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第9話 重なる因と緊急依頼
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ライカリライク市から次の街までは案外近いため、二人は歩いて行こうと結論を出した。
現在は日も沈んできたゆえ早く着いてしまおうと、早足で道を歩いているところだ。
「レイゼ、ほんとに良かったの?あの機械を渡しても…」
「うん。僕1人がどうにかなるより、街の人が大勢危険に晒されるほうが嫌だからね」
「…そっか」
ミロウは眉を顰めてじっとレイゼを見る。
青より少し薄い瞳には、若干の翳りがあった。やはり少し後悔はしているのだろう。
しかしエゴとも取れるあの行動に、満足しているようにも見えた。
「そういえば、レイゼが会いたいって言ってた人って誰なの?」
会話が途切れかけた時、ミロウはふと気になっていたことを尋ねる。
「"リネット・フロウリーグラム"って人に会いたいんだ。魔法と響素の専門家らしくて…とにかく凄いんだよ!」
目を輝かせてレイゼは語り出す。
すると、わたしも凄いのに…とミロウは頬を膨らませてしまう。
「むぅ…レイゼの憧れがわたしだったら良かったのになぁ」
「もちろんミロウも尊敬してるよ。一番ね」
そうレイゼが言うと、ミロウは顔を赤らめる。
そんな様子に微笑みながら、レイゼは次の街の門の霞を見つけた。
「あ、次の街の門が見えてきた」
レイゼの声に密かに考えていたミロウははっと前を向くと、どの窓口も長蛇の列を成している光景が目に飛び込んできた。
「多過ぎない?!」
「凄い人だね…」
もはや門が霞んでしまうほどの人の量。この門をくぐればアイノウンの首都──ブーレであるため、人が多いのも必然だ。
「これは…下手したら朝まで掛かりそうだね…引き返してもまた列が出来るだろうし」
どうしようかと二人で慌てていると、ふとミロウは何かに気付く。
「うぅ……ん?レイゼ、あそこで手招きしてる人がいるよ」
「本当だ、よく気付いたね。僕達の方を向いてるし、行ってみようか」
ミロウは全く人がいない列の窓口から、女性が手招いている姿を見つけた。
何か変なことをしてしまったかと反芻するが心当たりは無い。とにかく行ってみようと、二人は小走りで向かった。
「おっ、来たね!あんた達、ライカリライク市から来た子だろ?」
窓口に着くと、淡い紫と橙の瞳を持つ女性が話しかけてきた。
「はい!でも、どうしてわたし達のことを…?」
「ライカリライクの駅長…シオンさんから連絡があってね。君たちは魔物退治の専門家だって。今この街…ブーレも手に負えない魔物が数体いるんだよ。ここから街へ通れるから、その魔物を倒してくれないかい?」
魔物退治の専門家?レイゼとミロウが二人で疑問符を浮かべていると、何故か駅員がウインクをしている姿が思い浮かんできた。
彼らが急いでいることを察したのか、専門家だと偽ってこの途方もない列をなるべく早く脱出する手立てをしてくれたのだろう。──結局は時間が掛かりそうな問題が舞い込んでしまったが。
「専門家……はい、そうですね。でも、僕たちより手慣れの人がいるんじゃ?」
「それが、ブーレ中の冒険者に頼んでもどうにもできなかったのさ。他からやってくる人達は引き受けてくれないわで難航してるんだ。けど君たちが来た。あのシオンさんの推薦だ、どうか頼まれてくれないかい?」
「そうなんですか…分かりました、やってみます」
活発な話し姿からは想像出来ないほど深々と頭を下げる女性。レイゼはそれに感化され、思わず二つ返事で引き受けてしまった。
「…時間も少ないけど、大丈夫なの?レイゼ…」
「どうにも断れそうもないし、やれるだけやってみよう。ミロウにもやって欲しいことがあるんだ」
ミロウの心配げな問いにレイゼが答えた後、女性は嬉しそうに門の入り口を開けた。
