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第7話 魔物を模す危険生物
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「な、何の音だぁ?!」
「地震…?にしても揺れてないし…」
「工事中の音とかかな?」
各々困惑しながら外に出てみると、そこには複数の生き物を無造作に合わせたような──キメラのような怪物が佇んでいた。
現れた3人の姿に、ギョロリと大きな目玉が動く。
「え、魔物っ?!」
街中に魔物が出るなんて、とミロウは驚く。
魔物は普段郊外に生息しており、街中に侵入しようとすれば魔物除けの柵や罠が作動し追い払っている。
そのため魔物が街に入ってくるのは珍しく、そしてかなり危険なことでもあるのだ。
「坊ちゃんら、中に入ってな。客人を守るのも駅員の務めだからよ」
わざとらしくウインクをする駅員に白けた目をしながら、二人は目の前にいる化け物を注視していた。
「…待って下さい。あの魔物、何かおかしい…!」
そんなレイゼの制止も聞かず、駅員はどこからかナックルを出して怪物に詰め寄る。
きつく拳を握り、思いきり腕を引く。
「おらよっ!」
ドスンと鈍い音が響いた。
鋭く重い拳は怪物に明らかにヒットした──かと思ったが、それは目玉を一回転させただけで、傷一つすらついていなかった。
「…は?!どういうことだ…!普通の魔物なら一撃のモンだぞ?!」
駅員が困惑していると、化け物はお返しとばかりに彼へ巨体を振りかぶってきた。
あまりの大きさに逃げ場が無いと錯覚するほどであるが、駅員は戦闘に慣れているのか、素早い動きで攻撃範囲から避ける。
「あっぶねぇ…ってかお前ら!早く逃げ──」
彼は安堵したのも束の間、レイゼとミロウが未だ動かないことに気を取られ、怪物の重い連続攻撃に気付けなかった。
巨体に見合う手にあるその爪の切っ先を、駅員めがけて振り翳す。
「──ぐは…っ?!」
腹を裂かれたのか、彼の鮮血が辺りを舞った。
「駅員さん!」
ミロウは彼を助けに行こうとするが、巨体はそれを許さず立ちはだかる。
「む!なら…『水刃』!」
こちらも巨体ほどの大きさがある水の刃で応戦する。
格子状に配置された二つの刃は、怪物を容易く切り裂く──筈だった。
『──!』
刃が到達する直前、ノイズが走ったような雄たけびを上げ、化け物はミロウの魔法を打ち消した。
「…え…できる限りの魔力を圧縮したのに…」
絶望するミロウと駅員にレイゼは叫ぶ。
「……ミロウ、駅員さんをどうにかしてこっちに連れて来れない?」
「む、無理だよ!もう魔力もあんまり残ってないし、それにあのでっかい体、乗り越えられるわけないよ!」
「そっか…やっぱり全部ダメか…」
「れ、レイゼ?何か案があるの?早くしないと駅員さんが…!」
「分かってる!」
レイゼは手に響素を使うための機械を持ち、怪物へと翳す。
『ビルド』
機械の先端が青く光り、四角形のホログラムが彼を覆う。
『インストール…"相乗"』
その四角形は徐々に棒状になり、化け物を貫かんと青から白に煌々と光り始めた。
『…実行』
先端が限りなく細くなったかと思うと、それは無数に分裂して化け物を刺し絶命させた。
──ミロウや駅員といった戦闘慣れしている者が出来なかったことが、呆気なく出来てしまった。
『──?!』
先程よりも一層大きな雄叫びを上げ、化け物は青い糸を解れさせながら消えていく。
「…それが、響素のちゃんとした攻撃?」
「本来は、こういう使い方じゃないんだけどね」
化け物よりもレイゼの行動に恐怖したのか、ミロウの顔は蒼白だった。
レイゼはどうしてかはぐらかしながら、駅員に駆け寄る。
「駅員さん、大丈夫ですか!」
「あぁ…?あのバケモンはどこに行ったんだ…?」
「僕が倒しました。もう大丈夫です」
「は?倒した?どうやって?」
倒した旨を伝えると、満身創痍が嘘だったかのように駅員は彼に詰め寄る。
