直゙な゙ババム゙ード気゙持゙ぢ悪゙い゙ッ゙ズゥ゙ゥ゙!!!」
「んだと!!テメェ!!ブチ殺すぞ!!!」
《騒がしいわね》
「ええ、私達らしいです」
「さぁ、皆様もう間もなくです。」
「魔王軍の絆へ」
「魔王様の勇姿へ」
「新しい世界へ」
「聖なる星を逝く者たちへ」
「愛の盃を」
《「「「乾杯」」」》
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