「助かるよ!あたしはリタヤータ。これからしばらくは君たちの案内係だ。宜しく!」
現在は日も沈んできたゆえ早く着いてしまおうと、早足で道を歩いているところだ。
「レイゼ、ほんとに良かったの?あの機械を渡しても…」
「うん。僕1人がどうにかなるより、街の人が大勢危険に晒されるほうが嫌だからね」
「…そっか」
ミロウは眉を顰めてじっとレイゼを見る。
青より少し薄い瞳には、若干の翳りがあった。やはり少し後悔はしているのだろう。
しかしエゴとも取れるあの行動に、満足しているようにも見えた。
「そういえば、レイゼが会いたいって言ってた人って誰なの?」
会話が途切れかけた時、ミロウはふと気になっていたことを尋ねる。
「"リネット・フロウリーグラム"って人に会いたいんだ。魔法と響素の専門家らしくて…とにかく凄いんだよ!」
目を輝かせてレイゼは語り出す。
すると、わたしも凄いのに…とミロウは頬を膨らませてしまう。
「むぅ…レイゼの憧れがわたしだったら良かったのになぁ」
「もちろんミロウも尊敬してるよ。一番ね」
そうレイゼが言うと、ミロウは顔を赤らめる。
そんな様子に微笑みながら、レイゼは次の街の門の霞を見つけた。
「あ、次の街の門が見えてきた」
レイゼの声に密かに考えていたミロウははっと前を向くと、どの窓口も長蛇の列を成している光景が目に飛び込んできた。
「多過ぎない?!」
「凄い人だね…」
もはや門が霞んでしまうほどの人の量。この門をくぐればアイノウンの首都──ブーレであるため、人が多いのも必然だ。
「これは…下手したら朝まで掛かりそうだね…引き返してもまた列が出来るだろうし」
どうしようかと二人で慌てていると、ふとミロウは何かに気付く。
「うぅ……ん?レイゼ、あそこで手招きしてる人がいるよ」
「本当だ、よく気付いたね。僕達の方を向いてるし、行ってみようか」
ミロウは全く人がいない列の窓口から、女性が手招いている姿を見つけた。
何か変なことをしてしまったかと反芻するが心当たりは無い。とにかく行ってみようと、二人は小走りで向かった。
「おっ、来たね!あんた達、ライカリライク市から来た子だろ?」
窓口に着くと、淡い紫と橙の瞳を持つ女性が話しかけてきた。
「はい!でも、どうしてわたし達のことを…?」
「ライカリライクの駅長…シオンさんから連絡があってね。君たちは魔物退治の専門家だって。今この街…ブーレも手に負えない魔物が数体いるんだよ。ここから街へ通れるから、その魔物を倒してくれないかい?」
魔物退治の専門家?レイゼとミロウが二人で疑問符を浮かべていると、何故か駅員がウインクをしている姿が思い浮かんできた。
彼らが急いでいることを察したのか、専門家だと偽ってこの途方もない列をなるべく早く脱出する手立てをしてくれたのだろう。──結局は時間が掛かりそうな問題が舞い込んでしまったが。
「専門家……はい、そうですね。でも、僕たちより手慣れの人がいるんじゃ?」
「それが、ブーレ中の冒険者に頼んでもどうにもできなかったのさ。他からやってくる人達は引き受けてくれないわで難航してるんだ。けど君たちが来た。あのシオンさんの推薦だ、どうか頼まれてくれないかい?」
「そうなんですか…分かりました、やってみます」
活発な話し姿からは想像出来ないほど深々と頭を下げる女性。レイゼはそれに感化され、思わず二つ返事で引き受けてしまった。
「…時間も少ないけど、大丈夫なの?レイゼ…」
「どうにも断れそうもないし、やれるだけやってみよう。ミロウにもやって欲しいことがあるんだ」
ミロウの心配げな問いにレイゼが答えた後、女性は嬉しそうに門の入り口を開けた。
「助かるよ!あたしはリタヤータ。これからしばらくは君たちの案内係だ。宜しく!」
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