これは長くなりそうだ──と、二人は顔を見合わせて苦笑いした。
「地震…?にしても揺れてないし…」
「工事中の音とかかな?」
各々困惑しながら外に出てみると、そこには複数の生き物を無造作に合わせたような──キメラのような怪物が佇んでいた。
現れた3人の姿に、ギョロリと大きな目玉が動く。
「え、魔物っ?!」
街中に魔物が出るなんて、とミロウは驚く。
魔物は普段郊外に生息しており、街中に侵入しようとすれば魔物除けの柵や罠が作動し追い払っている。
そのため魔物が街に入ってくるのは珍しく、そしてかなり危険なことでもあるのだ。
「坊ちゃんら、中に入ってな。客人を守るのも駅員の務めだからよ」
わざとらしくウインクをする駅員に白けた目をしながら、二人は目の前にいる化け物を注視していた。
「…待って下さい。あの魔物、何かおかしい…!」
そんなレイゼの制止も聞かず、駅員はどこからかナックルを出して怪物に詰め寄る。
きつく拳を握り、思いきり腕を引く。
「おらよっ!」
ドスンと鈍い音が響いた。
鋭く重い拳は怪物に明らかにヒットした──かと思ったが、それは目玉を一回転させただけで、傷一つすらついていなかった。
「…は?!どういうことだ…!普通の魔物なら一撃のモンだぞ?!」
駅員が困惑していると、化け物はお返しとばかりに彼へ巨体を振りかぶってきた。
あまりの大きさに逃げ場が無いと錯覚するほどであるが、駅員は戦闘に慣れているのか、素早い動きで攻撃範囲から避ける。
「あっぶねぇ…ってかお前ら!早く逃げ──」
彼は安堵したのも束の間、レイゼとミロウが未だ動かないことに気を取られ、怪物の重い連続攻撃に気付けなかった。
巨体に見合う手にあるその爪の切っ先を、駅員めがけて振り翳す。
「──ぐは…っ?!」
腹を裂かれたのか、彼の鮮血が辺りを舞った。
「駅員さん!」
ミロウは彼を助けに行こうとするが、巨体はそれを許さず立ちはだかる。
「む!なら…『水刃』!」
こちらも巨体ほどの大きさがある水の刃で応戦する。
格子状に配置された二つの刃は、怪物を容易く切り裂く──筈だった。
『──!』
刃が到達する直前、ノイズが走ったような雄たけびを上げ、化け物はミロウの魔法を打ち消した。
「…え…できる限りの魔力を圧縮したのに…」
絶望するミロウと駅員にレイゼは叫ぶ。
「……ミロウ、駅員さんをどうにかしてこっちに連れて来れない?」
「む、無理だよ!もう魔力もあんまり残ってないし、それにあのでっかい体、乗り越えられるわけないよ!」
「そっか…やっぱり全部ダメか…」
「れ、レイゼ?何か案があるの?早くしないと駅員さんが…!」
「分かってる!」
レイゼは手に響素を使うための機械を持ち、怪物へと翳す。
『ビルド』
機械の先端が青く光り、四角形のホログラムが彼を覆う。
『インストール…"相乗"』
その四角形は徐々に棒状になり、化け物を貫かんと青から白に煌々と光り始めた。
『…実行』
先端が限りなく細くなったかと思うと、それは無数に分裂して化け物を刺し絶命させた。
──ミロウや駅員といった戦闘慣れしている者が出来なかったことが、呆気なく出来てしまった。
『──?!』
先程よりも一層大きな雄叫びを上げ、化け物は青い糸を解れさせながら消えていく。
「…それが、響素のちゃんとした攻撃?」
「本来は、こういう使い方じゃないんだけどね」
化け物よりもレイゼの行動に恐怖したのか、ミロウの顔は蒼白だった。
レイゼはどうしてかはぐらかしながら、駅員に駆け寄る。
「駅員さん、大丈夫ですか!」
「あぁ…?あのバケモンはどこに行ったんだ…?」
「僕が倒しました。もう大丈夫です」
「は?倒した?どうやって?」
倒した旨を伝えると、満身創痍が嘘だったかのように駅員は彼に詰め寄る。
これは長くなりそうだ──と、二人は顔を見合わせて苦笑いした。
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